"長編小説 『じゃんだらりんの国から』 第9話 「待ち遠しい石巻山の遠足」"

尋常小学校2年生の皆子は、学校行事の一環である遠足が控えていた。

遠足といっても石巻山という山を先生たちと一緒に登るという、小学校2年生にしてはやや過酷とも思える行事であったが、皆子はそれに胸を躍らせていた。

バリカンで丸坊主になった頭も違和感ないくらいに戻り、そのことを囃したりする子たちもいなくなって来たので、皆子にとって、遠足がとても待ち遠しいイベントになっていた。

皆子は、教室で今度の遠足の話を隣の席の昌俊と話をしていた。

「ねぇ、今度の遠足、一緒に弁当食べない?」

皆子がそう言うと、少し間が合いてから

「うん。いいよ。たぶん、僕もひとりぼっちだし。」

と、昌俊が返した。

それを聞いて、皆子は安堵の表情を浮かべた。

皆子は、お転婆であったが、同じ世代の女の子たちとは打ち解けるのが上手でなく、少し浮いていた。

昌俊も寡黙な性格であったため、ひとりでいることが多かった。

昌俊はやや病弱だったが、とても勉学熱心で、後にニュートリノ天文学の基礎を確立した小柴昌俊として世界的に有名なノーベル物理学者になるということは、この時、誰しも予想出来なかったであろう。

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