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小説「光の物語」第75話 〜冬陽 2〜

「私、出席できません・・・」
クリスティーネの婚礼への招待を知らされたナターリエは、小さくかぶりを振ってそう言った。
「まあ、どうしてでございます?」
彼女の複雑な心中を察しつつ、アーベルはあえてざっくばらんに尋ねる。
「出席して気分を変えられては?うんと美しく装って・・・」
「だって、あんなことがあった家の娘ですもの。お祝いの席になんて・・・不吉ですわ」
ナターリエは泣きそうな声で言葉を絞り出した。


「不吉?」アーベルはあっけに取られたように聞き返した。「なにが不吉なのです?」
そう聞かれても、ナターリエにもうまく言葉にはできないのだが・・・。
「母は・・・母はあんな恐ろしいことを。父も・・・」涙をこらえてうつむいた。「呪われた家なのかもしれません・・・会う人を不幸にしてしまうかも」
アーベルは心底からの呆れ声で答えた。「まあ、馬鹿なことを思いつくもの・・・本を読み過ぎるのも考えものでございますね」
ばっさりと斬られてしゅんとしたような、けれどもどこかほっとしたような様子をナターリエは見せる。


アーベルはナターリエの隣に座って彼女の肩を抱き寄せた。
「そのようなご心配は無用でございますよ。ご友人の婚礼に行かれるか、行かれないか。それだけのことです」
ナターリエはまばたきして涙を見せまいとし、アーベルはそれをけなげに思った。
「まだ辛いようでしたらお断りなさいませ。ご友人もわかってくださいますよ」
その言葉にナターリエの心は揺れた。できるなら、このままここに引きこもっていたい。でも・・・。
「・・・でも、そろそろ外に出られてもいい頃かもしれませんよ。もう数ヶ月ですからね」ナターリエの迷いを見透かしたかのようにアーベルが付け加えた。


ナターリエは迷いと恐れと、それから友人の心に応えたい気持ちとの間で揺れ動いていた。


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