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アクセラレータからの支援が"仮"決定する_サーチファンド活動日誌④

はじめに

2021年5月に脱サラして事業承継先のサーチ活動を始めました。この連載では「サーチファンドって何?」という方から、これからサーチ活動を始めようとお考えの方まで、私の実体験を通して参考になりそうな情報をお届けしたいと思います。

今回は下図のフローチャート「ステージ1-B:支援を依頼する」と「-C:支援を仮決定」の2つです。ここは伝統的なサーチファンドと、私が取り組んでいるアクセラレータ型のサーチファンドの大きな違いでもあります。

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本業を続けながらのスタートの方が無難

2020年10月にサーチ活動を開始する訳ですが、この時点では企業再生の本業を続けており、勤務先の就業規定は副業禁止でした。当時は月曜の朝早く自宅を出て(移動の多くはフライト)、金曜日夜に帰宅するというサイクルを3年近く続けていました。平日はホテル住まいです。

したがって、最初の内は週末などの空き時間を使って恐る恐るのスタートとなりました。副業禁止ですので手弁当(サーチ活動フィーなし)での活動です。振り返ってみると結果的にこのやり方が正解だったと思います。

少々ややこしいところですがお付き合いください。

本来ならここから正式にアクセラレータと契約して活動開始と考えていたのですが、すぐに走り始めるには懸念もありました。

1つ目はサーチャーである私の都合で、サーチ活動に専念するためには会社を辞めなくてはなりません。しかしもしアクセラレータから活動フィーが出なければ収入ゼロです。

退職後、食い繋ぐために個人事業主として仕事をしながら(勿論、売上の目途などありません)、オーナー社長にコンタクトを取り、事業計画を練って、M&Aを首尾よく成功させる、うまく行ったら個人事業所を閉めて買収先の経営に移る、、、などという荒業ができるとは到底思えませんでした。

したがって、まずは本業であるサラリーマンを続けながら空いた時間でサーチ活動を行うことにしました。いくらやりたいことでも勤務先の社内規定に違反するやり方はできませんし、推奨もしません。

リスクを負えない以上この方が安全です。この点は副業OKな企業にお勤めの方でしたら事情は異なるかも知れませんのでご自身の事情を鑑みて決めてください。

またサーチャー側の都合をもう1ついえば、いざサーチ活動を始めてみたら意外に自分には合わないなとか、期待していたものと違うなとなる可能性もあります。そう気づいたときに退職済みでは手遅れです

ビルの崖から

アクセラレータ側もサーチャーの力量を見極める必要あり

2つ目はアクセラレータ側の事情ですが、事前の面談だけではサーチャーの力量を正しく見極めるのは難しいという事情があるようです。

正式にサーチャー契約を結んだら、その後しばらくは活動フィーを貰いながら活動します。一旦始めたら何がなんでもM&A成約を達成しなくてはなりません。 

アクセラレータの仕組みが良くても、肝心かなめのサーチャーの動きや力量がイマイチだったら、せっかくの仕組みも効果を発揮しませんし、M&A成約など望むべくもありません。そうなれば活動フィーも時間もムダになります。

サーチファンドという以上主役はサーチャーですから、その能力こそが最重要リソースです。アクセラレータ側が「このサーチャーだったらイケそうだ」という手応えが欲しいのは当然なのです。また、サーチャーが安易な転職先になっても良くありません

サーチャーの力量を正しく計る最も良い方法は、一緒にサーチ活動をしてみることです。

そこで、㈱サーチファンド・ジャパン(以下、SFJ)と私とで話し合った結果、正式契約前にショートリスト作成から意向表明書提示までの1回実際にやってみることにしました。そうすれば、サーチ活動を実体験で学べるし、SFJ側も私の力量をみることが出来る。そうやってお互いをよく理解した上で正式契約をしましょうということです。

もちろんその後に、やっぱり契約は結べません(=私がSFJのお眼鏡にかなわなかった)となる可能性がこの時点では十分にありました。

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なぜ本業を続けながらの方が良いのか?

