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部下の内発的動機を生み出すにはどうすべきか?

何度言っても行動が変わらない。
本気じゃない。努力が足りない。

外発的動機づけの特徴

目標を設定しても行動しない、求められている基準に達しない場合はどうしたらいいのだろうか?
金銭的な報酬や上司からの指導という外発的動機だけでは、個人の最大限の能力を引き出すことは難しい。特に金銭的な報酬は、個人の自発的な意欲を阻害するアンダーマイニング効果が発生する可能性もある。

内発的な動機はどうすれば形成できるのだろうか。
有機的統合理論では、外発的な働きかけから徐々に内発的動機形成に移行すると考える。その際、個人の自律性や有能感、関係性を満たしていくことで、段階的に外発的動機が内発的動機に移っていくと考えられている。


はじめはやりたくなかった仕事も、報酬や指導、意味付け、達成感、習慣化などが合わさって、徐々に自分からやりたくなるという状態はイメージが付きやすい。

しかし、外発的動機の段階で止まってしまう人に対してはどうすればいいのだろうか。お金がもらえるからやる。怒られるのが怖いからやる。決まっているからやる。
そうした状態では、その人が持つスキルは最大限発揮されない。
外発的動機は、やりたくないこと、できそうもないことに対して一定のパフォーマンス向上が認められる。ただ外発的要因がなくなると効果も消える。上司がいないと部下がサボってしまったり、インセンティブの上限になるとそれ以上の目標達成は目指さなくなる。

内発的動機を高めるためには

特性に着目する

個人の興味や関心、資質といった個別の特性に目を向けることが大切になる。仕事を任せる、何かしら報酬を与える、マネジメントをするにしても、個人の特性を踏まえないと最大限の効果は発揮しない。
個人の特性に応じて、仕事の采配、報酬の内容、仕事に対する認知と動機づけを結びつける必要がある。

want to とエフィカシー

個人の内発的動機を明確にするためには、

①本心で自分がやりたいと思える目標を設定すること
(Have to ではなく Want to)
②やれると確信できる状態をつくること。

認知科学では、人間の行動は、外部からの刺激→内部モデル→行動のアウトプットという一連の流れがあると考えている。同じ出来事でも人によって受け取り方や行動に差が出るのは、内部モデルの違いからくる。この内部モデルを上手く書き換えることで人の行動が変化していく。

①については、自分の特性からくる強みや、過去の幼少期に誰に言われるでもなく没頭してしまったことに着目する。このとき、お金を稼ぎたいや、3年後までに昇進するというような目標はWant toではなく、Have to の可能性がある。それを仕事上やらないといけないという目標では、内部モデルが大きく変わらず行動に移せない可能性が高い。本心からやりたいという衝動を、既存のHave toの延長線におかずに目標設定することが大切になる。

②については、自分がその目標についてやれる、その目標を達成したときに未来が好転すると確信できているかが重要になる。人は道筋の見えていないことや、やり方のわからないものには行動に移せない。具体的に道筋が描けていなくても、自分の認知の中で、やれるという自己効力感を感じられる目標になっているかが重要になる。

この圧倒的にやりたいと思える本心の目標設定と、やれるという自己効力感によって、内発的な動機が高まり、行動をおこせるようになる。


具体的な手順はこの本が参考になる。

モチベーションや動機付けの観点では下記の2冊がわかりやすい。

目標に対する意欲、自分がやることの意義や価値、自分が実行できるという自己効力感や達成までの手順のイメージ、このあたりの認識を個人の特性と結びつけることが非常に重要になる。

裏の目標が変革を阻害する

ただ、目標を設定しても上手くいかないことは多い。やりたいと思っているはずなのについサボってしまう。そんな状態になるのは、裏の目標(隠れた本音)が妨げているからかもしれない。
そんなときは下記の3つの視点に着目することが大切になる。

①阻害行動
②裏の目標
③自分の中で真実だと思っている強い固定概念

①阻害行動
自分の心から達成したい目標を掲げても、行動に移せないときは目標を妨げている行動を具体的に記述してみることが大切になる。やりたいと思っているのにできていないときに、実際はどういう阻害行動をとってしまっているのかをできる限り具体的に認識し、客観的に認知することが大切になる。

②裏の目標
本当はダメだと思っていても、阻害行動をとり続けてしまうのはなぜか。それは裏の目標という、本当は実現したい目標と矛盾する目標を抱えていることが多い。
例えば、部下に仕事を任せられる上司になりたいという目標を掲げていても、実際には仕事を任せられないという現状があるとする。その場合、その人自身が、自分がいないと組織が成り立たないという状態に心地よさを感じている可能性がある。自分が貢献することで周囲から賞賛されることに生き甲斐を感じるといった、隠れた本音が裏の目標として、①の阻害行動を引き起こしている。

③自分の中で真実だと思っている強い固定概念
そして改善していくためには、②の裏の目標を形成している強い固定概念や真実だと思っていることを、自分の中で認識することが重要になる。
例えば、自分自身が仕事を全うすることが会社の評価になったり、周囲の賞賛が自分の喜びという考え方が固定概念であり、②の裏の目標を形成している。

③の固定概念が②の裏の目標を形成し、①の阻害行動を引き起こしてしまう。本当にやりたいと思っていたり、何か行動を起こそうと思っても成功しないのはこうした理由がある。

そうした状態を回避するには、①〜③の要素を具体的に記述する。そして実際に、①の阻害行動をやめてみたときに自分が感じている、②の裏の目標や③の固定概念が本当に真実なのか、変わらないことなのかを、少しずつ実験的に確かめていく。
例えば仕事を任せられないという阻害行動を少しだけ改善して部下に任せてみる。そのときに、②の裏の目標や③の固定概念が、本当に自分が認識している通りのことが起こるのかを確かめてみる。不安に感じていることや煩わしいと感じていることが起こるのかを確認する。
そうして、行動の変化を起こしたときの心の動きを正確に記述しながら、徐々に改善を繰り返していく。その過程の中で、目標を達成できる、着実に行動できるという確信や没入感を感じることができるようになる。

こうしたプロセスを、上司が部下と一緒になって、認知を可視化したり、深掘りしたり、今の仕事と接続することで、部下の内発的動機を高めることは可能かもしれない。


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