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わたしがサブカル女になったきっかけは椎名林檎でも星野源でもなく「嵐」だったことに気づいた2020年の夏

高校生くらいから自覚しはじめたことだが、わたしはいわゆるサブカルチャーがすきだ。
椎名林檎になりたいし、星野源がすきだし、ゲスの極み乙女。indigo la End、LUCKY TAPESあたりはインディーズ時代から追っかけていた。大人計画やTEAM NACSの舞台、宮藤官九郎のドラマもだいすきだ。
今や上述した彼らはすっかりメインカルチャーだし、サブもメインも関係ないくらいわたしは「カルチャー」がすきなのだけど。

わたしがいわゆるサブカルをすきになったきっかけ、それは嵐だったのではないかと、朝起きてふと思った。(謎である。)

言わずと知れた国民的スーパーアイドルの嵐。
サブカルとは似ても似つかない王道キラキラアイドルのイメージしかないかもしれないが、わたしが彼らをすきになったとき、彼らは「サブカル側」の人だった。

彼らのレギュラー番組が関東ローカルや深夜帯だった2002〜2005年頃。
エアギターでバンドを組んでライブハウスでライブをしたり、廃墟遊園地で水のないウォータースライダーを滑ったり、数年単位で賞味期限の切れたものを食べて騒いだりしていた。
番組にゲスト出演する芸能人はほとんどおらず、メンバー5人の低予算企画と一般人への取材だけで番組を持たせていたことも多かった。
予算がないあまり「うだうだスペシャル」と題してパジャマで楽屋からホームビデオを撮るような小さい手持ちカメラでメンバー同士を撮影したものを放送していたこともあった。

当時は楽曲もアイドルソングというよりはどことなくサブカル的というかアンダーグラウンド寄りで、ヒップホップやジャズ、ファンク、ソウルなどブラックミュージックをモチーフにした曲も多い。
(アルバムHERE WE GO!〜ARASHICあたり)
今改めて聴くと勢いがあって、尖っていて、めちゃくちゃかっこいい。アレンジもかなり凝っていておしゃれだ。
だけど、攻めすぎというか少々迷走している雰囲気はある。当時の「アイドル」「ジャニーズ」としては世間に受け入れられなかったんだろうな、ということが想像できる。
(この頃のコンサートは円盤化されていないものが多いのも残念だ…)

その頃、わたしの推し(自担)である櫻井翔さんは慶應義塾大学在学中で、クドカンのドラマ『木更津キャッツアイ』に出演し、コンサートではオザケンの『今夜はブギーバック』をソロでカバーし、FM-FUJI(山梨県をメインエリアとする関東圏のラジオ局)内の自身の番組では毎週コアなヒップホップをかけていた。

字面だけ見てもむせ返るようなサブカル臭がする。とてもジャニーズ事務所所属の20代のアイドルとは思えないし、今見ると本当に「売れていなかったんだな」という感じがする。
だけどわたしは、相葉くんお手製のすごろくをして罰ゲームで大騒ぎしたり、絵が下手な櫻井くんと絵が上手い大野くんが描いたカードを使って神経衰弱をしたり、そういうシュールで地味なちまちましたことをひたすらやって楽しそうにしている嵐がだいすきだった。「5人で輪になって内側を向いている嵐」がだいすきだった。

では、サブカル路線から今の王道アイドル路線に方向転換したことで嵐は国民的アイドルになったのか?
わたしはそうは思わない。

嵐はずっと5人で内側を向いてわちゃわちゃ楽しそうにしているけれど、絶対にトップになってやる、世界中に嵐を巻き起こしてやるというギラギラした野心を秘めていた(それが如実にあらわれているのが上記のアルバムARASHIC収録のCOOL&SOULである。ジャケから既にギラギラしている。後ろに世界地図背負ってるし)。
そんな嵐に、日本のメインカルチャーの方が寄ってきたのだと思う。
嵐は嵐のまま、王道になったのだ。

そして国民的アイドルになっても、あの頃のような5人で内側を向いているところはそのままで、YouTubeで紙芝居をやったり、TikTokにふざけあっている動画を載せたりしている。
「売れてからなんか調子に乗りだしたよね」「遠くに行っちゃった気がする」とかいうのはよくある話だが、嵐にはそれがない。

国立競技場で7万人の観客を前に輝いていたかと思えば、テレビでは背中を丸めてババ抜きをしている。海外の著名人とコラボしたかと思えば、インスタライブではちゃぶ台を囲んで全力でかるたをしている。
メインカルチャーとサブカルチャーの両方に位置するのが嵐だ。

売れないサブカル路線だった5人が、誰もが知っている国民的な5人になった。
トップアイドルとしてステージに立ち続けるのは良いことばかりではなくて、数え切れないほどの苦しみがあると思う。我々一般人は、どうしたってそれを理解してあげることはできない。彼らから楽しませてもらうことしか、しあわせを貰うことしか、できない。
だからせめて、おいしいものを食べて、毎晩なんの心配事もなく布団に入ってほしい。
それが今のわたしの願いだ。

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