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毎週月・水・金曜日、“空白の残る”ショートショートを投稿します。 創作趣味のリハビリ、…

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毎週月・水・金曜日、“空白の残る”ショートショートを投稿します。 創作趣味のリハビリ、練習も兼ねているので拙い文章になりがちですが、お暇でしたらどうぞ。

最近の記事

28.視界【ショートショート】

「やあ。ようこそ死後の世界へ。  あ、自分が死んだことは自覚出来てる?理解しやすいように色々小細工してみたんだけど」  明るい口調で話しかけてくる彼?彼女?中世的で性別不明なそいつは、浮かぶ天使の輪に蝙蝠のような羽に和服の死に装束に謎の大鎌と、節操のない格好をしていた。  死んだ自覚はあると告げる。病死だと思う。急な心臓の痛みに襲われたのをはっきりと覚えていた。 「それで、俺はこれからどうなるんだ?お前が天国に案内するのか?」  性別年齢不詳のそいつがせっかくいっぱい用意した

    • 27.ホットミルク【ショートショート】

       カフェオレが好きで、独り暮らしを始めた頃はほぼ毎日作って飲んでいた。と言っても凝ったものではなく、濃いめのインスタントコーヒーにレンジで温めた牛乳を混ぜただけの簡単なものだ。夕食後に飲む一杯が、一日の終わりを感じさせてくれた。  しかし時々、コーヒーを淹れるためのお湯を沸かすのすら億劫になる日もあった。そんな日はスプーン一杯の砂糖を入れたホットミルクで済ませていた。疲労と苛立ちに染まった体に、甘いホットミルクが落ち着きを取り戻させてくれる。子供の頃の思い出がそうさせてくれる

      • 26.地球【ショートショート】

         お昼のワイドショー。普段先生と呼ばれる二人が討論を交わしている。 「プラスチックを止めて紙ストローを使うのは必要なことなんです。容器だって直ぐにでもプラスチック製を排除して、海外みたいにマイ容器に量り売りにするとか、化石燃料の使用を少しでも排除しなければ。地球をこれ以上破壊してはいけないでしょう」 「紙ストローの原料は何ですか?木ですよね。何年か前まで森林伐採がどうとか言われてたのはあなただったと記憶してますけども。紙もマイバッグも作るにも処分するにも燃料は使われてますよ。

        • 25.薬物乱用【ショートショート】

           毎日毎日、多量のクスリを服用しながら仕事をこなす。身体の限界を感じ始めているが、クスリ無しでは仕事にならない。 「ちょっと!私のお金抜いてまたクスリ買ったでしょ!控えなきゃダメだってあれだけ言ったじゃない!」 「うるせえな仕方ないだろ!アレが無いと仕事が続かないんだ、お前も解ってるだろ!それにほら、ちゃんとおまえの分も買ってきたから。必要だろ、お前も」  仲間の女が吼える。クスリを減らして稼ぎを貯めなきゃいけないのは、もちろん俺も解ってる。でも仕事が大きくなるにつれてクスリ

        28.視界【ショートショート】

          24.猫【ショートショート】

           何時の頃からか、猫になりたいと思うようになった。  嫌な上司に媚びることのない、食物連鎖の頂点。  ムカつく客に愛想笑いする必要のない、孤高の強者。  一日一度全力で狩りを行ない、残りの時間を寝て過ごす。気が向いたら縄張りをゆっくりパトロール。  気の合う仲間たちとたまに集会。何をすることもなくだらけて過ごし、気が済んだら解散。  そんな自由な猫に生まれたら、きっと生きるのが楽しかったことだろう。  猫に生まれたらよかったのに、と虚しく考える日々だった。 「でも最近悟った

          24.猫【ショートショート】

          23.都市伝説【ショートショート】

           テレビの中の真っ暗なステージに突如スポットライトが照らされる。  怪しげな雰囲気を纏ったスーツ姿の男が現れて、ライトの下に立ち止まった。大げさな手ぶりで演説を始める。 「ここ日本が混沌と活気に包まれていた時代。いわゆる戦国時代から400年以上が過ぎました。数々の名だたる武将たちが栄光栄華を求め、道半ばで果てて消えてゆきました。  そんな中、特に大きな栄華を築いた御家といえば、皆さん誰を思い浮かべるでしょうか。  徳川家。豊臣家。織田家。いやいや、栄華で言えば北条家に武田家。

          23.都市伝説【ショートショート】

          22.レジェンド【ショートショート】

          「隣、いいかな」 「…お好きに」 「あんた、笹山さんだよな。元覆面レスラー、スターダスト」 「まあ、そうだけど」 「だよな!いやあ、会えて嬉しいよレジェンド」 「よしてくれ。俺はそんな評価される人間じゃない」 「いやいや。国内メジャー3団体に海外団体3団体のベルトを同時に巻いた6冠王、それも覆面デビューから僅か3ヶ月で成し遂げた男をレジェンドと呼ばずしてなんと呼ぶんだよ。  なんといっても、AUSW王座戦が大好きでさ。何度も介入してくる相手の社長ごと纏めてフォール勝ち。あれは

          22.レジェンド【ショートショート】

          21.地球温暖化【ショートショート】

           資源ごみから拾ってきた小学生新聞。一面に載っていた写真付きの記事に興味を惹かれた。 「地球の温度は年々上がってるんだって。それで何十年後かには海の高さが何十センチか上がるらしいよ」 「へー」  一緒に拾ってきた流行おくれのファッション誌をめくるお姉ちゃんの、何とも気のない返事。僕は記事を読み進める。 「工場が出す二酸化炭素を減らす努力をしたり、自然由来のエネルギーを使う発電を増やしたりして、原因をなるべく減らす努力をしてるらしいよ」 「はぁ」  聞いているのか判りかねる生返

