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WiLL-basedマネジメントとは何か?Vol.4~WiLLベースマネジメントとウェルビーイングの関係性(後半)~

リスナーからの組織に関するあらゆるお悩みに応えていく、Pallet Radio「はたらきがい向上委員会」。全8回にわたりPalletが提唱している「WiLL-basedマネジメント」について解説します。

パーソナリティーを務めるのは、当社代表の羽山暁子と、当社メンバーで組織開発のエキスパートとして様々なコミュニティのプロジェクトマネージャーを務める(株)そしきのコーチ代表の小松由(こまつ ゆう)氏。

当ラジオはPalletに関わってくださる方限定で公開しており、その内容を一部修正して書き起こしたものをお届けいたします。

▼前回の記事はこちらから▼


小松
:今回もWiLLベースマネジメントとウェルビーイングの関係性についてお話していきたいと思います。あっこさん前回から経過して、改めて見えてきたことなどはありますか?

羽山:こまっちゃんと話したいところだなと閃いたのが、ここ半年ほど私の中で流行っている経済資本と文化資本と社会関係資本の関係性について

①文化資本…スキル、語学、プログラミング、資格、学歴、食歴などの資本
②社会関係資本…職場、友人、地域などで接続的なネットワークによる資本
③経済資本…金銭、資産、財産、株式、不動産などの経済的な資本

パーソルやIT企業に勤務していた時も、経済資本を最大化するためにはどうすればいいかをがむしゃらに追い求めてきたという感覚があって、もちろんビジョンに共感しているから嫌々というわけではなく、パーソルもIT企業も大好きなんですけど、やっぱりやってきたことって売上をいくら立てるとか、ノルマを達成するぞとか、人事で何人採用するぞとか、営業目標は前年比105%とか経営資本の最たることをやってきたわけです。今でも(営業会社は)前年比って100%以上なのかな?

小松:今は130%とかになっているんじゃないでしょうか?

羽山:そうするとずっと成長だから、経済的な資本が増え続けるという方向性でしか我々の進む道はないと提示されていて、それが当たり前になっている状態なんですよね。すると営業のやることは、毎年約30%の経済資本を最大化していくことがミッションであると刷り込まれていたサラリーマン時代だったなと思うわけです。

 その結果何が起きたかというと、最終的には力も付いたし仕事をするということのCANは増えたけれど、何か犠牲にしてきたものはないかといわれたら、やっぱり家族や友達との時間はいったん二の次三の次にするしかないし、午前1時から飲みに行ったりして健康を犠牲にしながら進んできたなと。東京という観点でいうと、地域社会とのつながりは一切なかった20代30代だったなと思い出すわけです。

 それはそれでアドレナリン的。ドーパミン的な幸せで、いわゆるhappinessみたいな観点で面白くはあったのだけど、やっぱりウェルビーイング関係はすごい犠牲にしてきたなと仙台に来てから思う様になりました。
 
 仙台に来て思っているのは、経済資本は結果でしかないと痛感していること。なんの結果でしかないかというと、社会関係資本である人間の関係性をよくする地域社会での繋がりとか、組織にいる仲間とのつながりとか、家族とのつながりをWiLLをもっていかにいい状態にしていった結果が、地域や組織の文化資本づくりに繋がり広がった結果、その形を維持し続けるための手段として経済資本が必要なんだということを、仙台に来てやっとわかったんですよね。

 東京にいると、どうしても経済資本を最大化することが目的になってしまい、そこを目的とした時に社会関係資本や文化資本がおざなりになり、構図として資本主義に巻き込まれるということが起こる。それによって誰が得をしているかというと、経済資本を全て享受できる側である、例えばIPOした会社の経営層が出るということが起きたりするというね。
 だからローカルに来て思うのは、自分はどう社会と繋がっていきたいのかとか、身体や心をどう大切にしたいのかということをファーストにおいて、それを実現するためにどれくらい稼げばいいのかを考える、そういう順番が自然だと思っています。


