研修のグループディスカッション設計で大切にしたいこと3つ
先日実施した研修に
「グループディスカッション」
を取り入れたところ、大いに盛り上がり、実りある時間を提供することができました。
そこで今回、やってみて改めて気づいた
「設計時に大切にしたいこと」を、
今後の備忘メモとしてまとめてみます。
1.ハードルは低く、ベビーステップで
参加者の中には、
「グループディスカッション」
というものに不慣れな人、苦手意識を持つ人は、少なからずいるものです。
また始める際、一度にいろいろな指示を出すと、混乱してしまったり、やるべきことに注意が向いて、肝心の「他者との対話」に集中できなくなることがあります。
なので、まず考えたいのが
「ハードルを低くする」こと。
やることを絞る。そして明確にする。
必要な作業がいくつかあったとしても、
段階的に、ベビーステップで、
少しずつ取り組んでもらうのがいいですね。
- めざすものに向けて、段階的に
今回オーダーいただいた研修は、
お店の改善に向けたものですが、
これから取り組んでいくにあたって
・従業員みんなの「目線合わせ」
・従業員どうしが「指摘し合う」関係づくり
をしたい、とのことでした。この2つが、
この研修で「めざすもの」になります。
短時間/数回の研修だけで到達するにはハードルが高いので、段階的に取り組むことにしました。
「目線合わせ」
→まずは、お互いが考えていること/大事にしていることを知る
「指摘し合う」
→まずは、他者への「フィードバック」をやってみる
そこで今回、グループディスカッションで
「各自が取り組んだことを出し合う」
「他者の取り組みを聞いて、フィードバックをする」
という2つの体験をしてもらうことにしました。
- 不慣れな人でも話しやすい工夫
参加者には、グループディスカッションに不慣れなパートさんが多数いることもあり、話しやすいよう工夫をしました。
ひとつめの体験
「各自が取り組んだことを出し合う」
では、ディスカッションに取り組む前に、取り組んだことを整理するシートを配布して、書き出す時間を設けました。
じっくり思い出して文字にできたところで、
「書いたことを紹介してみてください」
と伝え、グループで出し合う時間に入ります。
すると、パートさん、そして新人さんも、臆することなくいきいきと、自分の取り組んだことを話していました。
ディスカッションに慣れていない人でも、言いたいことをスムーズに発信できたようです。
- 未知の体験は作業を分解
ふたつめの体験
「他者の取り組みを聞いて、フィードバックをする」
は、おそらくほとんどの人にとって未知の体験なので、やりやすくなるように作業を分解しました。
以下の項目を記載したシートを事前に配り、これに沿ってメモを取りながら、メンバーの話を聞いてもらいます。
なお、この項目には、ディスカッション前の講義部分で私が何度も繰り返し使った言葉と話の展開を、そのまま使っています。これまでの流れに乗って、自然にできるようにしました。
シートにメモを取りながらメンバーの話を聞き終えたら、ひとつめの体験同様、書いた内容をメンバーに「紹介」してもらいます。
すると、戸惑うことなくフィードバックが始まり、そこから活発な対話が起こりました。
お互い取り組んだことを称賛し合ったり、
「自分もやってみよう」「詳しく教えて」
というやりとりが生まれて助言し合ったり、
よりよい方法を求めてアイディアを出し合ったり。
店舗業務を担当していない管理部門の人も
「手伝いたい」「研究したい」
「お店をもっと細かく見ようと思った」
と言っていて、
「全体で協力してお店をよくしよう」
というムードが醸成されていました。
取り組むことを分解したり段階的に設定することで、ディスカッションがしやすくなり、研修の「めざすもの」に一歩近づけたかなと思います。
2.グループ分けで環境を整える
先ほど
「パートさんや新人さんも」
「店舗担当ではない管理部門の人」
と書きましたが、今回の研修の参加者は、
すべての部署、パートと正規、若手から中堅/ベテランと、顔ぶれが多様でした。
このように様々な人が参加する場合は特に、
グループ分け、メンバー構成には気を配りたいところです。
グループの人数は、基本的に
「4,5人」
が適正かと思います。
言いたいことが発言できて、メンバー全員の話をじっくり聞けて、いろんな意見が出ながらも、みんながひとつの話題に集中できる環境としては。
各グループが4,5人になるように、参加者の情報を元にメンバー構成を考えていきます。
- メンバー構成に向けて得たい情報
まずは属性ですね。
担当業務と役職、勤続年数、年齢層は
できるだけ入手する。
これらを揃えるかバラすかは研修の目的しだい。今回の目的のひとつが
「従業員みんなの目線合わせ」で、
「まずは、お互いが考えていること/大事にしていることを知る」
