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13.レーザー銃【ショートショート】

 宇宙人に誘拐された。
 突然だった。田舎道を歩いているといきなり目の前の風景が変わったのだ。
 銀色っぽいのに金属的じゃない質感の壁に囲まれた部屋。中央に居た二人組の手足は触手状で、明らかに地球の人間ではなかった。
 僕が命の危機に怯えていると、二人組の片方が話しかけてくる。
「すみません、装置の故障で転送しちゃいました」
 ずいぶん軽い口調だった。もう一方が続ける。
「ごめんなさい。ただのミスなのですぐ戻します。あ、ウチらのことは別に秘密にしなくていいです。どうせもし信じる人いても、見つかるわけないほど技術差があるので」
 若干おかしな口調なのは翻訳がおかしいのか、それとももともとそういう口調の文化なのか。
 こちらの戸惑いはまるで気にせず、さらに続ける。
「せっかくなんでお詫びにこれ、あげます。無限に打てる高熱レーザー銃です。ウチらには古いオンボロ銃ですけど、あなた達の技術レベルならハイテクだと思います。はい、じゃ転送しますねー」
「え、ちょっと待―」
 止める間もなく、風景が見慣れた田舎道に戻っていた。手にはオモチャのような銃が握らされていた。

 一度試し打ちをした結果、確かに地球にはオーバーテクノロジーの銃だった。しかし僕は、その銃を使えずにいた。当然だ、未知の武器でも武器は武器、これを使って何かしようものなら即お縄だ。使えるわけがない。
 ただそれでは勿体ないので、あったことを喋ってレーザー銃を鉄板に撃つ動画を投稿した。どうせ誰も信じない、ただの遊びのつもりだった。
 しかし一週間後、この銃を1億円で売ってくれ、売ってくれるなら直接取引に行く、とメッセージが来た。
 どうせただの悪乗りだろうと思い、適当に「売ります」と返した。すると約束の日、本当に1億円入りのアタッシュケースを持った男が現れたのだ!
 僕は大喜びで銃を売った。どうせ自分じゃ使えないモノだ、未練なんかない。
 こうして僕は棚ぼたで大金持ちになったのだった。

 銃を買った男は、帰りの車の中でほくそ笑む。
「馬鹿な奴だ。無限にエネルギーが供給される機能をたった1億円ぽっちで売るとは」

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