NPO・患者会 広報「基本のキ!」② コミュニケーションに役立つツールの整備
患者会などNPOの広報活動のお手伝いをプロボノ(スキルや専門知識を活用して取り組むボランティア活動)で行う「テトテトプロジェクト」。
NPO経験者としてプロジェクト事務局を担当するメンバーがお届けする、医療・ヘルスケアに関連するNPOの広報が知っておきたいシリーズ第2回です。
今回は情報発信に欠かせない「ツール」がテーマです。
筆者:佐藤 剛(オズマピーアール ヘルスケア本部 エキスパート)
〔前回の振り返り〕
広報活動、情報発信に取り組む前に「知っておくべきこと」の全体像
第1回目の投稿では、広報の体制について、情報の流れと用いるツールについて図を用いて整理しました。
https://note.com/ozma_inc/n/n2a1c670e5d1b
そのうえで「次のようなことを想像しながら、一緒に取り組みを考えていきます」とお伝えしました。
そこで今回は、いざ「情報発信に取り組もう!」と決意した際に、はじめに検討したり、整理したりしておくと良いポイントをお伝えしていきます。
患者会の成長フェーズと取り組みの変化
お話をお聞かせいただいた皆さんの、団体としての取り組みをフェーズごとにまとめると、概ね3つに分けられるようです。
<第1フェーズ>
●患者さん本人やご家族など、当事者同士がつながる。
●同じ医療機関や地域で小さなグループをつくり、お互いに連絡を取り合い、情報交換を行う。
●使用するツール:SNS、ブログなど
<第2フェーズ>
●他地域での連携や全国的なつながり形成に取り組む。
●特に患者数が少ない希少疾患の場合、治療できる医療機関や相談できる専門家が居住地に存在しないこともあるため、地域をまたいで協力・連携する輪を広げていく。
●使用するツール:ホームページ、SNS、紙媒体など
<第3フェーズ>
●規模の拡大と組織化に発展する。
●多様な人が参画すると、ニーズが細分化するため「当事者同士の情報交換」から「治療環境の向上・確立」「ボランティアや寄付など必要な支援の獲得」「アドボカシー(声をあげて社会や制度に影響を与える活動)」など、様々な目的と、それにあわせた組織化が進む。
●使用するツール:プレスリリース、ニュースレター、クラウドファンディングなど
「自分たちはどの段階にいるんだろう?(現在地の確認)」
「これから取り組むべき、実現すべきことは何だろう?(未来地図の確認)」
これらの「問い」を重ねて行ったり来たりしながら、リソースが限られてしまうなかでも、できることを1歩ずつ進めていくといった姿勢が大切になります。
ツールの種類と特徴の整理
次に、患者会をはじめとしたNPOが使える・使うべきツールを、その種類や特性を俯瞰して見ていきます。
<ホームページ>
今となっては代表的な広報ツールとなりました。
開設するためにサーバーやドメインなどの契約手続きが必要で、きちんと制作するには専門的な知識も必要になることが多いのですが、最近は『Wix』や『Jimdo』など、基本機能は無料で使うことができ、特別な知識がなくても用意されたテンプレートに沿ってホームページを作れるサービスもあります。
<SNS/ブログ>
個人でも使っている方が大勢いる、こちらも身近になったインターネットサービスです。
ホームページとの違いは、各種サービス(Facebook、Twitter、Instagram、note、Amebloなど)を利用しているユーザーがコミュニティ化されているので、更新したらサービス内でつながった人に通知されたりするなど、「プッシュ型」のアプローチも可能なことです。
(ホームページは「プル型」といって、GoogleやYahoo!などの検索エンジンを利用した人しか辿り着けない受動的なツール)
<紙媒体>
ある程度の期間運営しているNPOは、こちらの紙媒体の方が馴染みがあるかもしれませんね。
団体紹介、活動報告、会報誌など、手元に残る資料として用意することで、インターネットにアクセスしにくい人に情報を届けたり、仕様に工夫を入れたりすることで「届く」「開封する」「手に取って読む」といった「特別感」のあるリッチな体験を設計することも可能です。
※プレスリリースやクラウドファンディングは、また別の回で詳しく説明しますね。
「仲間」と「サポーター」ごとの「満足」につなげる情報の整理(付録付き)
今回のコラムでお伝えしたかったことをまとめると、
「まずは手軽にSNSから始める」
「ホームページは最低限の情報から掲載していく」
このように「できること」からスタートすることも大切です。
しかし一度公開してしまい、小まめに投稿や更新ができないなど運用が不安定な場合、
「この団体、本当に大丈夫かな…?」
「ほしい情報が見つけられない。。」
と見た人を不安にさせてしまう残念な結果になることもあるので注意が必要です。
最後に、ツールの使用や制作を検討する際に、「どんなニーズに対して」「こんな情報が用意できると」「ユーザー満足につながりそう」という考えを整理するためのシートをご用意しました。
【シートの使い方】
①まずは「患者や家族(当事者)」と「一般人(サポーター候補)」ごとに「何を目的にツールを使うのか=ニーズ」を整理する
②次に「そのニーズを満たすための情報は何か」を洗い出す
③最後に、洗い出した情報それぞれが、「どんな内容で」「どんな表現方法(テキスト、表、グラフ、写真など)で伝えると分かりやすいか」を考える
私たちの日常生活でも、同じ情報を扱っているはずなのに、探しやすさや見やすさで「満足度」が左右されてしまうこともありますよね。
せっかく関心を持ってもらったり、調べてもらったりした人と良好な関係を築いていくために、「ユーザー視点」で情報を届けるヒントになりましたら嬉しいです。
尚、note内の資料(PDF)をご希望の方は下記よりダウンロードください。
次回は、メディア向け広報の武器「プレスリリース」の書き方についてお届けする予定です。
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