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2023年12月 - 今月のスナップとエッセイ

時候の挨拶

 今年最後の〇〇をこなしていく。仕事はもちろんだが、今年最後の歯科検診、美容院、マッサージ。自分のメンテナンスも忘れない。
 自分に優しく生きる。一生で最も長く付き合うのは自分の身体である。最近、それを意識するようになった。

 定期的に、リンパマッサージに通っている。街角のサロン。ずっと同じセラピストさんにお願いしており、すっかり顔なじみだ。
 静かな音楽が流れる個室。アロマオイルは、ラベンダー。ガチガチの身体がほぐれていく。施術後は、呼吸のしやすさに、いつも驚く。セラピストさんに、そう伝えると「背中をケアすると、呼吸するときに使う筋肉がほぐれる」そうだ。息を吸って吐くだけで、こんなにも筋肉を使っている。

 そんな今年最後のマッサージ。いつものようにスッキリして、帰宅する。今日は早く寝ようと、ベッドに潜る。いつもより長く眠った。深い眠りの海に、身を委ねる。

 翌朝、目が覚める。いやあ、良く寝たな。気持ち良かった。

 あれ、首が回らない。
 あろうことか、寝違えてしまった。寝相の悪さが物を言ったようだ。よりによって、マッサージ翌日に。「まあ、そんなこともあるか」と笑う。
 師走の朝。寝室の空気はひんやりとしていて、わたしは首をさすりながら起き上がった。

落葉

 友人と写真を撮りに行った。富士山の周りまで連れ出していただいて、秋の名残を探した。秋と呼ぶには遅く、冬と呼ぶには暖かい日だった。

 友人が話してくれた印象的な話を書き留めておこう。
 秋に対して抱くイメージ。葉が落ちて丸裸になった樹木は、どこか物寂しく感じる。
 しかし、視点を変えると、そのイメージが変わる。樹木は、生きるために落葉している。葉の養分を自らに蓄え、冬を越え、その先の春を目指している。だから、決して寂しい季節ではない、と。

 なるほどなあ、と思った。この地球に存在する生命は、生きるべくして生き続けているのだ。寒い日を耐えられるように、その先も生き続けられるように、今を生きている。生きるとは、シンプルで良いのだろう。人間は生きる意味を探しすぎなのかもしれない。

 葉の落ちた街路樹を見る。
 彼らは、未来を見て今を生きている。

光が綺麗な季節

 この季節になると、光の美しさが際立つ。
 斜めに差し込む柔らかな光が降り注ぐ。

 そんな時、撮った写真を、モノクロ現像したくなる。光を読みとりやすいからだ。元来、写真はモノクロだった。光がなければ、写真は撮れない。白くの世界から、冬の暖かい光の色が見える。そんな写真が撮れるようになれたら良いなと思う。

 もちろん、カラーでも撮るけどね。
 モノクロは奥深い世界で、わたしにとってスパイスのようなものである。


サンタさん、現る

 クリスマスには、ケンタッキーを食べる。一緒に住み始めた頃、夫が「ケンタッキーのバケツみたいなやつ頼んでみたい」と言った。あのバケツをバーレルを呼ぶのを、その時知った。それから毎年、クリスマスにはバーレル。ふたりでセットについてくる丸皿のデザインを楽しみにしている。今年も、たらふく食べた。

 そして翌朝、目覚めるとベッドのサイドテーブルに大きな袋が置かれていた。え?え?とびっくりするわたし。
「今年頑張ったの、サンタさん見てくれてたんだねえ」と夫。

 29歳にもなって、サンタさんが来たらしい!プレゼントは、左手デバイスのTourBox Eliteだった。大歓喜!これ、ずっと欲しかったの!
「サンタさんありがとう!」
 わたしは、夫に向かって言った。すると彼は、天井を見上げて「サンタさん、ありがと~!」と、とぼけた。サンタさん、ありがとうね。

PHOTOGRAPHY_202312

 今年も、たくさんシャッターを切った。数万回押したシャッターボタン。そのすべてが心打たれた瞬間だ。2023年も多くの想いを写真に託してきた。

 2023年春。愛猫・クロの命の灯火が揺らいでいく日々。大好きなクロの姿を残したくて、シャッターを切った。そのたびに、心では涙が止まらなかった。だが、クロの前では泣かないと、こみあがるものをぐっと堪えた。
 桜が満開だった。これから桜が咲いたら、クロを思い出すのだろう。満開の桜に、シャッターを切った。
 クロと最期まで一緒に過ごしたこの春を、わたしは忘れない。

 2023年夏。20代最後の夏。ずっと夢だった浴衣を着て、夫と花火大会に行った。三脚とカメラとビールを持ってトコトコと河川敷まで歩いた。夫は甚平を着て、下駄を履いた。「ずっと下駄履きたかったんだよね」と笑う夫。
 子ども時代ぶりに着た浴衣。大人になってから、ずっと着たかった。ひとつの夢が叶った瞬間だった。20代のうちに叶えられてよかった。やりたいことは、どんどんやっていこうと思った。
 カメラを設置し、カシュッとビールを開け乾杯する。右手にレリーズ、左手にビール、夜空に花火。「綺麗だねえ」とぽつり。最高の夏だった。

 2023年秋。また右手が使えなくなった。もう何度目かもわからない。痛みに苦しむ日々に、カメラを持つ余裕はなかった。
 少し落ち着いた頃、久しぶりにX100Fを持った。握力が落ちて、コンデジなのにずっしりと重く感じた。心も重くなる。しかし、撮り始めれば、心はどんどん軽くなった。
 わたしにとって、カメラは、写真は、スナップは、元気の源だ。再認識させられた。撮れるということ、身体が動くこと。当たり前のようだが、感謝しなければならない。

 2023年冬。念願のNikon Zfが届いた。クラシックなデザインのNikon Zfcが発売されたのは2021年。センサーサイズはAPS-C。あれからずっと、Nikon Zfが出てほしかった。オールドレンズを使うなら、その魅力を発揮できるフルサイズ機がほしいと思っていた。
 2023年9月。Nikon Zfが発表された。迷わず、予約初日に注文した。そして10月、発売日には届かなかった。「注文が多く、出荷が遅れている」とメールが届いただけだった。
 それから1ヶ月。ようやく届いたNikon Zf。心待ちにしていたNikon Zf。今まで買ったカメラで、一番楽しい。やはりわたしは、ダイヤルをガチャガチャ回してからシャッターを切るのが好きなようだ。

 最近は、夫と散歩している。何時間も歩いている。その日の気分でカメラを選び、持っていく。同じ場所を歩いても、天気や時間で見える景色が違う。カメラを持たなかったら、気がつかなかっただろう。

 そのような機会が、たくさんある。

 2023年12月31日。明け方の雨が上がり、雲間から光が差してきた。
 わたしは今日も、光と影を探してシャッターを切る。
 今日も、そして、これからも。

 それでは、良い写真生活を。
 今年もお読みいただきありがとうございました。
 皆さま、よいお年をお迎えください。

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