モラハラと境界性パーソナリティ障害は、ぜんぜん別物ですぞ、という話
日々、各方面から「診断はされていないんですけど、私/妻/彼女/彼は境界性パーソナリティ障害だと思うんです」とご相談を受けている心理カウンセラーです、こんにちは。
なぜそんなご相談を多く受けているかというと、私自身がかつて境界性パーソナリティ障害を罹患していた、いわゆる元罹患者・経験者だからです。
その辺の詳細はこちらの記事でどうぞ。
↓
お話を聞いていて「ははあ、それは確かに」と思うケースは正直言って10人に1人、いや20人に1人? くらいで、基本的には「うーん、そう……ですかねえ……?」と思うことがほとんどです。
そんなことが起きないように、サイト上で「境界性パーソナリティ障害チェックリスト」まで作っているのに、日々「違うんじゃね?」とか「別の病気じゃね?」と思う人がいらっしゃいます。
なので近々改めて、このチェックリストをもっとわかりやすく大幅改修するのと、その解説動画を作ろうと考えているのですが……
それ以前に、ぜひみなさんにお伝えしたいことがあって筆を執りました。
それが、
モラハラと境界性パーソナリティ障害は、ぜんぜん別物ですぞ?
という話です。
なぜ急にそんな話をしようと思ったかというと、SNSでたまたまこちらのかたの発言を拝見して、さらにこの有料noteのことを知ったからです。
↓
こちらは「モラハラ夫に悩まされる妻」をターゲットにした記事なんですけど、そこに挙げられている特徴が、私のところによくいらっしゃる自称“BPD妻に悩まされる夫”に酷似していたんですよね。
(※BPD=境界性パーソナリティ障害の略称)
別れたいけど別れられないとか、妻がいつ爆発して怒り出すかわからないからいつも気を張っているとか、自分に自信がなくて無力感がつのるとか……。
それもしかして、相手はBPD妻じゃなくてモラハラ妻なんじゃないですか?
と思いました。
ちなみに自称“BPD彼に悩まされる彼女”にも似ていたので、もしかして自分のことかも……! と思った人はぜひ上記の記事をチェックするといいですよ。
◆なぜ、境界性パーソナリティ障害とモラハラを勘違いしてしまうのか
私はわざわざチェックリストに8個も項目を書き、
「5つ以上にチェックがつく人は境界性パーソナリティ障害を疑え」
と言っているのに、
・些細なことで尋常でない怒りを生む
・0か100かの急激な気分の変化
この2つが当てはまっただけで「境界性パーソナリティ障害に違いない!」と早計してしまう人が多いために、モラハラとBPDの違いがわからなくなっているのかな、と思います。
DVする人とか、ボコボコに殴ったり罵声を浴びせたりした後に、コロッと優しくなって「ごめんね、ごめんね」って言う人いますもんね。
ガチで自分のしたことを反省して死にたく(消えたく)なる人と、
そうしておけば(都合のいい)相手が逃げなくなるから、反省したふりをして急に優しくなる人は、
全然違いますからね!!!
……まあでも、自分は経験者だし、今となっては心理カウンセラーを名乗る、いわゆる“プロ”と呼ばれる人間なので、そうでない一般の方々がちょっとした特徴を読んで「これだ!」と誤った判断をしてしまうのは仕方ない、とも思います。
そもそも境界性パーソナリティ障害は、精神科医(プロ)ですら誤診する病気ですもんね。
ということで、冒頭で言った「改めて改修するBPDチェックリスト&解説動画」は、そういう一般の、違いが全然わからない人の視点に合わせた内容にしていこう、と強く思いました。
◆境界性パーソナリティ障害とモラハラの決定的な違いは、自責の念が強いかどうか
実は以前、某企業の社内ワークショップ(講演)で境界性パーソナリティ障害について話した時も、社員さんからこんな質問をいただいたことがあるのです。
「境界性パーソナリティ障害は、いわゆるモラハラと、何が違うんですか?」と。
その時の私は
「いわゆるモラハラ的な行動、急に激昂したりとか相手に暴言・暴力を振るう時点で、何らかの精神疾患だと私は考えている。ただその人が境界性パーソナリティ障害かどうかは、細かい事情をお聞きしないとわからない」
とお答えしたのですが、今はもう決定的な違いを言えます。
自責の念が強いかどうか
です。
先ほど軽く例を挙げましたよね。
・ガチで自分のしたことを反省して死にたく(消えたく)なる人
・そうしておけば(都合のいい)相手が逃げなくなるから、反省したふりをして急に優しくなる人
は全然違う、と。
もちろん境界性パーソナリティ障害も見捨てられ不安があるので、ガーッとブチ切れた後に「ごめんなさい、ごめんなさい、捨てないで」っていう態度を取ることはありますよ。
