尾崎将也
脚本の書き方や勉強法についてこれまでアトランダムに書いて来たことに新しい要素も加え体系的に再構成しようというものです。有料コンテンツですが最初の章はお試しで無料とします。
(重複度3)※200円に値下げしました。 まずはお詫び 前回から時間がたってしまったことをお詫びします。 前回はセリフの初級編でした。「次回はセリフの上級編」と予告したのでそれを書こうとしていたのですが・・・これが実に難しいのです。自分がいつも仕事でセリフを書いているのに、いざ「いいセリフ、面白いセリフはどうやって書くのか?」「どうやって勉強するのか?」を考えると、「あれ?どうするんだっけ?」という感じで、よくわからないのです。 前回書いた初級編は、いつも生徒の作品を読
人生で始めて「熱狂」した映画 69年公開の東映動画作品(監督・矢吹公郎)。当時東映動画の社員だった宮崎駿氏が原画スタッフとして参加しています。「東映まんがまつり」と銘打って他のアニメと一緒に上映され、小学校三年生だった僕は母親に連れられて見に行きました。 僕は中学一年のときに「燃えよドラゴン」を見たのが映画オタクになったきっかけだったと色々なところに書いていますが、それ以前に始めて「熱狂」した映画がこの作品です。 当時は夏休みや春休みに毎日のようにテレビでアニメ映画を
第五回フジテレビ・ヤングシナリオ大賞を受賞した『屋根の上の花火』は、トレンディ・ドラマっぽいラブコメでした。前編にも書いたように、僕はトレンディ・ドラマに憧れて脚本家を目指したので、作品がそういうものになるのはある意味当然でした。 しかしこの作品が受賞するに足るものなのかどうかは全く自信がありませんでした。 コンクールに対するモヤモヤ感 僕はコンクールに対して「何が評価されるのかよくわからない」というモヤモヤした感じを抱いていました。 そのモヤモヤの原因はいくつ
6月18日に発売された「月刊ドラマ」7月号に、僕が92年に第五回フジテレビ・ヤングシナリオ大賞を受賞した『屋根の上の花火』が掲載されています。(坂元裕二氏、金子ありさ氏、古沢良太氏のコンクール受賞作も同時掲載) 今回は脚本家を目指した頃のことやコンクールのことなどを思い出しながら書いてみます。 映画監督志望の中学~大学時代 僕は中学の頃から映画オタクになり、映画監督になりたいと思うようになりました。高校のときには新井一さんの「シナリオの基礎技術」を読み、さらに「男はつ
監督した映画『世界は今日から君のもの』がGYAO!で無料配信中です。7月5日(日)まで。 出演・門脇麦 三浦貴大 比留川游 マキタスポーツ YOUほか。音楽・川井憲次。 下のリンクからどうぞ。
(重複度0) ※今回は無料です。 尾崎将也の<全部入り>脚本講座4「セリフについて」(前編)で、「セリフは話し言葉としての自然さが必要」と書きました。初心者の中にはそれが苦手な人がけっこういます。前回も書きましたが、文字で書くから書き言葉に近くなってしまうということだと思います。そこから抜け出すためには、自然な喋り言葉を書く練習が必要でしょう。そこでちゃんと人が喋っているように見えるセリフ、キャラクターが感じられるセリフを書けるようになるためのエクササイズを考えました。
先日、緊急事態宣言で中断していたテレビドラマの収録が再開されました。現場はかなり厳格な新型コロナウイルス(以下コロナと略します)対策のルールがあるようです。(下記はネットの記事に出ていた日本テレビのドラマ撮影ガイドラインです) 撮影の現場が大変なのはもちろんですが、僕がそれ以上に気になるのは、テレビドラマや映画の「内容」がどんな影響を受けるかということです。 三密のシーンは無理? 上記の記事には、制作関係者の話として「こういうシーンはダメと脚本家に制限を出すことはない
(重複度2) ※初めての方は「前書き」も合わせてお読みください。 前回の講座で取り上げた「ト書き」は脚本を書く上で大切な要素ではありますが、そんなに難しいものではありません。プロの脚本家が「ト書きが難しくて悩んでいる」と言うのを聞いたことがありません。もちろん初心者が最初の段階で戸惑うのは当然ですが、一度「ト書きはこういうもの」と理解してしまえば、その後はさほど悩むことはなくなるはずです。 それに対して「セリフ」は難しいものです。プロの脚本家もいいセリフを書くためにい