こうしてトライアル的にスタートしたのが結果的に正解だったと思います。本業を続けたまま活動できるのはありがたい話です。自分に合わないなと思ったら本業に戻れば良いわけですから。

しかし注意が必要な点もあります。事業承継は相手方がある話ですし、本気でもないのに買収交渉に入って「実は予行演習でした」などということは許されません。

本気でサーチ活動に取り組める人だけに買収候補先を提案し(この点に関してSFJはかなり慎重に検討するようです)、事業計画を立て、オーナーとの話し合いや関係構築も進める。そして本当にこの企業を承継したいと判断したら買収意向表明書(Letter of Intent)を作成する。

そして、ここで一旦ストップする。ショートリストの検討からLOI作成まで順調に進んで3ヵ月。本業をやりながら空いた時間で市場調査をし、事業計画を立てるというのは結構大変です。

だからこそSFJメンバーは根気よく相談にのってくれますし、共同作業でやってくれます。そしていざLOIを出すにあたり、サーチャー本人が本業を退職(脱サラ)してまで事業承継をする気が本当にあるのかどうか、改めて確認が入ります。

ここで「やります」と言い切った後は元には戻れません。後は交渉成立を目指すのみです。この後で「やっぱりやめます」「本業を続けたい」「家族が反対して」というのは、売り手のオーナー社長やSFJとの信頼関係を著しく棄損しますので、慎重に考える必要があります。

企業買収というものは必ず達成できるという確証はありません。本業をどこまで続けるかは、自分の意思や家庭事情、なにより自分の「リスク許容度」と相談しながらの判断になります。

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キックオフ

SFJから「キックオフを兼ねて勉強会をやりましょう」とお話をいただいたのが2020年10月下旬です。私含めて数人のサーチャー候補が集まりました。

SFJの実行メンバーである日本政策投資銀行、日本M&Aセンター、キャリアインキュベーションからも各々参加されました。インプットは以下の通りです。

■ サーチャーになるための心構え
■ 事業承継して社長になるための心構え
■ サーチ活動の進め方
■ 良い企業の見極め方
■ バリュエーションの考え方、事業計画の立て方
■ 意向表明書のひな型
■ 譲渡契約成約・投資実行までの段取りと時間軸

前職でファンドの投資先に役員として常駐したり、ビジネス・デューデリジェンスを請け負う仕事もしていたため、既知の情報もありましたが、改めて基本を学ぶ機会になりました。

後日、サーチャーには資料が共有され、じっくり読み返すことが出来るようになっています。このあたりの入り方は懇切丁寧で、しっかり伴走してくれるのだなという実感が改めて持てました。

次回の内容

こうして私はSFJと事実上の仮契約のような形でスタートすることにしました。この時点では正式な書類などはありません。お互いにリスクがほぼない状態ですが、だからと言ってズルズル活動したら時間のムダですし、そういう点でのリスクは当然あります。

次回は上図のステージ1-D:ショートリストから1社に絞るというところからお話したいと思います。

まとめ

■最初は本業を続けながらサーチ活動の初期的検討(候補者検討~LOI提出まで)から入るのが無難
■理由は、サーチャーにとっては本業を残すことでリスクを負わなくて済むこと、ファンドにとっては初期活動を通じてサーチャーの力量を見極められること
■正式な契約がないからといって、LOIは相手方がある話で迷惑はかけられないし(順調にいけば本業を辞めて飛び込むことが大前提)、サーチャーもファンドも数か月の活動を無駄にしないことが必要

サーチ活動日誌目次

①サーチファンドとは何か
②いまの日本にサーチファンドが必要な理由
③私がサーチャーに挑戦するまでの経緯
④アクセラレータからの支援が仮決定する
⑤自分にあった業界を探す?
⑥サーチファンドにとって良い企業とは?(その1)
⑦サーチファンドにとって良い企業とは?(その2)
⑧事業仮説を練る
⑨オーナー社長と面談・交渉する
⑩市場分析/データ分析
⑪意向表明書を提出する
⑫デューデリジェンスを行う
⑬買収価額を算定する
⑭最後の交渉~譲渡契約締結
⑮経営に参画する~Day1を迎えるまで~
※目次は今後変更の可能性があります
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