しかしその時、心の中に渦巻いているのは、ものすごい自責の念です。
モラハラやDVの人が急に優しくなるのとは違います。
モラハラというのは、
「自分は正しい」
「悪いのは全部相手」
と常に思っている人のことを言います。
更には相手のことを都合のいい子分(または奴隷)だと思っているので、すがりついたりしません。優しくしたって「こうしとけば元に戻ってくれるんでしょ?」感が滲み出ています。
いや、境界性パーソナリティ障害だって、「あんたのせいでこうなった!」と母親や彼氏を責めることはありますよ。
だから他責が全くないとは言いません。
しかし自責の念が圧倒的にデカいです。
どんなに他責をしていたって、結局最後は「自分が悪い、自分が死ねばいいのに」へ戻ってくるのです。
そう思っているからこそ、過激な自傷・自殺行為・過剰な飲酒などなど自己破壊的な行動を起こします。
ただ口で「死にたい、死んだほうがいい」と言っているだけの人はやはり境界性パーソナリティ障害ではない可能性がありますので、お気をつけください。
詳しくはまた改修したチェックリストや動画で解説したいと考えています。
◆治る病気なのか直らないモラハラなのかをちゃんと判断してください
私はそもそも心理カウンセラーなので、精神科医のように病名の診断はできません。ただ、経験者として「それは全然ちげえと思う」とは言えるので、このような記事を書いてみました。
で、さらに、なぜこのような記事を書いたかというと、
「相手が境界性パーソナリティ障害だと信じている人は、相手が治る(自分が相手を治してあげられる)ことも信じており、別れるに別れられなくて傷つき続けている」
人が圧倒的に多いな、と感じたからです。
そりゃ私が「境界性パーソナリティ障害を自力寛解/克服しました」って言ってんだから、「じゃあうちの人も治るかも!!」って期待しますよね。
先ほどご紹介した古谷守さんの記事にもある通り、境界性パーソナリティ障害ではなくただのモラハラだった場合、
なんですよ。
しかも境界性パーソナリティ障害は自分のことをひどく汚くて小さくてダメで死んだほうがいい人間だと思っているので、
・別れようとしたら家に押しかけて深夜なのにピンポン連打
・逃げようとしたらどこまでも追いかけてくる(そして死ぬほどボコボコにぶん殴る)
とかの迷惑行為(ていうか犯罪行為)は
しません。
だって相手や社会に迷惑をかけるくらいなら、自分のほうが消えればいいと思っている人間なんですから。
(いや自殺も人に迷惑かけるけど、まあそこはそれ)
重ねてお伝えしますが、境界性パーソナリティ障害は精神科医ですら誤診したり、全然違う自己愛性パーソナリティ障害と一緒くたにされるような病気です。
なので、BPDを診断されたかたが上記のような行動をとる場合もあるのでしょう。
でも私はやっぱり、他人や社会を傷つけてそれが当たり前の権利のように思う人、全部相手のせいだ自分は悪くないと居直れる人は、境界性パーソナリティ障害ではないと思います。
◆どっちかというとモラハラ夫の餌食になるのは境界性パーソナリティ障害女性のほう
最後のおまけとしてお伝えしますが、どっちかというとモラハラ夫の餌食になるのは境界性パーソナリティ障害女性のほうです。
自己像があいまい、自分の意思が弱い、他人に依存するという特徴があるので、なんでもはっきり決めてくれる人に弱いんですよ。
実際当カウンセリングにも、彼女/妻をまるで奴隷(セックスができる家政婦)のように扱う男性と一緒にいて苦しんでいる、境界性パーソナリティ障害女性がご相談にいらっしゃいます。
境界性パーソナリティ障害的な症状を治したいとか和らげたいとかいうご相談には乗れますけども、離婚に踏み切れないとかモラハラをどうにかしたいとかは私の専門じゃないんですよね。
なのでやはり、冒頭でご紹介したこちらの記事がいいんじゃないでしょうか。
↓
私はそもそも「人それぞれの悩みには、それぞれの専門家がついて解決すべきである」と考えている人間なので、モラハラの問題はモラハラの専門家に相談したほうがいいと思うんですよ。
私は別にモラハラ専門家じゃないので。
ということで今回の記事を読んで、「あれ……もしかしてうちの人、境界性パーソナリティ障害じゃなくて、ただのモラハラ……?」と気づいてしまった人は、ぜひしかるべき所を頼ってください。
もちろん今回ご紹介した方じゃなくてもかまいません。
その辺は自己判断・自己責任でお願いいたします。
ではごきげんよう、さようなら。
◎ちなみに「モラハラ」の人がなっていそうな病気はこちらの記事でもご紹介しています↓
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