ハンバーガーを食べながら、私は推しを見送った
J3の開幕は、3月に入ってからになりますが、J1・J2の開幕まで約2週間を切りましたね。シーズンの終了とともに溢れ出る、選手の移籍や引退発表に胸を痛めたサポーターの方も多いのではないでしょうか?
皆さんの中にも「忘れられない別れの思い出」、ありますよね?
今日のテーマは「お別れ」について。
私が高校生の頃は、鹿島から移籍報道が出るたびに、3日程度再起不能になっていましたが、歳を重ねるごとに痛みのかわし方が上手くなり、オフシーズンは心のダメージを最小限に抑えて過ごせるようになりました。
これが大人になるということなんでしょうか……。
それでも2020年に、突然引退を発表した内田篤人さんの時は、思い出の数が多すぎるので、涙が止まりませんでした。
篤人さんは最後に「また会いましょう」という素敵な言葉を残してくれたし、引退後もサッカー界のために活躍する姿をたくさん見かけるので、いつの間にかポジティブな別れに変換されていました。
Maayaが企画を発案したの引退動画は、何回見返しても泣けちゃいます……。
こういう企画を実現できる実行力、素晴らしい!!(そして私の髪の毛が長い)
サッカー選手とサポーターという関係には「別れ」がつきものですよね。
私はこの別れには、大きく分けて2種類あると考えています。
▼移籍
これは自分の愛するクラブから、応援している選手が去ってしまうことです。よっぽどハートを掴まれた場合は、自分も一緒に移籍してしまう場合もありますね。次に再会する時は敵として。
今日の敵は明日の友ならぬ、今年の仲間は来シーズンの敵です。
自分の身につけているユニとは違う色のユニを身に纏い、ピッチで躍動する姿を見せつけてくれた日には、布団をかぶって枕を濡らさずにはいられません……。OWL magazineでは最近、リセルさんが選手の移籍について書いていますね。こちらもどうぞ!
ただ、この別れは、選手としての永遠の別れではありません。まだまだ選手として応援できるチャンスは続きます。
▼引退
選手としての永遠の別れ「引退」。最近は、引退後にクラブに残ってくれる選手も増えてきましたが、選手としてスタジアムで輝く勇姿とはお別れです。映像で何度も振り返ることはできても、共に戦うことは2度とできません……。私は移籍より何より、この引退が1番辛い別れです。
私は1月30日に「Fリーグに興味を示すきっかけとなった選手」のラストマッチを見届けてきました。
当初は1月16日に開催予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で2週間の延期が発表されました。
2週間の延期の間、感染者数はあっという間に増えていくし、他にも開催予定だった Fリーグの試合が次々に無観客になっていくので、最後のお別れができるのか? 始まってみるまで分からない状態でした。
■私が星翔太選手を応援しようと思ったきっかけ
2022年1月30日
私はFリーグ最終節、名古屋オーシャンズ対ボアルース長野を見るために、名古屋に向かいました。
この日は試合後に、名古屋オーシャンズの優勝セレモニーと星翔太選手の引退セレモニーが予定されていました。
12月25日に自身で「星翔太Thanksシート」を企画・発売して、試合開始早々に一発退場した伝説の推しです。
私は20年近い年月をスポーツ観戦に費やしていますが、目の前で推しが退場、しかも一発退場した経験は初めてでした。衝撃が大きすぎるので、この先2度とない体験であって欲しいと願うばかりです……。
なぜ私が星翔太選手を応援しようと思ったのか。
それは、今シーズンの開幕前まで遡ります。翔太選手は、開幕する前に今シーズン限りでの引退発表するというサプライズで、多くのフットサルファンの関心を集めていました。
私はFリーグ観戦初心者ですが、長い間日本代表の中心選手として日本フットサル界を牽引してきた翔太選手が今年で引退してしまうと知った時、なんとなく「この選手のプレーは見ておいた方がいいんじゃないかな」そんな気持ちになりました。
私をFリーグの沼に突き落としたMaayaが、翔太選手推しだったのもあって、名古屋オーシャンズの試合に一緒に足を運びましたが、私はどちらかというと、守備的な選手が好きなので、同じ名古屋オーシャンズに所属する弟の龍太選手の、寡黙に着々と相手の攻撃の芽を潰していくプレーの方が好みでした。
■印象が変わったW杯
印象が変わったのは、リトアニアまで足を運んで見に行ったフットサルのW杯。
長らく日本代表として戦ってきた経験を持つ翔太選手は、試合中も色んな選手に積極的に声をかけ続けていました。そして点を取るポジションのピヴォらしく、世界の強豪国相手に次々とゴールを奪い、プレーでもチームを引っ張っていました。
