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怒鳴る・試し行為・自殺宣言など問題行動を起こす彼(恋人・夫・息子)へ、周囲の人ができる対応策

あなたの身近にいる彼(恋人・夫・息子)は、こんな行動をしませんか?

・怒鳴る(急に激昂する)
・愛情の試し行動をする
・自殺をほのめかす(宣言する)
・他人を自分の思い通りにコントロールしようとする
・特に心理的距離の近い人(親やパートナー等)へ問題行動を起こす

これらは「境界性パーソナリティ障害」という精神障害の症状に当てはまる行動です。

わたしは24年間、その「境界性パーソナリティ障害(略称・BPD)」という精神障害を患っていました。
7年前から「境界性パーソナリティ障害」について発信し始め、4年前に自力で克服し、現在は心理カウンセラーとして活動しています。

2021年2月、「怒鳴る・愛情の試し行為・自殺行為など問題行動を起こす彼女(恋人・妻)へ、周囲の人ができる対応策」を執筆しました。

なぜ「女性版」と「男性版」を分けたかというと、男性の場合、境界性パーソナリティ障害ではなく「自己愛性パーソナリティ障害」の傾向が強く見られることが多いからです。

これは「男性性の強い女性」にも見受けられます。

※このジェンダーレスの時代に「男性性」とか言うと怒られそうなので補足させてください。
ここで言う「男性性」とは、心理学で言われる「男性に多く見られる傾向」「女性が持つと言われる男性の心(アニムス)」を元に判断したものです。

・感情よりも現実に起こる事象を重視
・感覚よりも言語を重視
・論理性、合理性を重視
・肉体的な強さを求める
・大胆な、または勇ましい行動に出る
・仕事を重要視する、仕事にのめり込みやすい ……等

「自己愛性パーソナリティ障害」は境界性パーソナリティ障害(BPD)とよく似た症状が出たり、精神科医のかたによっては「同じ病気」とひとくくりにされたりすることもあります。しかし、元・BPD当事者の私から見ると全く真逆の精神障害に思えます。

また、境界性パーソナリティ障害の発症率は「女性の方が多い」とされているのに対し、自己愛性パーソナリティ障害の発症率は「男性の方が多い」と言われているんですね。

そのためか、「境界性パーソナリティ障害とされる男性」についてのご相談を聞いていると、「それは自己愛性パーソナリティ障害の症状ではないか?」と考えられることが多いのです。

この記事ではまず、「自己愛性パーソナリティ障害がどんな精神障害なのか」を解説したうえで、「自己愛性パーソナリティ障害のような、境界性パーソナリティ障害のような男性(あるいは男性性の強い女性)に対し、周囲の人々はどうすればいいのか」を提案していきます。

境界性パーソナリティ障害がどんな病気か、というのはこちらの記事の無料部分にて解説しておりますので、こちらをご覧ください。
 ↓

境界性パーソナリティ障害を診断された人のうち75%が女性と言われていますが、もちろん男性の罹患者もいます。(※臨床の現場でのパーセンテージであり、アメリカでは男女比は1:1とされています)

もしあなたの近くにいる「境界性パーソナリティ障害らしき男性」が女性性の高めな人であるのなら、おそらくこちらの記事でもお役に立てるかと思われます。
 ↓

自己愛性パーソナリティ障害はどんな病気?

自己愛性パーソナリティ障害は、ICD-10(疾病・傷害・死因の国際統計分類)では病気として分類されていません。(境界性パーソナリティ障害は分類されています)

境界性パーソナリティ障害も日本ではまだまだ無名の精神障害ではありますが、それでもいくらか研究はされています。自己愛性パーソナリティ障害はそれより更に研究が進んでおらず、効果的な心理療法がまだはっきりと分かっていないのです。

DSM-5(アメリカの精神障害診断・統計マニュアル)では、自己愛性パーソナリティ障害の診断基準を「以下の2つのパターンがみられるとき」と定めています。

●誇大性
(他者を見下したり、「自分の考えを理解できるのはごく少数の人間だけだ」などと思い、自分を他人よりも特別に優れた人間だと思い込む)

●賞賛の要求および共感の欠如の持続的なパターン
とにかく自分のしたことを他人に高く評価されようとする、または期待通りの反応を求める。(プレゼントをあげたときに自分の望むような喜び方をしないと不機嫌になる、等)
相手の感情に触発されて自分の感情が動くということがない。
(時々とか一時的なものではなく、それがずっと続いている)

