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1989年~簡単に当事者にはなれないけれど~

久しぶりに明け方まで本を読んでしまった…

須賀しのぶ『革命前夜』



書店の入口に、やけに熱いPOPと共に平積みになっていたので(Amazonで検索すると、その手書きPOPの画像があります)、「じゃあ…」と購入。

物語は留学先の東独(今は亡き東ドイツ)に着いた主人公が、昭和天皇崩御のニュースを知るところから始まる。
平成元年=1989年。
振り返れば歴史が動いた激動の年。
11月9日にベルリンの壁が崩壊するまでのお話。

ブックレビューでは「一人称なのに、主人公が傍観者のようで感情移入できない」という理由での低評価もあるけど、そりゃ、バブル期の東京から、あの時代の東欧なんかに行ったら、傍観者になってしまうよな、と思う。
「自分の音を探したい」と、実体のない「自分探し」のような理由で留学した主人公と、例えば「立派なピアニストにならないと国に帰れない」という北朝鮮からの留学生では、背負っているものが違う。
良くも悪くもそれが日本人だし、重いものを背負ってるから偉いわけでもない。
そして、1年やそこらの滞在で“当事者”になれると思うなら、その価値観のほうが危険だと思う。

物語の前半は音楽大学を中心に、クラシック音楽の話がメインなので、出てくる曲を聴いておけばよかったー、とかに気を取られるけど、歴史のうねりみたいになってくる後半に入ると、目が離せなくなってページをめくり続けてしまう。
当時、ベルリンの壁崩壊のニュース映像を観て「そんなツルハシ⛏️1本でその壁壊せますのん?」て思ったけど、あのツルハシが象徴する事件や想いの積み重なりを描いた小説、というのが端的な感想。

´89年、高校1年生だった私が“戦うべきものの実体の見えない日本より、戦争してるとか、わかりやすい敵のいる国が羨ましいくらいだ”と思ってたのはこの頃な気がする。
同世代の中二病仲間はわかってくれると思うし、そんな人にはハマる作品じゃないかな。

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