勝ってグループリーグの自力突破を決めたかったパラグアイ戦から、途中離脱をしてしまった吉川智貴選手に代わりキャプテンを務め、敗戦後はさっさとピッチから引き上げるのではなく、メンバー全員を集めて話をする姿も見受けられました。
僕自身の経験から、パラグアイに敗戦した後に、ピッチからすぐに引き上げるのではなく、一度選手を集めました。というのも、下を向いている選手が多かった。そのまま引き上げて時間が経ってから「切り替えよう」ということもできます。だけど、そういうのはピッチで終えておきたかった。
(引用:ほし日記)
ピッチ内外問わず先頭に立ってチームを引っ張っていく姿が、今まで積み上げてきた経験の大きさや、日本フットサル界においていかに偉大な存在かということを体現していました。
今振り返ってみても、この姿を見ることができただけでも、リトアニアに足を運んでよかったなと思います。
そして大会中に話題になった、代表選手としての最後のインタビュー。
未来の若手たちへの挑戦を促すとともに、周りの方への後押しをお願いする姿が本当から、本当にフットサルが大好きなんだなというのが伝わってきてとても印象的でした。
W杯の大会中、そんな姿を追っているうちに「今年で最後なら、できる限り翔太選手のプレーを目に焼き付けておきたい」という気持ちが湧いてきました。W杯の中断が明けると、オーシャンズは残り15試合。残りの試合日程の全て名古屋にかけて、翔太選手のプレーを目に焼き付けようと思いました。
帰国後の隔離期間を経て再開したリーグ戦でも、翔太選手の勢いは止まりません。リーグ再開の初戦でいきなり2ゴールを決めると、その後も着々とゴールを奪い続け、2021年12月12日に行われたアウェイ大分戦ではハットトリックを達成。
今年で引退を表明している選手とは思えないほどの大活躍でした。
■引退セレモニーでの挨拶
最近、カタールW杯の放映権を獲得したことで話題のABEMA。実はFリーグはABEMAで全試合無料で放送されているんです!
ABEMAの放送にはコメント欄が設置されていて、試合をみながらコメントできるのですが、そのコメント欄でも翔太選手に対して、「まだまだやれる」とか、「引退しないで欲しい」というコメントを多く見かけていました。私も実際にプレーを見ていて、まだ続けられるんじゃないか? そう思っていました。
ところが、30日の試合の引退セレモニーで翔太選手自身の口から「自分の中で衰えてきているなと思う部分があり、フットサル界には若い選手もどんどん出てきているという現状がある中で、自分がこれ以上いい状態でプレーをするのは難しいと思い決断をしました」という気持ちが語られました。
引退を惜しむ声が多数ある翔太選手ですが、パフォーマンスの衰えを感じているという現実を自分の口から語る姿に、今まで見てきた引退セレモニーとはちょっと違って、胸が押しつぶされるような気持ちになりました。
自分の状態を客観視して、引き際を自分で決めれる選手や、まだまだトップレベルでやれるんじゃないかと惜しまれながら引退していく選手は、どのくらいいるだろう?
私は欲張りな性格なので、これだけ惜しまれたら、もっといけるんじゃないかと思って、欲を出してズルズルいくタイプです……。絶対にそう。
それに比べて、揺るぎない固い意思で引退という決断をする姿は、カッコいいなと思いました。
最近読んだ高橋陽一先生の『誇りープライドー』の中に、ベテラン選手が引退を撤回するシーンが出てくるんだけど、私ちょっとだけそんな展開を期待してしまいました……。『誇りープライドー』おすすめですよ。これぞ私が好きなJリーグだ! って感じのサポーター描写、泣けます。
■ファンを思っての早々の引退発表
翔太選手は多くの方と最後の瞬間を楽しみたかったというのを、引退発表を早々におこなった理由のひとつとしてあげていました。
コロナ禍でいつリーグが中断されてしまうか分からない状況が続いています。いつどうなるか分からないご時世だからこそ、早めに引退を発表することで、ファンとお別れをする時間をしっかり作るれるのではないかと考えた翔太選手。ファンへの思いをnoteで知った時、本当に素敵だなと思いました。
ここ最近の私の中での大きな別れは、冒頭にも書きましたが、鹿島アントラーズで長く鹿島で戦ってくれた内田篤人さんの引退です。内田選手の引退発表は、なんと試合の3日前!
シーズンが終わった後、ひと知れずさよならじゃないだけマシなのでしょうが……。色々な事情があると思いますが、あまりに急すぎる別れに、悲しむ暇がなかったような気がします。
当初は引退試合となるG大阪戦は観戦する予定ではありませんでしたが、引退のリリースが出た瞬間に慌ててチケットを購入した記憶があります。心の整理がつかないまま、あれよあれよという間に当日を迎えたなあ……。
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