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ベトナムで学んだホスピタリティ。

私は、23歳までは客室乗務員になりたかった。

日本のホスピタリティを本当に素敵だと思っていたから。言葉にしなくてもなぜか伝わって、欲しいものを”察して”用意してくれる。相手のことを心から考え尽くして行うおもてなし。

”おもてなしとは、心のこもった待遇のこと。顧客に対して心をこめて歓待や接待や サービスをすることを言う。”ーWikipediaより

日本のおもてなしは世界で1番だと、もちろん今でも思っている。日本国民のほとんどが、"お客様はもてなすものだ"という概念を当たり前のように持っていると思う。海外に来たら、それって結構すごいことだと感じた。

ベトナムのようにお店に誰も人がいなかったり、ご飯の中に何か得体の知れないものが入っていたり、店員が携帯をいじっていたり、スヤスヤ眠っていたり、ひたすらお喋りしたおしていたり、ってことは、日本ではほとんどないと思う。たとえコンビニでもしっかり教育された店員さんが、元気に「いらっしゃいませ」と迎えてくれる。


でも、私が気になっているのは、果たしてサービスをしている側は、本当に心からやっていることなのかな、ストレスはないのかな?ということ。

私は大学時代、ずっとサービス業でアルバイトをしていた。結婚式場、日本食屋さん、居酒屋。そのときは当然、お客様に対して「できない」と言ってはいけないと思っていた。だからできないときは「申し訳ございません。」という言葉を付け加えて、渋い顔をして深く頭を下げることがあたりまえだった。

ホテルでアルバイトをしたことがある人は知っているかもしれない。決して全てではないと思うけど、ホテルの裏側は壮絶である。厳しいことが、多いと思う。大抵結婚式の裏と、結婚式後の後片付けのときには、まるで体育祭かのような大騒ぎである。先週までいたのに今週突然いない人がいて、どうしたのか先輩に聞くと「連絡が繋がらない。」なんてことはよくあった。

素敵なサービスを提供する"完璧なサービス"の裏側には、たくさんの苦悩があるのだと、ティーンながらに感じていた。

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ベトナムに、良い意味でも悪い意味でも慣れてしまった私は、日本に帰ったとき違和感を感じた。(こんなことを書くと海外かぶれだと大学の友達に言われることが大いに想像できるんだけども。笑)

「いらっしゃいませ〜どうぞご覧くださいませ〜」と叫び続けるショップ店員さん。商品を運んでいる時にちょっと私とぶつかった。「大変申し訳ございません!」いやいや、ちょっと当たっただけだよ、大丈夫よ〜。
お会計をする。前に1人、人がいたので私は並んだ。1分くらいは待ったかもしれない。「大変お待たせいたしました!」いやあ。そんなには待っていないな。「ありがとうございましたまたお越しくださいませ〜」と真顔だけど声だけはハキハキしている店員さん。なんだか、ロボットみたいだと思ってしまった。


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大学生の時、香港に旅行した時に思った。コンビニに入ったとき。その時改めて「日本のおもてなしは世界ではあたりまえではない」って思ったのを覚えている。コンビニの店員のやる気が皆無だった。「いらっしゃいませ」の一言もない。でもその代わりに、帰り際、「日本人?コンニチワ〜〜」と言われた。私は嬉しい気持ちでお店を出た。

私は旅行に行く時、ゲストハウスに泊まることが多い。ゲストハウスで働く人って、どこの国でもみんなフレンドリーで友達みたいで、あったかい。友達の家に泊まる感じ。

「お客様は神様」って日本ではよく言われていたけど、私はやっぱり「お客と店員は対等。」でいいと思う。同じ人間なんだから、たとえお客であっても店員を対等に見るべきだと思う。付け加えると、自分がお客さんのときは、「ありがとう」って伝えるのはすごく大切で、頑張っている店員さんにはプラスαで「あなたのサービスすごくいいね」とか、伝えられるともっと世界は素敵になると思う。私はそういう言葉に救われてサービス業で働いていたから。対等に扱われているなあという気持ちになる。


「○○ありますか?」「ないです。売り切れちゃった。」

「この注文通っていますか?」「あら。忘れちゃった。今から作るね。」

お店が混んでいる。「席はありますか?」「んーないや。」

タクシーに乗り込む。「○○まで行ってくれる?」「ごめん、その場所知らない。」

ベトナムでは、このやりとりの中に基本的にサービスをする側が申し訳なさそうに謝る動作は含まれない。私もここにきて、ないんだ。そうか、知らんのか。忘れちゃったのね。じゃあいいや。ないならないで違うものを探そう。知らないのか。じゃあ、知っている運転手を探そう。料理が来ないなあ。まあいいや、その間、店員と話してよう。本を読めばいいや。


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"B to Cのサービス業はブラックだよ。”と日本で就活をしていたとき言われていたし、アルバイトをしていて感じていた。

