建築設計と間借りカレー屋の2足のわらじ
自己紹介
はじめまして、咖哩建築家の篠原(しのはら)です。
現在、東京 世田谷区の「梅ヶ丘」と「世田谷代田」にて「パカラ咖哩」という屋号で間借りカレー屋をしつつ建築設計をしています。(2024.03時点)
Instagramでは営業日時やこれまで作ったカレーなどを載せています。
経歴をざっと振り返ると
・兵庫県 宝塚市で生まれ育つ
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・関西の大学・大学院で建築設計を学ぶ
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・建築設計事務所に就職するのを機に、上京
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・4年ほど勤め退職
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・建築設計×間借りカレー屋として活動(2023.10~)
これだけを見るとあまりにもカレーの出現が突飛ですが、出会いと目覚めについては後ほど
この記事の要約
文章を書き始めたら長い駄文乱文になってしまったので要約しました。
興味のある方、お時間のある方は最後まで読んでいただけますと大変幸いです。
■noteを始めた理由
・自分のことを知ってもらう為かつ活動のプラットフォームとして。
■スパイスカレーとの出会い
・下北沢の「カレーの惑星」さんで人生初スパイスカレーを食べて衝撃を受ける。
■スパイスカレー修行
・独学でカレーを創り続ける。
・勤めていた設計事務所にて、2年半ほど毎週カレーをふるまう。
■建築設計事務所勤め
・アトリエ系と呼称される建築設計事務所に就職。
・建築業界で有名であることが必ずしも依頼に結びつくわけではないのでは?という疑問を覚える。
・独立を意識し始めると同時に、景気低迷、資材高騰、職人不足などの実情も否応なしに意識。
・それでも建築設計を続けていきたいという時に、どのように携わっていくのか漠然と悩み始める。
■「建築」と「食」の共有可能性
・設計事務所に勤めつつ時折カレー会を開催し、多くの人と知り合う。
・「食」の共有可能性に「建築」のそれとは異なる魅力と価値を感じ、両方やろうという考えに至る。
・「建築」と「食」どちらもやることでこれまで興味のなかった人、興味はあるが取っつきにくいと感じていた人との距離を縮められるのでは。
■展望
・カレーを通して建築を、建築を通してカレーを。
今はまだその両輪の大きさや形を整えている段階ですが、両輪だからこそできる輪の広げ方で多くの人と喜びを共有していきたいです。
noteを始めた理由
「建築設計とカレー屋をやっている」
という話をすると「なんで?どういうこと?」と呆気にとられる方が多いので、自分のことを知ってもらう為かつ活動のプラットフォームとして。
また、いずれ建築設計事務所を辞める方や、勤めようとしている方、飲食の間借りを始めてみようか思案している方々にとってのひとつの参考事例になればと。
ひいては新たな仕事に繋がればこの上なく嬉しいですが。
スパイスカレーとの出会い
就職を機に関西から上京して住んだのは小田急線沿いでした。
そんな小田急沿線には古着屋や演劇、音楽、そしてカレーの街として言わずと知れた”下北沢”があるわけでして、家から近いこともあってある日食べに行くことに。
カレー激戦区の下北沢。その中から人生初のスパイスカレーをいただくお店に選んだのは「カレーの惑星」さんでした。
決め手はカレーの華やかさと、店舗立面に付いているフジカラーのテント看板。あまりにもキャッチ―。
(この記事を書いている最中に移転のお知らせが!)
そんなこんなで行列に並んで入店。
注文したのはキーマカレーとなにかのあいがけ。
カレーがテーブルに現れ、ひとしきり写真を撮ったのち、いよいよ実食。
一口目はご飯は掬わずにキーマだけを
市販のルー育ち。
カレー作りでこだわってもルーを2種類使う、野菜をすりおろす、ビールを入れてみる程度のことしか知らなかった僕の脳に、得も言われぬ感覚が押し寄せてきました。
そんな異文化との遭遇に脳を揺さぶられながら完食し、店内を見渡すとカウンターには整然と並ぶスパイスの入った瓶が。
「これを揃えたら作れるのか、、」という、あまりにも素人な考えのもと、その場でスパイスを売っている場所を調べ、後日買いに行くことに。
無事、スパイスと初心者向けのカレー本を購入し、満を持して初スパイスカレー作り。
そして、できたのがこれ
見た目からしておいしくなさそうですね
けれど、スパイスカレー経験値が1にも満たないくらいのこの時の僕は
「まぁ、こういうものなのかな」と
いや、にしても美味しくないんですが。
スパイスカレー修行
スパイスカレー作りを始めたはいいものの飽き性なこともあり、当初は「3回続けば上出来」くらいの気持ちでした。
が、
仕事から帰宅
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カレー作り
↓
弁当として携え、職場へ
↓
同僚にも一口あげる。
そんなことが何度か続いたある日、同僚から「一食分食べたい」との声が。
それを機に毎週月曜日は事務所全員にカレーをふるまうという習慣が生まれました。
材料費だけを貰ってつくる。
その代わりに自分が作りたいカレーを実験的につくれること、そしてなにより毎週楽しみにしてくれる人たちがいる。
この2点のおかげで気が付けば2年半ほど継続できていました。
自分一人で完結する趣味であったなら確実に続いていなかったので、まわりの環境に感謝です。
建築設計事務所勤め
ここで少し建築設計について。
社会に出て建築設計の仕事に就こうとする際、たいていの場合は
・アトリエ系
・組織設計
・ゼネコン
・ハウスメーカー
・工務店
から勤め先を選ぶことになるかと思います。
アトリエ系のおおまかな特徴としては
・事務所ごとに代表建築家の個性が色濃く出ている。
・建築設計に特化した事務所であること。
・少人数で構成されている事務所が多い。
・独立を視野に入れている人が他の選択肢より多いイメージ。
もちろん、事務所の規模や形態、経営方針も様々ですし、生涯を通して勤められる方、勤めつつ個人で活動する方も多くいらっしゃいますが。
僕が勤めていた事務所はこのアトリエ系に当たります。
そこは建築専門誌に頻繁に掲載され、個展の開催もしたりと建築業界で注目されている事務所でした。
実際、雑誌に掲載されていたのを学生時代に目にしたことが就職応募のきっかけとなりました。
担当したプロジェクトが掲載されたときは大変うれしかったのを覚えています。
一方、事務所に勤めていると多方面から様々な話が聞こえてくるわけでして、それらを耳にしていると
「建築業界で評価されることと仕事依頼数は必ずしも比例しないのでは?」
「建築専門誌の読者の多くは同業者であり、潜在的顧客の目に留まりにくいのでは?」
という疑問を抱き始めることに。
専門性を突き詰める。
その価値は十二分に理解していますが、そちら側からのアプローチ ”だけ” では届かない場所があるのでは?
