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ダークな旋律が紡ぐ旅『Musique Pour L'Odyssée』の全貌〜Art Zoydの進化する前衛音楽世界:1970年代のアンダーグラウンドシーンの反乱

■Art Zoyd – Musique Pour L'Odyssée
■収録曲:Side 1 - 1.Musique Pour L'Odyssée「旅の音楽」(a.Odyssée「オデッセイ」 b.Falaise「崖」 c.Combat「戦い」 d.Étrave「船首」 e.Combat「戦い」 f.Voile「帆」 g.Odyssée「オデッセイ」)(17:05) // Side 2 - 1.Bruit, Silence - Bruit, Repos「騒音、静寂」(10:44) 2.Trio "Lettre D'Automne”「トリオ『秋の手紙』」(7:01)
■パーソネル:Thierry Zaboitzeff(b,cello,vo) Michel Berckmans(oboe, bassoon) Daniel Denis(per) Michel Thomas(ss,ts) Jean Pierre Soarez(tr) Gérard Hourbette(viola) Franck Cardon(violin)
■カバー・アート:Unsafe Graphics
■リリース:1979年

 アール・ゾイは1968年にフランスで結成された前衛プログレ・バンドです。1970年代末に、コマーシャル化する音楽産業に反旗を翻す格好でヘンリーカウに扇動されて興ったムーブメント、また、彼らによってロンドンで実施されたフェス(R.I.O.=Rock inOpposition)に参加したフランスの旗手的なバンドです。彼らの音楽は、従来のロックやジャズを超えた実験的なもので、特にチェンバーロックやアヴァンギャルド・クラシックの影響を強く受けています。1976年に初のアルバム『Symphonie pour le jour où brûleront les cités』(都市が燃える日のための交響曲)をリリースして以来、その独特なスタイルと革新的なサウンドで独自の地位を築きました。

 R.I.O.の一派には、ほかに、Stormy Six (Italy)、Samla Mammas Manna (Sweden)、Univers Zero (Belgium)、Art Bears(UK)らがいました。いずれも、フリー・ジャズや前衛音楽の影響下にある根暗な音楽です。

1979年にリリースされた『Musique Pour L'Odyssée』(旅の音楽)は、Art Zoydの第二弾アルバムとして、前作のダークでシネマティックな雰囲気を更に発展させた作品です。制作は、核となるメンバージェラール・アウラン(Gérard Hourbette)とティエリー・ザボイテック(Thierry Zaboitzeff)が主導し、それぞれヴァイオリンやチェロ、電子音楽器を駆使しました。この二人の創造的な才能が、アルバム全体の音楽的な方向性を決定づけています。このアルバムでは、バンドがより複雑でテクスチャー豊かなサウンドを探求し、その過程で電子音楽とクラシック音楽の要素を巧みに融合させました。特に、ストリングスとブラス、そして電子的なサウンドスケープが交錯する様は、聴く者の想像力をかき立てます。微妙にパーカッションが入ることはあるものの、全般にストリングスが奏でる暗鬱なメロディーが核になっています。この音を聞くと、彼らがイメージしている「旅」は、TDRで家族で陽気にとか、箱根で温泉にでもはいってのんびりみたいな種類の旅ではないことだけはよくわかります。

 ストリングが不気味に鳴っている底の方で輪郭のぼやけたベースが鳴っており、時折、暴力的にヴァイオリンとヴィオラが斬り込んできたりするという、本当に精神的に不安定な人たちがやっているのか、又は、聴衆をそうした状態にせたい人たちがやっているのかの2択だろうなと思える病的な音楽です。そりゃ、音楽産業界からは相手にされないよな、ということが頭の2、3分聴いただけで十分理解できます。同系統の音楽には、メジャーなところではタンジェリン・ドリームのツァイトが挙げられますが、こちらのアール・ゾイの方がはるかに音数が多く音楽的です。

 それから、この音楽がロックと呼べるのかについても、賛否分かれるところだと思いますが、Bruit, Silence - Bruit, Reposのベースを中心にアグレッシヴになるあたりは若干キング・クリムゾン的なので、まぁプログレなんだろうなぁというところ。

 ちなみに、このアルバムのジャケットですが、これは1983年のフランス盤です。1979年発売時のジャケットと2013年に再発された際のジャケットが異なりますので、一応、ネットから拝借した写真を載せておきますね。

<左1978年、右2013年>

 怖い音が聞いいてみたい方には、ベルギーのユニベル・ぜロとともにオススメ!

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