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瑛人/香水 が、小説のなかで流れたら

アコースティックなギターが爪弾かれ、木製のボディを叩くビートが歌声のノリをささえる。エクストリームの「モア・ザン・ワーズ」がよみがえったかのようだ。ギター1本と歌のみのチャレンジ。

《あの頃》と過去をふり返り、《でも見てよ今の僕を》と相対化する主人公は、すでに3年後にいる。《空っぽな僕》と自虐的になるのは、思い出のうつくしさがあるからだ。

サビで耳にとびこむ《ドルチェ&ガッバーナ》。振りきったカタカナ発音が耳にのこる。《別に君を求めてないけど》と強がる主人公。

強がりはつづく。《悲しくないよ》《悲しくないよ》とくりかえすほどに、かれの悲しみが浮きぼりになる。僕もよくする失敗だ。

5歳の二女が泣きそうになると「大丈夫だよ」とつい声をかける。大丈夫じゃないからそう言っているのだ、という意味に娘はとらえる。彼女はさらに声をあげて泣きじゃくる。

ギターソロ明けのCメロでも、《楽しかった頃に戻りたい》と言ったかと思えば、《とかは思わない》と強がる。まるでぺこぱのツッコミのようだ。

最後にやっと、《また好きになるくらい 君は素敵な人だよ》と本音が漏れる。その本音から目をそらすよう仕向けていたのは、《僕がフラれるんだ》という恐怖。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のジョージ・マクフライとおんなじだ。だけど「香水」の主人公のもとに、マーティ・マクフライはあらわれない。


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