加えて景気低迷、資材高騰、職人不足など個人では打開しえない実情が、独立することを意識し始めたときにリアリティをもって徐々にのしかかってきました。
それゆえ、建築を世に生み出しつづけ、活躍されている方々を敬服すると同時に、その道は辿ろうとしてそう辿れるものでもないなとも。
それでもやはり、建築設計の喜びを知っているので「自分はどのように携わっていきたいのか、どういう仕事のつくり方があるのか」漠然と悩みながら日々を過ごすことに。
「建築」と「食」の共有可能性
設計事務所に勤めつつ、時折カレー会なるものを開いていました。
同僚が「事務所にカレーシェフがいる」とまわりに広報し始めたことがきっかけで、同僚とその友人らで開催したのが始まり。
その後も定期的に開催していると参加者は友達、友達の友達またその友達、というように次第に増えていき、気付けば建築界隈じゃない範囲までカレーの輪が広がっていました。
これからを漠然と悩んでいた僕は、この「食」の共有可能性に「建築」のそれとは異なる魅力と価値を感じ
「じゃあ、建築と食の両方やればいいじゃん」という安易な考えに至ることに。
現時点で考える共有可能性。
それを構成する要素と違いを書き出してみると
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01.速度
それぞれが共有されるまでのざっくりした工程
「食」:注文→調理→完成→食事
「建築」:依頼→設計→工事→竣工→引き渡し
になるかと思います。
提供までに長時間を要する料理もありますが、建築のそれとは比にならない点で「食」は共有速度がはやい。
02.評価
「建築」を評価する時、その切り口はあまりに多い。
パっと思いつく限りでも、意匠、構造、環境、設備、歴史、景観、利便性。そこに設計論も加われば尚のことハイコンテクストに。
”使いやすい” ”お洒落" "かわいい" などで良し悪しを単純には形容できなく、また、それらは十分条件でしかありません。
一方で「食」も評価軸が多いとはいえ、作り手と消費者の共通目的が「おいしい」である点においてとてもわかりやすく、自分の中での評価軸を持ち易い。
03.金額
いうまでもなく「建築」の方が高い。
04.選択回数
生涯で住む場所を選択する機会は、一般的には10回にも満たないと思います。
対して、現代日本においては一日に数回は食事を摂り、その度なにかしらの選択をしているはずです。
05.対象
基本的に「食」は能動的に摂る人が対象ですが、「建築」は施主やそこに用がある人のみならず ”場” に属し、程度の差はあれど景観や社会を構成する一員です。
またそこに ”ある” という時間が食べ物より長いので影響範囲が広い。
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これらの違いは "だからどちらがいい" というものではなく、それぞれが備えている価値である。
(金額は安いほうがいいかもですが)
ただ、「食」は ”とりあえず一度食べてみる” という挑戦、即ち自分の人生に関係づけることが建築に比べて容易であるとは言えそうです。
「建築」と「食」どちらもやる。
両業界から "そんな甘くないぞ" と怒られそうでもありますが、両方やることで「食」をきっかけに「建築」にこれまで興味のなかった人、興味はあるが取っつきにくいと感じていた人との距離を縮められるのでは?と考えています。
展望
うだうだと書いてきましたが、まだ設計活動もカレー屋も始めたばかりで、今は走る為に両輪の大きさや形を整えている段階です。
この考えが社会で通用するのかは正直わかりませんが、大変有り難いことに建築やカレーのイベントにお声がけ頂いたり、カレーを通して建築設計の依頼も頂き動き出そうとしているので、いい報告ができるよう一層精進してまいります。
カレーを通して建築を、建築を通してカレーを。
両輪だからこそできる輪の広げ方で、多くの人と喜びを共有していきたいです。
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