 この話を楽天大学の仲山学長ソニックガーデンの倉貫さんのザッソウラジオでしたら、「なんの異論もないですね」と仰っていました。ソニックガーデンは「納品のない受託開発」を行うエンジニア集団で、全100名の社員が全員在宅勤務をしているという会社なんです。創業当初から代表が明言していたのは「僕の会社は経済資本を追わない」と社員に伝えているんですね。何よりも大切にしているのは、ソニックガーデンらしさを大切にするということで、ソニックガーデンらしくないことはやらないと決めているんですって。それは明確に文化資本を最大化することを大切にしているということで、自社らしい文化を醸成するために、どうやって関係性を作り、コミュニケーションをデザインするかを常に考えているそうです


 コミュニケーションの観点でいうと、みんな在宅勤務だけど、半年に一回は全員で集まって合宿を行っていたりして、そのために今回軽井沢に合宿所を作ったと、いわゆるコミュニケーションコストと言われるようなものにちゃんと投資することを大事にしているんです。その結果、経済資本が得られるし、会社の利益配分をコミュニケーションに使う分、給料に反映する分はちょっとだけ少なくなるかもしれないけれど、そういう文化を大切に思ってくれている仲間たちとやっていくと決めている会社なんですね。私にとっては理想的な会社だし、こういう企業が増えていくといいなと思っています。

 一方でこまっちゃんと対話したいなと思っているのが、秋田などの東北地域だと、このような経済資本より文化資本を優先する動きが広がっている感覚はあるのか、それとも稼ぐことが優先だという文脈なのかということをお聞きしたいです。

小松:まずお話を聞きながら感じていたのは、ソニックガーデンさんがやっているようなことって伴走して長くお付き合いしていくことで、社会関係資本が経済資本に変わっていくということだと思うんです。私のやっている会社も結構近いことをやっていて、価値を作り続けることをやろうと思ったら、納品とかプロジェクトの終わりはないほうがよくて、むしろないほうが長くずっと付き合い続けながら、お互いが実現したい世界をつくれるよねという話はあるんと思うんです。でもそれを100名の社員を抱えて実行なさっているのは凄いなと思いながら聞いていました。その背景には、お客様と良い関係を築きつづけて、その量が増えているからこそできることなんだろうなと思っています。

 一方で、私が関わっているある企業は、人がどんどん減らされ、担当部署の人員が不足していく現状でも、ノルマややらなければならいない仕事が増えていき、昨対比100%以上を掲げてみんな頑張れ、という世界観のもと頑張る構造は起こっています。経営層は社員に対してもっとイノベーションを起こし、これまでにないビジネスプロセスを考えて比較してほしいと言っていますが、実態としては旧体制然としたマネジメントが続いているギャップの歪みがおきているのが現状です。


 そのギャップの歪みを解決していく手段がウェルビーイングに注目することですし、ひとり一人のWiLLを起点にして、まずはメンバーの想いを「聴く」っていうことから始めることが大事だと思います。それが変わっていくと歪みが埋まり、ウェルビーイングを感じられる人が増えて、結果として生産性が上がり昨対比150%になるようなことが起きたり、イノベーションが起きて新規事業が生まれて新しいビジネスが起こっていく様な流れになると思うので、今の歪みをどう解決するかがポイントになってくるのかなという感じはしていますね。

羽山:そうね。どうやったらその歪みが解消できるのだろうね?

小松:ウェルビーイングが今回のテーマなので、そこに寄せると、やっぱり皆さんが心・身体・社会的なつながりの接点を「いい状態といいバランスだな」という実感を育てることかなと思いますね。


パーソルHPより引用

羽山:我々の主戦場である組織開発って、まず利益を上げなければいけないという会社さんは余裕がなくて手が出しにくいですよね。余裕がないから組織開発をするよりも、まずは売上をとなってしまうけど、私からみると本来は逆だよね、と思う。ここで一緒に踏ん張って、ひとり一人のWiLLに耳を傾けて、各自をエンパワ―メントしてくことを1年でもいいから頑張ってみると、結果売上や利益が上がりますよと言いたいけれど、同じ経営をしている立場でもそれはめっちゃ怖いことだと分かるから、どうしても先ほどの例えに出てきた企業のように経営層としては昨対比150%やれと、足元の発破をかける方向性になってしまうと思う。一方で、だからこそそこを超えて、私たちはどこに向かっていきたいのかというその先をきちんと見せることがやはり大事なのかもね。

