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”がんばること”に逃げない。

「もっとがんばります…!」

結果がでないときに、努力や精神論でなんとかする場面が多々ある。
研ぎ澄ましてスキルをあげられる側面はあるが、”がんばること”が神格化されすぎている。

ベンチャーの”がんばること”の代名詞としては以下のようなものが多い。
・長時間働くこと
・すぐにアクションすること
・まずやってみること

もちろんこれらを全否定するつもりはないけれど、”がんばること”には限界がある。気合や根性といった精神論の限界にぶち当たる前に、そもそもの”前提を問い直す”ことが必要だと思う。

”がんばる”という戦術的なアプローチの前に、前提となる”戦略”や”選択”に誤りがないか、現状の延長線上に起こり得る結果やコストの見積といっ
た、”やったらどうなるか”の視点を軽視してはいけない。

がんばることに逃げないためには


そういった前提を問い直すために、おすすめな本がこちら。
第二次世界大戦の日本軍と米軍の戦略を比較しながら、現代にも共通する日本組織に蔓延する失敗の本質について書かれた本です。

戦略目標の達成や前提を問い直すことを考えず、”がんばること”を優先してしまう日本人特有の”練磨”の思想がある。日本は戦後モノづくり大国として発展したが、現在はイノベーションが生まれていない。
それは商品を改善して性能をより良くするという”練磨”の思想から社会構造が変化してしまったから。つまり、前提となる戦略や現在の選択を問い直す視点がより必要になっている。

この本を読んで個人的に重要だと思った点は下記の4点。

①目標達成につながる勝利こそが重要
②戦略とは追いかけるべき指標を設定すること
③シングル・ループ学習からダブル・ループ学習の視点を持つ
④イノベーションには「既存指標の発見」「無効化」「再設定」が必要

1. 目標達成につながる勝利こそが重要

日本は真珠湾攻撃含め開戦初期、比較的多くの戦闘で勝利しており、南洋諸島において25の島に駐留していたが、米軍が抑えたのはわずか8つの島のみ。
日本は東南アジア、香港以降シンガポール、インド国境のインパールまで進軍し、数多くの勝利を積み重ねてきたものの、最終的には劣勢だった米軍に巻き返されてしまう。短視眼的な勝利ではなく、大局的な視点で目標達成に貢献する領域に集中することが勝利においては非常に重要になる。

こういったことは仕事の多くの場面で当てはまる。
目の前の仕事やプロジェクトに最善を尽くして頑張りすぎるが故に、この仕事は何の意味があるんだっけ?どんな結果につながるんだっけ?といった大局的な視点が抜け落ちる。ただがんばるのではなく、目標達成のための仕事という視点を忘れてはいけない。

2. 戦略とは追いかけるべき指標を設定すること

零戦の登場時は機体性能が優れており、パイロットの技能も高かったため、日本軍は米軍より優位に立っていた。当時の帝国海軍では操縦技能、射撃の命中度など達人レベルに達するまで1日も休まず猛訓練を続け、ある超人的な夜間見張り員の視力は8キロ先の敵艦の動きを察知できたといわれている。
それほど卓越した技能を持つ日本軍に対して、米軍はゲームルールそのものをかえることに注力。操縦技能が低いパイロットでも勝てる機体の開発、命中精度を極限まで高めなくても追撃できる砲弾の開発、夜間視力が高くなくても敵を発見できるレーダーの開発などを行った。
日本軍の技能による戦いに真っ向から挑むのではなく、米軍は技能を高めなくても戦えるように追いかけるべき指標そのものを変更した。
このように戦略とは、従来のゲームルールをかえ、追いかける指標そのものをかえる行為である。

3. シングル・ループ学習からダブル・ループ学習の視点を持つ

日本軍のように、想定した目標や問題の前提を疑うことなく、既存の手法を最大限改善を繰り返し最良の結果を求めにいくことをシングル・ループ学習と言われている。
これに対して、米軍のように既存のゲームルールを疑い、想定した目標や問題自体を再度検討し直すことをダブル・ループ学習と言う。
こうした目標や問題の前提を問い直すためには、現場からのフィードバックを得て正しく現状認識を行うことが大切になる。

4. イノベーションには「既存指標の発見」「無効化」「再設定」が必要

現場からのフィードバックを得て正しく現状認識を行った上で、ゲームルールをかえるようなイノベーションを起こすためには下記の3つが重要になる。

①既存指標の発見
②既存指標が無効化する領域
③新たな指標の再設定

当初劣勢だった米軍は無傷の零戦を鹵獲しテスト飛行を繰り返すことで零戦の強さを「旋回性能の高さ」と見抜き、既存指標を発見する。
その後、敵の旋回性能(=既存指標)を無効化するような、二機を一組とする「連携性」を重視することを重要指標として設定することで、優位を取り戻すことに成功する。

日本軍に限らず日本組織はこうした前提を疑い、抜本的なゲームルールの変更を行うイノベーションが苦手であり、どちらかというと目の前の問題を改善し続ける思考が根強くある。
もちろん目の前の課題改善に取り組む中で、成功を収めるケースはあるものの、戦略がない状態でたまたま体験的に得られた成功法則には再現性がない。だからこそ過去の成功法則に固執し、すべての場面に転用しようとしてしまう心理が働いてしまう。

すぐに答えを出すのが正解ではない

短視眼的に”がんばること”を優先してしまうのは、やっていないと不安、何かカタチになっていないと不安になってしまう心理があるから。まずはスピード感を持ってアクションしてみることも大切だが、少し考えれば事前にわかったのにという場面は多い。アクションすることは同時に時間やお金というコストがかかる。目標や問題設定に誤りがないか?、先に進むとどうなるかといった視点を常に持つことが何よりも大切。
そのために、すぐに正解を出さない、あえて答えを保留したり、悩みながら最適解を模索し続けることが重要なのかもしれない。

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