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プロダクト指標の作り方 - North Star Metric

ソフトウェアのプロダクトを対象としたNorth Star Metric(NSM)と呼ばれる指標の作り方を書きます。
🙅‍♀ CACがいくらが適切かといった具体的な話はありません
🙆‍♀ プロダクト指標(NSM)を考えるためのフローの話があります

どうしてKGIがダメなのか(ダメではないです)

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プロダクトの成功とは、「ビジョン」「顧客価値」「事業価値」の3つのバランスが取れた状態です。KGIは一般的には売上など、事業価値に基づいて決定されます。例えば、KGIから派生するKPIツリー側でビジョンや顧客価値について手当がされていれば問題にはならないかもしれませんが、KGIだけをプロダクトとして追っていてはプロダクトの成功とは別の方向を目指すことになってしまいます。そのため、プロダクトの成功に直結した指標を作ることが必要なのです。

プロダクトと事業

また、小さくリリースをして改善を繰り返し、品質が向上したときにグロースをする、というのはプロダクト立ち上げの鉄則といってもよいでしょう。そのため、プロダクトそのものの良し悪しと、GoToMarket(どのように市場に投入するか)の良し悪しを分けて計測することで、プロダクトの状況をより解像度高く捉えることができます。また、例えば、指標がKGI(売上)だけであれば、プロダクトそのものが悪くてもお金を書けた施策や営業活動で新規のユーザー獲得にさえ成功すれば、事業全体としては一見目標を達成しているようにも見えてしまいます。こういった問題を起こさないために、狭義のプロダクトとしての指標を持っておくことが解決策になります。

プロダクトの指標が満たせている状態 + 事業部内の活動 → KGIの達成

Input MetricとOutput Metric
ところで、指標には因果があり、原因となるものをInput Metric、その結果引き起こされるものをOutput Metricと呼びます。例えばダイエットをするときに、毎日5km走るということがInput Metric、その結果として5kg痩せるのがOutput Metricです。プロダクトの例にすると、継続率がXX%というInput Metricに対して、売上がYYY万円というOutput Metricがあるというような関係になります。

プロダクトを成功に導く指標

前置きが長くなりました。プロダクトの指標の作り方についての話に入っていきましょう。

■ 1. プロダクトのCoreとWhyを再確認

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私の記事を読んでくださっている方にはおなじみですが、指標はプロダクトのWhatに位置しますので、前提になっているCoreとWhyをもう一度頭に入れてから指標の検討をはじめましょう。はじめましての方は、「指標を作ろうとしているプロダクトのゴールを明確にしましょう」と読みかえてください。

プロダクトのCore/Why/What/Howについてはこちら
https://note.com/tably/n/nc61adec4e662

■ 2. プロダクトのWhatから、Input Metricを洗い出す

1. のゴールを達成するために追うと良さそうな指標を洗い出します。洗い出すときには、Breadth(幅)、Depth(深さ)、Frequency(頻度)、Efficiency(効率)の4つの観点で洗い出すとスムーズです。例えば、このSNSだったら以下のようなものが当てはまります。

* Breadth(幅): DAU、総投稿数
* Depth(深さ): ユーザーの1日での投稿数、リアクション数
* Frequency(頻度): 週1回以上ログインするユーザー数、投稿する間隔
* Efficiency(効率): 「もしかして友達かも?」から友達になった率

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(引用元: https://www.slideshare.net/amplitudemobile/product-workshop-finding-your-north-star-handout)

他の着眼点としては、AARRRの各段階で指標を洗い出してみたり、5Eでユーザーの行動ごとに指標を書いてみると視野が広がります。

AARRRとは?
 Acquisition(獲得)、Activation(活性化)、Retention(継続)、Revenue(収益化)、Referral(紹介)、の5つの頭文字を取ったもの。ユーザーを獲得して→アクティブにして→継続させて→収益化させ→紹介させる、といった行動を段階別に表したもの。
AARRRはアー!と読み、海賊の掛け声だか叫び声だかに似ていることから海賊指標(Pirate Metrics)と呼ばれると言われているが、エーエーアーアーアールって呼ぶ人の方が多い(わたし調べ)
5Eとは?
Entice、Enter、Engage、Exit、Extendの略。プロダクトを知って→触って→使って→使い終わって→また帰ってくる、ユーザーの行動のフロー。このユーザーの行動を念頭にペイン・ゲインを洗い出すと抜け漏れがない。(3Cやの、4Pやの、5Aやの、なんでも略したらええってもんちゃうねんぞ。)

■ 3. Output MetricとなるNorth Star Metricを作る

Input Metricを洗い出すと、あれもこれも見なければならないことがわかると思います。例えばSNSだったら、DAU、一人あたりの投稿数、フォロー数、全体の会員数、インフルエンサーの数、継続率、いいね率、バズる投稿の数etcと有象無象な指標が出てきます。これらはすべて大事です。

そして、これらのInput Metricに対して、Output Metricになるものは何でしょう?KGIでよく言われる売上もその1つです。しかし、先述の様にKGIではユーザー価値とビジョンの視点が抜けてしまいます。そのため、「ユーザー価値」にも「ビジョン」にも貢献するものを間に挟むことで、プロダクトの指標としましょう。これを、North Star Metricといいます(※)。North Starとは北極星、すなわちチームで目指すべき方向を表すものです。そして、SNSの例では、さきほど洗い出したInput Metricがすべて向上したときには「ユーザーがそのアプリを開いている時間」が伸びそうなので、これをNorth Star Metricとすることができます。「売上が高い」に比べて、より明確にユーザー価値を意識した指標になりました。