小松:そうですね。先を見せるという観点だと、ひとり一人がどうありたいかを聞いて、そのありたい姿に向かってどういう支援ができるかを伝え、その上で会社が行きたい方向性を伝え、ギャップを埋めていくことが、「一緒にやっていこう」と合意を取っていくイメージですかね。

羽山:そうそう。前段のプロセスであるひとり一人がどうしたいのか、どこに向かっていきたいのかを聞くこともなく、売上を上げなきゃいけないんだという組織の一方的なWiLLを押し付けるだけで完結してしまっているから、メンバーは「これ何のためにやってるんだっけ?」「組織のために生きるのが俺の人生だっけ?」ということが起きてしまう。
 
 前段のプロセスがまさにWiLLベースマネジメントで、メンバーがどうしたいか?どこに向かっていきたいのかを聞き、組織のWiLLを伝えて、あなたの力を貸してほしい、もしかするとこの一年はあなたのWiLLを叶えてあげられることもあれば、そうではないこともあるかも知れない。それでも一緒に走り切って欲しい。そんなメッセージをちゃんとマネジメント層が伝えられていることがすごく大事ですよね。

小松:そういう意味では、マネジメント層とメンバーの対話がしっかりできていて、一枚岩になって動けているかというところですよね。対話ができていない状態だと、やっぱりズレが生じたり、歪みが生じたりすることはあり得るんですか?

羽山:毎日のようにありますよ。ある経営者の方と話をしていた時に、「部下にすごい期待していて仕事を任せようとすると、『自分には無理です、他の人の方がいいと思います』とか言われるんだよね」というリアルな相談をいただいたんです。じゃあ社長はその期待を伝えていらっしゃるんですか?と聞くと、「伝えていないけど、分かっているはずだ」と。では、その方がどんな働き方をしたいと思っているのか聞いているんですかと聞くと、「たぶん、こう思っているはずだ」と仰るんですね。いや、たぶんじゃなくてちゃんと聞けばいいじゃん、何がしたいのかを明確に聞けば本当のことを話してくれるかもしれないのに、って毎日思いますね。

小松:チャットにもコメントが来ていますね。『経営層のKPIにウェルビーイングの項目がある会社さんがあればいいかもね』『各個人も組織全体もウェルビーイングを理解することも大切だと思いました。一方でマネジメント側の器も問われるように思います。経済資本拡大のみを負うのは人口減少時代には限界がきていると感じます。わが社は未だに昨対だけ伸ばすことが目的となっていますが…』など、色々コメントありがとうございます。まだ話したりない感じもしますが、時間が来てしまったのでまとめに行きたいと思います。今回のテーマはウェルビーイングとWiLLベースマネジメントのつながりについてでしたが、ここまで話してみて、あっこさんの中で気づきがあれば是非いただきたいと思いますがいかがでしょうか?

羽山:まだ深堀りたいですが、先ほどコメントでもいただいた『マネジメント側の器も問われるように思います』というのは本当にそうだと思っていて、マネジメント層こそ、自分自身のWiLLをきちんと言語化し、大切にし、それを周囲に伝えていかに自分のWiLLに巻き込んでいくかが大事だと思っています。今の日本の多くの企業のマネジメント層が一番自分のWiLLをないがしろにし、自己犠牲を強いられる構造から、マネジメント層が自分のWiLLを大事にできる組織を増やしたいというのがPalletがとても大事にしていることです。

小松:マネジメント層が自分のWiLLに気付いて、それを聞いてくれる仲間がいて、それを大事にしながら生きていける状態をつくれていて、そのベースがあるとウェルビーイングな状態でメンバーとも話ができてくると、フラットにメンバーもWiLLを聞くことができて、それを聞いていく中で各個人も心・身体・社会的つながりの接点が見えてくると、自組織とどうつながってくるかという話ができる…ということに繋がってくるのでしょうね。

羽山:まさにその通りです。すごく勉強になる内容でした!次回またお話しできるのを楽しみにしています!


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