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わたしにとっての豊かさとは点滅している青信号を渡らない、だなんてそんな小さなことなのかもしれない。

今日のわたしは走らなかった。

いつもは絶対にしない3度寝をして
好きな場所に行き
好きなものを見て
好きなものを食べ
幸せだな、と真っ暗な帰り道を歩いたりなんかしている。


最近のわたしは、せかせかした毎日に慣れてきていて
1本でも早い電車に乗りたくて
移動時間はメールチェックの時間にしたかったし
朝はタスクリストを効率良く網羅することに時間をかけ
夜は何時に寝られるだろうかと寝おちてしまったり
手の上に乗っかっている情報端末機にずいぶん振り回されながら
日々の生活をしていた。



今日は平日の昼間なのに、渋谷のスクランブル交差点はすごい人で
何人もの人が写真撮影をしている。


スーツの男性の体がわたしの腕に勢いよく当たったので
横を見たら、デジャヴを感じた。


渋谷は別に来たことがある場所だから、そんなのを感じるのは
当たり前かもしれないけれど。
風景というよりも、感覚というか
そういうものを感じたような気がした。

数日前、間に合わないんじゃないかと
半泣きで、タクシーに乗り込んだわたし。
ワンメーター、410円のレシートはわたしのお財布の中に
きっとまだいる。


点滅する信号機、数日前に渡った横断歩道は
渡る前に点滅しだしていて
いけないとわかっていても
この距離ならいけるだろうと、赤になる前に
全速力で渡り切った。
走った。

走り切った後に携帯の数字を少し睨みつけて
どうしても乗りたい電車にわたしは無事に乗り込めた。
無事にミッションをクリアした、爽快な気持ちだった。


最初にも書いたが、今日のわたしは
走らなかった。

走る必要がなくて、
走って埋まるその数分を、大差ないと
思うわたしでいられた。


点滅する青信号が赤になる瞬間を、止まりながら眺めて
階段を降りながら目の前でドアが閉まる電車を、見送る。

わたしの後ろから、
走って電車のドアが閉まるギリギリに乗り込む男性がいた。

ああ、わたしもあんな風に見えていたのかなと
少しの反省と恥ずかしさ。


いけないことだなんて、分かっている。
でもそれよりもわたしの都合を押し通してしまうくらいの
余裕のなさが嫌だった。


今日のわたしは走らなかった。

また走らなくちゃいけない時だって
きっとあるし、絶対ある。

でも、もしその時は今なんかよりも笑っていて
余裕のなさなんかで走るかっこわるい自分じゃなくて
かけっこのような場面で1等賞を狙っているような自分でありますように
なんて思うのです。

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