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まとめると、このNorth Star Metric(以後、NSM)として定めるプロダクトの指標はビジョン、顧客価値、事業収益へのInput Metricであり、2. で洗い出したAARRRや5Eに紐づく指標のOutput Metricであるものになります。

NSMの具体例がほしい?3タイプに分けて考えましょう◎

NSMはプロダクトの特性に応じて、Attention、Transaction、Productivityの3つにカテゴライズされると言われています。3つのタイプについては以下の資料で私は学んだのでぜひこちらをご確認ください。

Test & Learn: How to Find Your Product's North Star Metric
https://www.slideshare.net/optimizely/test-learn-how-to-find-your-products-north-star-metric
https://medium.com/@amplitudeHQ/every-product-needs-a-north-star-8abd3202da6f

以下、私による勝手な意訳です。ぜひ、↑の資料をご確認ください。

■ Attentionタイプ 例) Facebook、Netflix
ユーザーがそのプロダクトでどれくらいの時間を過ごすかが肝なプロダクト
NSMの例: プロダクト滞在時間、1日で5分以上プロダクトを使ったユーザーの数 etc

■ Transactionタイプ 例) Amazon、eBay
ユーザーがどれだけコンバージョンするかが肝なプロダクト
NSMの例: 購入完了数、プライムユーザーの平均購入数 etc

■ Productivityタイプ 例) Slack、Salesforce
ユーザーが、どれくらい便利になるかが肝なプロダクト
NSMの例: レコード数、メッセージ送信数 etc

良いNSMとは?
ビジョン、顧客価値、事業収益のInput Metricになるもののなかから、どれをNSMとして選ぶか迷うことになると思いますので、こういうものを選ぶと良いNSMになるチェックリストをおいておきます。

1. ビジョン、顧客価値、事業収益のInput Metricになっている
2. AARRR(Pirate Metrics)のどの項目の改善にもつながっている
3. 測定可能である(月に1度など、高頻度で計測できないものはNG)
4. 総会員数などの積み上げた数字ではなく、計測期間だけの結果
5. ユーザーがプロダクトの価値を感じている瞬間であること

■ 4. North Star Metricから始まるKPIツリーをつくる

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あとは、KGI/KPIと同じです。NSMを頂点としたKPIツリーを作りましょう。つまり、この作業は2. で洗い出したInput Metricsをツリー構造に整理することになります。プロダクトとして追うべき指標と、各機能として追うべき指標を分けましょう。

また、ボトムアップでNSMを作るときと違って、NSMからトップダウンにKPIに分解していくことになるので、2. では思いつかなかった項目に気づくことができるかもしれません。

■ 5. ダッシュボードをつくる

4. で設定したプロダクトとして追うべき指標を閲覧できるように、ダッシュボードを作りましょう。指標を作って満足するのではなくきちんと計測をして、毎日確認をして、達成に向けて改善をしていけるチームをつくっていきましょう!


以上、指標の考え方でした。ご参考になれば、幸いです。
また、みなさんの考える良い指標の作り方もぜひご共有いただけると嬉しく思います!

(※) 日本ではまだあまりNSMという言葉は馴染みがないですが、英語の記事だととても良く見るようになりました。このnoteでのNSMの説明は私の言葉で書いているので、もしNSMと初対面の方がいらっしゃれば以下の記事なども合わせてお読みください。

What is a North Star Metric?
https://blog.growthhackers.com/what-is-a-north-star-metric-b31a8512923f


参考文献

noteを書く上で勉強させていただいた記事一覧です。(すべて英語です🙏)

North Star Playbook The guide to discovering your product’s North Star
▶ North Star Metricを作るためのフローやサンプルがかなり丁寧に記載されている
https://amplitude.com/north-star

4 Steps to Defining GREAT Metrics for ANY Product
▶ 指標を作るためのGAMEフレームワークの解説
https://hackernoon.com/metrics-game-framework-5e3dce1be8ac

Product Workshop - Finding Your North Star - handout
▶ 指標を作るときには、Breath(幅)、Depth(深さ)、Frequency(頻度)、Efficiency(効率)の4つの観点
https://www.slideshare.net/amplitudemobile/product-workshop-finding-your-north-star-handout

Test & Learn: How to Find Your Product's North Star Metric
▶ NSMの3タイプについて(スライド版)
https://www.slideshare.net/optimizely/test-learn-how-to-find-your-products-north-star-metric
▶ (テキスト版)
https://medium.com/@amplitudeHQ/every-product-needs-a-north-star-8abd3202da6f

What is a “North Star Metric”? (+ 8 steps how you can discover your NSM)
▶ NSMの書き方とポイントのまとめ
https://growwithward.com/north-star-metric/

The 5 E's of Customer Journey
▶ カスタマージャーニーを書くときの5E🍩🍩🍩🍩🍩
https://isaacjeffries.com/blog/2016/5/17/the-5-es-of-customer-journey

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