このパターンが認められるかどうかを判断するために、9つのチェックリストがあります。(下記のチェックリストはDSM-5の内容をもう少しわかりやすく補足したものです)

このうち5つ以上が当てはまれば、上記のパターンが認められるとされ、「自己愛性パーソナリティ障害」が診断されます。

1.自分自身の存在の重要性や、自分が持っている才能について、根拠もなく異常に自己評価が高い(誇大性)

2.途方もない業績や影響力・権力・知能・美しさまたは無欠の恋という空想にとらわれている(欲しいもののハードルが高すぎる)

3.自分は特別かつ独特な人間なので、最も優れた人々とのみ付き合うべきだと信じている(特権意識がある)

4.無条件に賞賛されたいという欲求が高い
(自分にはその能力があると信じているし、また努力・行動もできているという自負がある。賞賛されないと不機嫌になる)

5.自分の目標を達成するために、他者を利用することをいとわない
(他者をコントロールするような言動・行動に出る。無自覚なことが多い)

6.共感の欠如(他人と喜怒哀楽を共有した経験が少ない。例:「自分はそういうの何とも思わないけど」「なぜみんな自分と同じことで腹を立ててくれないんだ」)

7.他者への嫉妬心が高い(自分より優れたものは許さない)。
そして他者が自分を嫉妬していると根拠もなく信じている。

8.傲慢であり、横柄である。
(本人は無自覚であることがしばしば。他人から指摘されても、否定することが多い)

「自己愛性パーソナリティ障害」を診断するには、上記の症状が成人期早期までに始まっている必要があります。

30代や40代になってから急に上記の傾向が見られる人は「自己愛性パーソナリティ障害」ではありません。

あなたを困らせている「彼」は、上記の傾向がありましたか?

下記の記事でも「境界性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害」の違いについて解説していますので、よろしければチェックしてみてください。
 ↓

※この先有料記事になっていきますが、時々一部のユーザーさんから「noteの購入ができない」とお問合せをいただきます。noteの購入ができないのはnote本体のシステムの問題であり、私は関与できません。

時間を置いたら購入できた、という話も聞きますが、もしどうしても購入できない場合は、私との直接やりとりでこの記事のPDFを販売できます。
公式LINEやSNSのDMなどでお気軽にお問合せください。
(ID「 @palicosp 」で検索できます)

なぜ、自己愛性パーソナリティ障害と境界性パーソナリティ障害は混同されやすいのか

正反対の精神障害である自己愛性パーソナリティ障害と境界性パーソナリティ障害が混同されやすい理由は、前述した通り「表面上に出てくる症状の中でよく似たものがあるから」と考えられます。

個人的観測の範囲ですが、よくある代表的な「似た症状」をお伝えします。

・急に激怒する
・他人を見下す
・他人をコントロールしようとする
・対人関係がうまく築けない
・恋人やパートナー、または親しい人間にだけ症状が発動する

たとえば「急に激怒する」の違い。境界性パーソナリティ障害は「急激な気分の浮き沈み」が特徴です。ガーッと「自分の正しさ」を主張して激怒したかと思えば、急に一転して「自分が間違っている」「間違っている自分は死んだほうがいい」など、この世の終わりのように落ち込みます。

自己愛性パーソナリティ障害は「周囲が自分の期待に応えなかったこと」に腹を立てているので、異常なまでの感情の浮き沈みは見られません。
悪いのは基本的に、自分ではなく「他人」です。
「他人に問題があるから、自分は仕方なく感情を荒げてしまった(自分のせいではない)」と思っています。

もちろん「ついやって(言って)しまった自分に多少落ち込む」とか「うまくいかない(周囲が思う通りに動いてくれない)ことばかりでやる気が失せる」くらいのことはありますが、境界性パーソナリティ障害に比べるとその落差が少ないのです。

「他人を見下す」心理もまったく違います。
境界性パーソナリティ障害は主に「裏切られた」と感じた時に相手を見下します。たとえば「この人こそ自分を永遠に愛してくれるに違いない」と思った恋人に裏切られた(と感じた)時、それまで「好き好き」と言いまくっていたのに、「あいつはこの程度の人間だった」と急に見下します。

「この精神科医なら私を治してくれる」と信じていたのに思ったような効果が出なかった(裏切られたと感じた)時も、「あいつはヤブ医者だった」などと能力の低さを罵って見下します。
また、自分のことを「能力が低い・価値がない」と思っているので、自分にできることができない人を見つけると「このダメな私なんかより出来が悪いなんて……」という意味で見下します。

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