をめざしていたので、可能な限りバラバラにして、均等に割り振りました。
もうひとつ得ておきたい情報は、
参加者それぞれの興味関心や、取り組んでいること、抱えている課題。
つまり、本人が
「知りたい/聞きたい」
と思っていることです。
今回は、第1回実施後のアンケートである程度知ることができたので、一覧化して、それを元にメンバーを構成しました。
おかげで、ディスカッションが始まってすぐ、相手の話す内容に興味を示し、お互いがやっていることや気をつけていることを訊き合う光景が見られました。
研修後も学び合ったり刺激し合う関係になる、そのきっかけができたかなと思います。
- グループ内の役割は設定しない
リーダーやタイムキーパーといった
「グループでの役割」や、話す順番などの
「グループの運営」については、
私は基本的に設定しません。
なぜなら、研修中の参加者の言動に、
日常では見られない、新たな「発見」
があるかもしれないからです。
話をリードしたり、時間を気にしたり、相手の話を引き出したり、掘り下げる質問をしたり、盛り上げたり・・・
といった「役割行動」は、特定の状況や他者との関係によって引き起こされる場合があります。
研修という非日常の場面において、普段見られない「役割行動」が起こったとき、それは今後の可能性を秘めた、新たな「発見」と言えるでしょう。
人事や管理職から見て。また本人にとって。
研修の目的からすると「副産物」ですが、日常からは得られない「発見」という、思いがけない成果が生まれる余地をつくっておくと、研修に付加価値がつくかなと思います。
このように、グループ分けは
・話がしやすいように配慮しつつ
・新たな発見が生まれる余地をつくる
というように、程よい環境を整えるイメージで考えています。
3.変更する勇気と、そのための準備を
参加者の様子を見て、
ちょっと難しいかなと感じたり、
もっとやった方がいいかなと思えたら、
思い切って変更する勇気を持ちたいですね。
今回、最初のディスカッションがあまりに盛り上がったので、これを切らないようにしました。
参加者がお互いに知りたい、話したいことがたくさん出てきているようだったので、今この場でもっと話してもらった方が、
・参加者の満足/得るものが増え、
・研修で「めざすもの」に近づける
という判断です。
そこで、各グループの進捗を聞いて回り、ディスカッション時間を延長。以降の予定を変更しました。
ディスカッションを1つ中止して、あとに用意していた全体発表の内容を大幅に縮小することに。
おかげで、参加者の熱量を最後まで高く維持したまま、研修を終えることができました。
あわてずスムーズに変更、対応するために、手元のタイムテーブルに
「所要時間/予定終了時刻」に加えて
「実際の終了時刻」と「予定との差」
を記入しておくといいですね。
基本的で小さなことですが、大切な準備のひとつです。
-「最後の締め」で気をつけたいこと
ひとつ気をつけたいのが、
研修で大事な「最後の締め」。
「今日の内容は、こういうこと」
というやつですね。
刻まれる印象が違います。
そこまで到達しなかったのに
無理やりこじつけてしまい、
参加者の共感や納得が得られない、
という事態は避けたいところ。
なので、
スライドや配布資料で文章化せず
キーワードのみにしておき、
当日出てきた話などを活かして
ホワイトボード等に書き出す、
というのもひとつの方法ですね。
「研修屋が敷いたレールに誘導された」
「運営側の思惑通りに事が進んだ」
という感じがせず、
今ここで
自分達で みんなで
見つけた 気づいた つくった
そんな「ライブ感」が出る気がします。
今ここで生まれるものを大切に
以上、研修で「グループディスカッション」を設計するとき大切にしたいことをあげてみました。
1.ハードルは低く、ベビーステップで
・めざすものに向けて、段階的に
・不慣れな人でも話しやすい工夫
・未知の体験は作業を分解
2.グループ分けで環境を整える
・メンバー構成に向けて得たい情報
・グループ内の役割は設定しない
3.変更する勇気と、そのための準備を
・「最後の締め」で気をつけたいこと
***
おわりに。
いざ研修をつくり始めると、
つい欲張ってあれこれ入れてしまう。
計画通りに進むと気持ちがいいし、
人をコントロールしたくなることもある。
研修の依頼者、責任者から
「あれもやって欲しい」
「これも気になる」と言われると、
意向を汲む必要がある。
(それが大きかったりする)
でも、そんな
研修をつくる側(やる人/依頼する人)の
都合や欲求、自己満足は程々にして、
研修で「めざすこと」を追求しつつも、
参加者にとって
何かのきっかけになるような
研修/ディスカッションにしたい。
そのために、
今ここで生まれるものを大切にしよう
と思います。
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