肉厚なプロダクト指標をつくる - North Star Metricを起点にしたKPIツリー
フレームワークをただ埋めただけで終わらずに意味のある成果物にする肉厚シリーズ第4段はプロダクト指標について書きます。
🙅 ペラペラなプロダクト指標
まずは、肉厚ではないペラペラなプロダクト指標を紹介します。これまでの肉厚シリーズ同様にフードデリバリープロダクトの例です。
KGIを売上とおいて、売上を達成するためのKPIツリーを構築し、その各要素を各部署のKPIと定めています。そして、そのKPIツリーの各項目をそれぞれの部署が担当していて、各部署全員が成果を出すと売上があがる仕組みになっています。
👿 なぜペラペラなのか
1. ユーザー価値の向上を目指していないから
このよくあるKPIツリーがなぜペラペラなのでしょうか。一言でいうと、「ユーザー価値の向上を目指していないから」です。プロダクトの成功の3本柱であるビジョン、ユーザー価値、事業収益であるにも関わらず、このKPIツリーの根にあるのは事業収益である売上であり、売上の向上だけを注視しています。
もちろん、売上の向上のためには、ユーザー価値の向上が必要であることは間違いないため暗黙的にユーザー価値の向上を目指している、とも言えます。しかし、せっかくの定量的な目標であるので、事業収益とユーザー価値の両方に貢献する指標が肉厚なのです。
2. 部署の成功がプロダクトの成功と結びついていない
また、このペラペラ指標のもう1つ悪いところは、KPIが部署ごとに割り振られていることです。このような指標の持ち方をしてしまうと、部署を超えた連携がしづらくなってしまい、継続率が充分に担保されていないのに部署の目標を達成するために新規ユーザー流入施策にコストを掛けてしまう、といったことが起こり、プロダクト全体の成功が遠ざかります。
👼 肉厚なプロダクト指標をつくる
では、このプロダクト指標をどのように修正すれば肉厚にできるでしょうか。プロダクトの成功の3本柱であるビジョン、ユーザー価値、事業収益のどれもに影響を与えることができる指標を北極星(North Star Metric)として設定しましょう。
詳しい作り方はこちらのnoteに書いたのでご参考ください。本noteでは具体的な作り方を記載していきます。
1. Input Metricを洗い出す
Breadth(幅)、Depth(深さ)、Frequency(頻度)、Efficiency(効率)の4つの観点でこのプロダクトが成功している状態に必要な要素を洗い出してみます。
AARRRモデルのすべての工程に関わるInput Metricが出ているとよいですね。
2. 因果関係を見つけ、North Star Metricを見つける
書き出したInput Metricの因果関係をつくってみましょう。風吹けば桶屋が儲かります。
左側の黄色い四角で書いた因果関係と、ビジョン、ユーザー価値、事業収益を結びつけることができる指標を考えてみます。
1日あたりの注文品数です!書き出したすべてのInput Metricの向上しているとき、「1日あたりの注文品数」が上昇します。そして、「1日あたりの注文品数」はユーザー価値、事業収益の全てに貢献できそうなので、これをNorth Star Metricとします。(※ 本noteではビジョンについてはあまり触れておりませんが、ビジョンにも貢献するもので選んでくださいね。)
良いNorth Star Metricのチェックリスト
1. ビジョン、顧客価値、事業収益のInput Metricになっている
2. AARRR(Pirate Metrics)のどの項目の改善にもつながっている
3. 測定可能である(月に1度など、高頻度で計測できないものはNG)
4. 総会員数などの積み上げた数字ではなく、計測期間だけの結果
5. ユーザーがプロダクトの価値を感じている瞬間であること
3. KPIツリーの形に直す
一旦発散させた頭を収束させていきます。1.のInput Metricを体系的に整理していくと、「1日あたりの注文品数」を向上させるには、まずアプリを起動してもらうこと、そして、どの地域のユーザーも一定数以上のレストランが候補になること、注文したいメニューがたくさんあることの3つにカテゴライズできました。これらを1層目のKPIとして、それを更に分解することができました。
このように分解すると、1. で洗い出したInput Metricではまだまだ足りなかったところも見つかります。例えば、注文率を上げるためには「星4以上のレストラン数」がKPIにありますが、このKPIを達成するためには「レビュー数」を向上させなければいけません。このように、North Star Metricを決めて、それを向上させるためにプロダクトのどこを改善すべきかを発散と収束を繰り返しながら検討することで肉厚なKPIツリーを作ることができ、具体的な改善策のアイディエーションにも繋がります。
おしまい
今日は、肉厚なプロダクト指標の持ち方でした。毎度のことながら、プロダクト指標の考え方などは1つではありません。今回は「KPIツリー」というフレームワークを私がどのように使っているのかを書いてみたので、みなさんがどのように使われているのかや、ご意見、ご感想などいただけたらありがたいです。
North Star Metricについてはこちらの記事もあるので、よかったらご参考ください。