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DAOKO×米津玄師/打上花火 が、小説のなかで流れたら

和風のアルペジオに、白玉でコードを動かしていく伴奏。ピアノが上手なクラスメイトのあの子を思い出す。きっとかんたんに音を聴きとって、両手で弾きこなしてみせそうだ。

フィードバックから入るギター。寄せてかえす波のように、ボリュームノブが操作される。8分音符が8つずつ並ぶフレーズも、浜辺の情景をあらわしているのだろうか。

《あの日見渡した渚を 今も思い出すんだ》と、過去を思い出すことで見つめかえす、今の自分。記憶のカメラは《渚》の景色から、《砂の上に刻んだ言葉》にクローズアップ、《君の後ろ姿》へとパンする。

Bメロに入ると、細かいハイハットがビートをつくる。リズムマシンの音でもあるし、最近よく耳にするパターン。いわゆるTRAPというジャンルのものだろうか。

青く晴れた空をイメージさせる《渚》から、《夕凪の中》へ。《日暮れだけが通り過ぎて行く》と、一瞬で時は流れる。そういえばこの歌は花火の曲だ。早くシーンを夜にしなければならない。

無事に日が落ちたようで、花火は《パッと光って咲いた》ーーユニゾンとハーモニーがバランスよく重なる。

生っぽいドラムのグルーヴ。16ビートのノリのよさがありながら、頭のバスドラからスネアまでの間がひろい。ハイハットも大きくとられていて、ゆったりとした感覚がある。

一方、スタッカートで演奏されるストリングスは、夜空にはじける花火をあらわしているようだ。

2番のAメロは、男声のターン。かなりの低音かつ、1番とはまったくちがうメロディ。ハーモニーも男性の声にそろえられている。

1番の《パッと》を受け、《はっと息を飲めば》から展開される2番のサビのストーリー。歌詞の抽象性が増していく。

Cメロには、デュエットならではの男女のかけ合い。ドラムは右手のリードをライドシンバルのカップにうつし、ストリングスが細かくうごく。盛りあがりが頂点に達すると、ギターが3連符のフレーズでブレーキをかける。

1番Aメロのくり返しが、ギターのアルペジオ抜きで演奏される。ミニマムな静けさ。Bメロも省略される。

《パッと光って咲いた》から《この夜が続いて欲しかった》まで、1回かぎりのくり返しにとどめられたサビ。アウトロで《ラララララララ》とユニゾンするスキャットに浸る。

《きっとまだ 終わらない夏が》と歌いながら、かれらは夏が終わることを知っている。《この夜が続いて欲しかった》と願うのは、かなわない願いであると気づいていたからだった。


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