脚本家になるのは本当に難しいのか 先日noteで連載をスタートした脚本講座の中で、「脚本家になるのは難しい」と書きました。もちろんそれは嘘ではないのですが、一方で「そうだっけ?」と逆の思いも湧いてきました。 「脚本家なんて簡単になれるよ」と言ったら明らかに嘘なのですが、では僕が苦難にもめげず努力を続ける意思の強い人間だったから脚本家になれたのかというと、そんなことは全然ないからです。どちらかというと僕は適当でサボリ癖のある人間です。 ではなぜそんな人間が脚本家になれたのだ
(重複度2) 今回は最初の入り口となる原稿の書き方と、ト書きの書き方です。これらは単なるルールなので覚えればおしまいという感じですが、実はそのルールの中に脚本の本質が含まれていて、それをちゃんと理解するとよい脚本が書けることにつながります。そのへんをわかりやすく書きました。 まずは脚本の実例を下の写真は『まだ結婚できない男』第9話の脚本の一部です。 プロの台本はこのように1ページ17行、1行29文字のフォーマットになっています。この9話の場合は全部で63ページです。
(重複度4) 脚本教室と自動車教習所は何が違う? プロの脚本家になろうと意気込んで脚本の教室に来ても、実際に脚本家になれる人はごく一部です。なぜ脚本の勉強はそんなに成果が出にくいのでしょうか? 例えば自動車教習所に行けば、ほとんどの人が運転免許を取ることができるのに、この差は何でしょうか? その理由は大まかに言うと次の三つです。 ①脚本を書くことがそれだけ難しい ②何を、どうやって、どれくらい勉強すればいいかはっきりしない ③勉強の内容が多岐にわたり、習得に長期間かかる
(重複度4)※この章は無料です 脚本を学ぶには、まず「脚本」と「ドラマ」の言葉の定義をそれぞれはっきり理解していることが必要です。 脚本はドラマの設計図 脚本は、映画、テレビドラマ、演劇などを作るための「設計図」に相当するもので、「シーンの柱」「セリフ」「ト書き」の三つの要素が書かれています。ひとつの作品ごとに製本され、スタッフやキャストに配布されます。キャストはこれを読んでセリフを覚えたり演技プランを練ったりします。スタッフは撮影場所を決めたり、セットを建てたり、小道
脚本の書き方と勉強法を体系的に 僕は2012年から、ブログやTwitterに脚本の書き方や勉強法を書いてきました。2016年に出した書籍『3年でプロになれる脚本術』(河出書房新社)は、それまでにブログに書きためたことを整理し加筆したものです。 ブログやTwitterはその都度思いついたことを書いたもので、脚本の書き方や勉強法を体系的にまとめたものではありません。『3年で~』はそこを補うために加筆したのですが、全てを網羅したというところまでは行きませんでした。 いつか脚本の
黒澤明監督の昭和35年の作品です。黒澤明というと『七人の侍』『羅生門』『生きる』『用心棒』『天国と地獄』などが映画史上に残る名作として有名で、この『悪い奴ほどよく眠る』はそれらに比べると評価は高くありません。でも僕はこの作品が大好きで、他の名作と言われている作品と同様に繰り返し見ています。 映画表現の極致 僕が黒澤映画を見て強く感じるのは、映像表現へのこだわりです。映像表現というより「映画表現」と言う方が当たっているかもしれません。単なる説明とかあっさりした描写を、いかに
映画オタク人生を決定づけた一本 75年に日本で公開された映画です。この年は『タワーリング・インフェルノ』の他にスティーヴン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』と、黒澤明監督の『七人の侍』のリバイバルが重なった年です。僕は中三でした。中一の頃から映画オタクになっていましたが、これらの映画で僕の映画オタク度はさらに高まり、人生を決定づけた年とも言えます。僕にとって中三はこの三本の映画の年として記憶されており、実生活で何があったかは全く覚えていません。 オールスターキャストのパニック
「イギリスと言えば007」というくらい、僕は007シリーズが好きです。特にシリーズ前半のショーン・コネリーやロジャー・ムーアがボンドを演じたものが好きなオールドファンです。中学の頃は、007とブルース・リーとダーティハリーで頭の中の大部分が占められていました。 犬も歩けば007に当たる? 2月の上旬、監督した映画『世界は今日から君のもの』の上映のために渡英しました。そのことは前回書きました。滞在中、自由時間も結構あったのでロンドンのあちこちに行ったのですが、図らずも00