          21.地球温暖化【ショートショート】

          20.お地蔵さん【ショートショート】

          「え待って、こんなとこに地蔵あんじゃん。知らんかったー」  砕けた口調の女子大生がたまたま見つけたお地蔵さんに足を止める。屋根に守られた、比較的新しいものだった。 「どしたんよカナ、じぞー?マジじゃん。なんか説明も書いてあんよ。えー、以前この区画を焼いた大火事により傷ついた土地を鎮める為の地鎮地蔵です、だって」 「ウッソ偉くね?可愛いなりして頑張ってんじゃんおまえ」  カナと呼ばれたギャルが地蔵の頭を撫でる。小さな地蔵の笑顔は、恥ずかしそうにしているようにも見えた。 「そんな

          20.お地蔵さん【ショートショート】

          19.数秒後【ショートショート】

          「声掛けないの?あの男、電柱にぶつかるよ?」  隣で囁く声に耳を貸さず歩く。数秒後、後ろでゴッと思ったより大きな音が響いた。 「あーあ。折角見えてたのに助けてあげないんだ。意地悪だねぇ」  悪魔がニヤニヤ笑いながら野次ってくる。少しイラっとしながら、私は小声で答えた。 「歩きスマホなんてする奴が悪いんでしょ。特にイケメンでもなかったし、助ける義理なんてないわよ」  私にしか見えないにやけ顔の悪魔には視線を向けず、軽い悪態をつく。  コイツに憑りつかれて丁度1年。こいつに無理や

          19.数秒後【ショートショート】

          18.ナビゲート【ショートショート】

          「目的地へのルートを検索します。この先、直進です」  ナビに従い、分かれ道を直進する。横道にアミューズメント施設やスポーツ施設、飲み屋など煌びやかなものが並んでいて目移りするが、構わず進んだ。 「この先、しばらく道なりです」  商業ビルの立ち並ぶ通りは、渋滞で進みが遅くイライラする。時折止まっている古い大きな奴がとても邪魔だった。 「この先、右に曲がります」  住宅街に入る。広場で遊ぶ子供達は微笑ましかったが、入り組んだ道に嫌気がさして道を外れることにした。 「ルートを外れま

          18.ナビゲート【ショートショート】

          17.田舎【ショートショート】

          「俺の実家がすげえ田舎でさぁ。最寄りのコンビニ行くのに、車で15分以上かかんだぜ」 「俺ん家の方が田舎だよ。周りは田んぼしかないし、最寄り駅が車で30分だぜ」  不意に始まった田舎自慢。負けるが勝ちのネガティブ自慢合戦が繰り広げられ始める。 「いやお前出身〇〇町だろ?ショッピングモールもカフェチェーン店もあるし、十分都会だろ。ウチのとこなんて休日人が集まるのが百貨店だぜ。遊ぶ所も何もないド田舎だよ、ド田舎」 「お前らなんてマシだよマシ。俺の出身、市内にゲーセンも無いよ。学生が

          17.田舎【ショートショート】

          16.ケイドロ【ショートショート】

           世界で一番愛しい人と、同じ屋根の下で暮らす。それがとても幸せな気持ちにさせてくれることを、いま私は強く実感していた。 「ねえ、憶えてる?子供のころウチらの学校でケイドロがブームになってさ。昼休みは毎日やってたよね。でも身体が小さかった私はケイサツになったら全然捕まえれなくって、よく泣いてたっけ。  10年掛かっちゃったけど、ちゃんと捕まえたよ。そのうち増えるかもしれないけど、しばらくはこの牢屋で2人っきりを楽しもうね」  今日から始まる2人の生活に少々興奮しているみたいだ。

          16.ケイドロ【ショートショート】

          15.冥途の土産【ショートショート】

           空に浮いている。見下ろすと、自分が倒れている。 「そうか。俺死んだのか」  妙に冷静だった。助かりそうもない自分の体を見て、諦めが付いたのだろうか。  これからどうすればいいかはなぜか感覚で解った。魂にも本能的なものがあるんだなぁ、と初めて知った。  導かれるように飛んでいると、天界の入り口と思しき雲を抜けた。そこにはおよそ似つかわしくない建物が建っているではないか。看板には”土産物屋”と書かれている。  訝しげにその建物に入ると、店主が「いらっしゃい」と、軽快に出迎えてく

          15.冥途の土産【ショートショート】

          14.瞬間接着剤【ショートショート】

           傷心専用。壊れるほど傷ついた心も一瞬でくっつく!  そんな奇妙な謳い文句の書かれた瞬間接着剤が売られている。さしずめ落ち着く香りのするジェルでも入っているのだろうと思いつつ、ちょっとおもしろかったので話のタネにでもと買ってみることにした。  友人のウケを取れて満足し、机の引き出しにしまって数ヶ月。その接着剤の存在も忘れていたある日、愛犬が死んだ。  悲しみに暮れる中、急にそんなものがあったことを思い出し、何気なく使ってみた。そんなくだらない物にも頼りたくなるほど傷ついていた

          14.瞬間接着剤【ショートショート】

          13.レーザー銃【ショートショート】

           宇宙人に誘拐された。  突然だった。田舎道を歩いているといきなり目の前の風景が変わったのだ。  銀色っぽいのに金属的じゃない質感の壁に囲まれた部屋。中央に居た二人組の手足は触手状で、明らかに地球の人間ではなかった。  僕が命の危機に怯えていると、二人組の片方が話しかけてくる。 「すみません、装置の故障で転送しちゃいました」  ずいぶん軽い口調だった。もう一方が続ける。 「ごめんなさい。ただのミスなのですぐ戻します。あ、ウチらのことは別に秘密にしなくていいです。どうせもし信じ

          13.レーザー銃【ショートショート】