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混ぜるな危険:知覚動詞と使役動詞

教える側と学ぶ側

今回は、英語の文型や動詞語法を学ぶときに避けて通れない、知覚動詞と使役動詞のお話です。英語を教える側は英文法の全体像を把握していて、その根底を成す文型についても十分理解しています。このため、補語に原形不定詞をとる動詞のグループとして、知覚動詞と使役動詞をまとめて扱うことが多くなっています。これはもちろん、共通の性質に着目することを狙いとしているわけですから、意味のあることではあります。ところが、英語を学ぶ側の方に目を向けると、同じタイミングで教わっているはずの知覚動詞と使役動詞が同じようには定着していないこともよくあります。これには学習者の母語である日本語からの影響が考えられます。

日本語との比較

まず、次の日英語のペアを見てみましょう。

娘がコオロギを食べた
My daughter ate a cricket.

これは、日本語が「名詞+名詞+動詞」、英語が「名詞+動詞+名詞」が基本語順で、日本語では主語に主に格助詞「が」、目的語に「を」を付けて明示すること、英語では語順がより重要で動詞の左側の名詞が主語で、右側の名詞が目的語を表す、というしくみが最初に身についていれば理解できる対応関係です。
次に知覚動詞の例です。

娘がコオロギを食べるのを見た
I saw my daughter eat a cricket.

日本語の文にも英語の文にも動詞が2つ現れています。「食べる」という日本語の動詞連体形から英語の動詞原形を導くのもそれほど難しくないと思われます。これがI saw her eat a cricket.ですと、「彼女が」に対応するのがherなので難度が上がります。ここで「意味上の主語」という概念が重要となります。「意味上」ということは「見た目」はそうではないということです。
最後に使役動詞の例です。

娘にコオロギを食べさせた
I made my daughter eat a cricket.

日本語の文には動詞が1つしかありませんが、英語の文には2つあります。日本語の「食べさせた」を国語の教科書の文法で品詞分解すると「食べ-させ-た」となります。このうちの「食べ」の部分が英語のeatに対応しています。そして日本語では助動詞(の組み合わせ)である「させた」の部分を英語ではmadeがになっているわけです。知覚動詞で「見た=saw」だったのと比べると使役動詞の「させた=made」のほうが難度が高いと言えます。


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