進化するカードケース 創作の勧め
なにかをつくるとき、
習って見本どおりに作る→技術力がつく
イメージを創意工夫で作る→創る脳になる
というのが持論です。
どちらも大切ですが、日本の環境は、技術力のほうに傾きやすいです。
しかし、失敗を恐れず、マニュアルなしで作ってみる試行錯誤と取捨選択は、個人の創造性(クリエイティビティ)を高めます。
とはいえ、私が思いつくものなど、間違いなく何百年以上も前からすでに大勢が考案したことなので、大したことじゃない。でも大切なのは、自力で仕上げたら、それを創造性と呼べることです。
楽しいですよ。
創意工夫の国ですから、誰もがその遺伝子を持っています。ぜひ、この記事をご参考にしてください。
本日の作品はカードケースです。
ハンドメイドならではの個性的な作品ができる過程をお楽しみください。
厚手の布で小物をつくるのって、むずかしい💦
「着物の帯」は、革や塩化ビニールよりも優れる点がある
今回、使用するのは、厚手の手織りの帯です。手織りの布は厚地でもやわらかく、しかも軽いのが特徴です。
カードケースによく使われる革や塩化ビニール、このやわらかい、軽いという点で、帯には到底かないません。
やわらかくて軽いという特徴をフルに活かした作品にしたいと思います。
それではどうリメイクするかです。
デザインを考える(まだ想像のだんかい)
カードケースを思い浮かべてまず思うのは、仕切り付きで、出し入れ楽々なのが使いやすいことです。それからデザインが可愛いことも重要ですね。
ゴールはこの2つです。
それでは、作り方を決めます。
たとえばカルトナージュという厚紙に糊付けする製法があります。プリント生地の鮮やかさを最大に演出します。
カルトナージュは箱型で収納力に優れます。
ただし、出し入れが楽とはいえず、仕切りもなくて不便です。また、やわらかさや軽さが出せません。
ここは一般的な縫製にしましょう。
ところで縫製には、上から押さえて縫う方法と、中表で縫ってからひっくり返す方法があります。
上から押さえて縫うことが多いのは革製品です。
革は、端がほつれないので、縫い代を細くできるからです。
細いとはいえ縫い代のぶん、仕上がりサイズは一回り大きめになりますが、
仕切りやマチが付けられるのが良いところです。
布は、基本的には、上から押さえて縫うことができません。カットした端からほつれるからです。布のなかでも特に織物は、太い糸、細い糸が混ぜこぜに次から次へとほつれてきます。
だから織物(布)は中表で縫います。
なぜなら、ひっくり返すことで、端を内側に閉じ込められるからです。縫い代が内側に入るため小さめサイズで仕上がります。
蓋は、四角よりも丸いほうが可愛いので丸くします。
やわらか仕立てで、カードの出し入れが楽なことは間違いなく、仕切りも付けやすいでしょう。ただし、マチはむずかしいです。
ちなみに、革製品のカードケースにも「中表でひっくり返した」ものはあります。一回り小さいサイズで可愛いです。でもシンプルな造りになりますから、仕切は無理ですね。それに高価です。
失敗作がないと改善できない
カードケースは未経験で、マニュアルもありませんから、まちがいなく失敗するでしょう。まずはこの覚悟を決めなければなりません。
どうせ失敗するので、値段の安い薄めの生地で挑戦します。
薄い生地なら比較的かんたんだろうと予想があったからです。
市販のものを観察して作ってみたら、なかなか良い。そこで作品にしました。
持ってみると、それなりの弾力があるしっかりした造りで、でも軽く仕上がっています。正絹の紬は手にしっくりくる上質な生地で、通好みです。
でも、ゴールはまだまだ。厚手の織物で小さな作品をこしらえるのは、想像以上にむずかしいです。
問題は、このデザインは、縫い代の折り返しがあるため、両端の部分に16枚もの布が重なっていていることです。
そんなに重なっているなんて、見た目ではわかりませんよね。ここが中表で縫うときの最難関です。
カードケースのサイズで、厚手の布を16枚重ねて作品にするなんて、無理だとはわかっています。
しかし、創るには失敗作が必要です。少なくとも私のばあい、頭の中のイメージでは限界があるので、失敗作がないと改善できません。
覚悟はありますから、失敗するとわかっていても作ります。