日本食屋さんでアルバイトをしていた時。お店が満席でたくさん人が待っていて、何度「すみません」と謝ったか、何度怒られたか、今思うとそれが不思議でたまらない。

もちろん、日本も少しずつ変わってきていると思う。「顧客満足度より従業員満足度」を唱える会社も増えたと思う。けど、1月1日も営業をして、問題には24時間対応があたりまえ。それに対応するのはもちろん人間な訳であり、便利の裏の苦悩というか、なんというか。1分も待てなくなっているし、やってもらえることがあたりまえの日本人の対応はとんでもなく大変。


本音と建前

日本人は外の顔を作るのが上手くて、本当は何を考えているのか見えにくいとよくベトナム人スタッフから言われる。私も然り。ご飯を食べるとなんでも「美味しい」とつい言ってしまう私は、(実際本当に美味しいんだけど)最近「本当に美味しいの!?エリちゃん、全部おいしすぎじゃない!?」と周りのベトナム人から突っ込まれることがある。(笑)


仕事をしていても思う。ベトナム人スタッフから、日本人が言っていることの"本当の意味"を聞かれることがある。「エリちゃん、お客さんはメールには”また次回よろしくお願いします。”って書いてあるけど、これはどういうこと?次のアポイントの日程を決めた方がいいかな?」「それは、今回は、うちの会社を使わないって意味だよ。」

「あの日本人のお客さんはすごく私を気に入っていたみたい!」「エリちゃん、あのお客さん、あれから連絡がこないよ!!どうして!?」

前に、ベトナム人の友達から言われたことに考えさせられて、Instagramにこんな投稿をしたことがある。

共有して考えたいだけのつぶやき。。ベトナムのお友達が話してくれたこと。
🇯🇵🇯🇵"日本が大好きで日本語を勉強して、日本に来たけど、日本で働くには、"日本人"にならなきゃいけない。考えとかマナーとか建前とか全部!!とにかく全部できないと日本には入れない!!ずっとずっと頑張ってきたけど、それに気付いたとき、怖くなって、もう無理だ!これ以上頑張れないってなって帰国したんだ!今日本にいる友達も、お金のために働いてる。僕たちは日本人みたいに仕事が好きにはなれない、外国人が、全部日本人になれるわけがない" 😓😓刺さった。。。。。
建前、、なんかもはや自分のどこからが本音でどこが建前なんだ?!とか考えてきた。。よくわからん。。きっとできる、けど、違いを理解し合うってとてつもなく難しい。まだまだ足りないところがたくさんあるぞーーー

”おもてなし”が作る”建前”に私も少し怖くなる時がある。

社会人になると、みんな建前がとても上手くなるから本当に思っていることを言い合える友達を作ることが、とても時間がかかる。というのを学生じゃなくなってから実感した。だから素直でわかりやすいベトナム人といると、日本人といるより落ち着くなあと思う時がある。

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ベトナムでは自営業や、自分が畑から採ってきたものを売っていたり、というようなお店もまだまだ多いから、物を買って「ありがとう」と言ったり、「美味しい」と言ったことを伝えると、本気で嬉しそうにする。追加でおまけの果物をくれたりもする。その時の笑顔が、最高に可愛い。

素直な気持ちで出る笑顔が、一番のホスピタリティだなあと思う。

過度なおもてなしがないから、お店の帰り際に心から「ありがとう、よい一日を」とか、お正月に「ハッピーニューイヤー」と言われるとすごく心地よく感じる。日本人だとわかると、片言の日本語で、「アリガトウゴザイマス」と言ってくれたりもする。

自分を大切にしていて心に余裕があるベトナムだからこそ、素直な気持ちで、人に優しくできるのだと思う。サービスをしたくないときはしない。するときは心からする。


ホスピタリティー=心から優しくしてあげたいと思う気持ちが溢れて人に行うこと。

になると、いいなあ。


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去年の夏に日本へ帰ってGUに行ったとき、お会計が人じゃなくて驚いた。無人コンビニも今はあると聞いた。ファミレスで働く店員さんの「いらっしゃいませ〜」が、ロボットに思えてしまった私は、わざわざ人間がストレスを抱えて無理なおもてなしで働かなくてもいいと思った。ストレスになることは、みんなロボットに任せてしまえぇ!


働いてる側が幸せに働けていたら、それが伝染してお客さんも幸せになれるのだから、無理しなくてもいいという考えが広まれば働いている側もお仕事が楽しくなってみんな幸せ、めでたし。

ではないかと思う一方で、その”おもてなし”が日本の強みでもあるわけだからやっぱり大切にしなきゃいけないのかも、ともちょっと思ったりもする。

みんなが幸せになる世界が来ますように、あーめん。


いつも見てくださっている方、どうもありがとうございます!こうして繋がれる今の時代ってすごい