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インボイス制度開始に伴う運用の手間はどれだけあるのか

日本パートナーCFO協会所属、ITコンサル×パートナーCFOのタナショーです!  この記事では、ベンチャー企業や中小企業の経営に役立つ情報を発信していきます。
2023年まであと1ヶ月ということで、師走の言葉通り忙しく働いている皆さんも多いことでしょう。

2023年10月からとうとうインボイス制度が始まります。

インボイス制度は取引先の状況によって仕入税額控除が変動し、従来よりも納税額が増える(=損失が発生する)場合があります。
この仕入税額控除は皆さんの関心が多い領域ではありますが、今回はそれらに細かくは触れず、インボイス制度が始まる前の準備や開始後の運用についてがテーマです。
特に買い手側の運用負荷が高まることが想定されますので、買い手側の運用中心でお伝えしていきます。

インボイス制度開始前(2023年10月前)の運用

①売り手である取引先のインボイス登録状況を確認する

インボイス制度は2023年10月から開始しますが、開始前に準備することがあります。
それが取引先のインボイス登録状況の確認となります。インボイス登録と書きましたが正確には適格請求書発行事業者であるかの確認であり、課税事業者であるかの確認でもあります。

この「適格請求書発行事業者であるかどうか」で、今後の想定される仕入税額控除の増減(納税額の増加)が予測できます。
仕入れの多い企業の経営陣としては、この損失がどれだけの規模になるかは必ず把握しておきたいところでしょう。

このチェック作業は主に取引担当者や経理担当者が実施することになると思います。
また、なるべく仕入税額控除を確保したい(納税額を抑えたい)という動きも十分予想できるでしょう。つまり、なるべく売り手にインボイス登録してもらって課税事業者になってもらうという動きです。
課税事業者変更への要請自体は独占禁止法上問題ありませんが、実態が要請ではなく強要だったり、協議なしに価格を据え置く場合は下請法違反となります。
取引先からの値上げ交渉も発生しますので、取引先との協議や社内への承認作業など相当数の交渉作業が発生するでしょう。
取引先の数が多ければ多いほど、無視できない業務量になることが予想されます。


インボイス制度が始まった後の運用

②請求書の記載があっているかをチェックする

インボイスが始まったら新たな運用が始まります。まず重要な作業として請求書が適格請求書であるかどうかをチェックする運用が挙げられます。
今まで請求書は、注文書通りに金額や消費税の記載があっているかなど、自社のチェックルールに基づいて精査をするのみだったのが、新たに下記の要件が記載されているかを必ずチェックしないといけません

適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
取引年月日
取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
税率ごとに区分した消費税額等
書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要」

しかも、受け取った請求書に上記要件が記載されていない、または記載内容に不備があった場合は取引先に再作成依頼が必要となってきます。
正しい記載がされた請求書ではないと仕入税額控除が認められないため、必ずこの運用が発生することになり担当者の業務負荷が懸念されます。


③請求書の保管と、仕訳方法の変更

取引先から受け取った請求書についても一定期間の保管が必要です。保存期間は「課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間」です。
電子データでの保存も可能です。
また、適格請求書かどうかで仕入税額控除も変わるということは仕訳方法も変わります。
取引先または適格請求書かどうかで仕訳を変更しないといけないため、間違えないように注意をする必要があります。



まとめ、効率的な運用はあるのか

いかがでしたでしょうか。今回はインボイス制度の開始にあたり買い手企業の運用負荷が増大するというお話でした。
制度導入にあたり企業側の運用負荷が増すばかりでメリットがあまり見受けられないのが悩ましいところですね。

そんなインボイス制度対応への運用ですが、効率的な業務を行う手段はないのでしょうか?
根本的な対策は取りづらいですが、自分としては「請求書チェック作業を簡素化・共通化できるようルール化すること」と「取引先とのコミュニケーション手段を確立しておくこと」をおすすめします。
・前者は取引先から提出してもらう請求書の書き方のマニュアルを展開したり、請求書テンプレートを利用して作成してもらうように交渉をする。
・後者はチャットツールやBOXなどの他社と共有できるストレージサービスを使うことで、請求書修正が発生した際に修正指示が便利にできるような準備をしておく。

これらの対策がありますね。また売り手側取引先の負荷となりますが、請求書プラットフォームと呼ばれるSaas製品を使うのも手でしょう。
さまざまな運用負荷や懸念点を想定しながら、きたるインボイス制度の開始に備えていただければと思います。



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