ではでは本番、いざ、分厚い布での挑戦となります。
案の定、失敗しました。お見せするまでもない、カードケースの機能はない、ただの塊になりました。
それをよく観て、重なる枚数は半分に減らさなければならないと考えます。
楽観視しているときほど、必ず大きな障害にぶち当たる
枚数が増える原因は、蓋と本体を別に作り組み合わせ構造だからです。
そこで、蓋と本体を一体化する試行錯誤がはじまります。
カードケースは、蓋が難しいです。一体化できるつもりが、
思考が散漫して、蓋と本体をいっきに縫ってしまいました。
それで、また失敗です。
おかげで、蓋の部分を縫いひっくり返してから、ケース部分を縫うという行程がわかりました。
ここはそれだけでなく、同時に、仕切りも失敗しています。
かんたんとなめていたら、思いがけず大変な苦労が待っていました。
仕切りのむずかしさの1つは、裏表がわからなくなって頭が混乱することです。裏表を間違えると一緒にひっくり返って消えます。
それから、重なりを避けるためには(ない)ほうがいいわけで、そう考えると当然、薄い布を使ってしまう。考えてみればわかりそうなことなのに、中でダレて邪魔なだけの存在に気付いてショック。
他にも、本体と同じ高さで付けるよりも、どうしてなのか、段差を付けるのが難しくてまた失敗。
それにしても我ながらつくづく思うのは、なんど失敗してもめげないというか、性懲りもなく、チャレンジするときはいつも成功を描きながら始めてしまうことです。
そして、楽観視しているときほど、なぜだか必ず大きな障害にぶち当たります。
言い換えると、自分には予期できない障害は必ず大きい。
未来の障害を見抜く力こそが、真の実力だと思い知る場面です。
そんなこんなの苦労の甲斐もあり、重なる枚数は半分にできました。
でも、なんどやっても克服できないのが、蓋が閉まらないこと。
「蓋」は作品の顔なので、どうにかしなければなりません。もう、てんてこ舞いです。
金属ボタンを付けても、閉じない蓋を無理やり閉じると形が(いびつ)になって、蓋の両端がもちあがってしまう。
蓋を四角形から、半円形にしましたが、いびつが直せません。
それにボタンは、開閉がめんどうで好きになれません。よって不採用です。
マグネットも試しました。マグネットは力が弱くて、かんたんに外れます。それと、輪郭が痕になるのがイヤです。
あまりにもアグリーで耐えられず、ここでの失敗作はぜんぶ捨てました。
蓋は、あるていどまでは、自然に閉じなければなりません。
そこで、蓋の部分の表地と裏地は中表にせずに、端を折り込んで上から押さえて縫ってみました。それで閉まるようにはなりました。
でも、どうしても気に入らないんですよ。なんというか、布製の良さを台無しにする、のっぺり感というか。これだったら、厚手の手織物で作る必要がないというか。市販品との差がないというか。
やっぱり中表で作りたい。
そこで、ためしに裏地を表側に引っ張り出して誤差を埋めてみたら、どうにか閉じるようになったのです。
引っ張り出して得られた効果はそれだけではありませんでした。縁ができて、表地にギャザーがより、真ん中が高く、ふっくらとしました。
気に入ったので、比較できるよう、先ほどの黒と同じ布で作ってみました。
写真だとそれほど違いを感じないかもしれません。でも、右のほうが全体的にふっくらとしていると思いませんか?
実物を見せて、10人ほどに聞いてみたら、100%「右が好き」とほぼ即答でした。
人が好む形は、共通していることが多いです。
この作品、カウンターが女性だと目が追ってくる
さいしょのサンプルができてから2ヵ月ほど経ちました。サンプルはぜんぶ使っています。
ゴルフ場とか、練習場とか、美容院とか、カウンターが女性だとほぼ間違いなくチラ見されます。なんなら2度見もありますし、目が追ってくることもあります。
使い勝手もいいので、売り出してみようかなと思い、いくつか作っています。
クローゼットの中には、商品化できていない失敗作がたくさんあります。
成功できそうなときは、また記事にします。
創造性は、暮らしを豊かにします。
気軽にチャレンジできるもがあればぜひ始めてくださいね。
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