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テクノロジーと外国語学習

以前「高校にスマホを持っていくことの是非」みたいな課題のライティング答案の添削をしたのを思い出したので、今回は「テクノロジーと外国語学習」というテーマでお話ししようと思います。

この数十年でテクノロジーが外国語学習に与えた影響としてもっとも大きいものは音声言語学習を容易にしたことです。アナログレコードやオープンリールテープの音声教材しかなかった時代、ラジオ放送はあっても録音機材が普及していなかった時代からすれば、まさに隔世の感というべきでしょう。

持田が英語学習を始めた昭和60年代は、音声教材がカセットテープで供給されていました。英検問題集も「別売カセットテープ」を買わなければリスニングの問題演習ができませんでした。教科書の音源も学校にはカセットテープがありましたが、市販はされていませんでした。このため、きちんと発音できる先生がいる塾で英語を教わろう、そこで身につけた発音で音読しよう、と考えました。

その後、CD付属教材や、版元サイトで音源をダウンロードできるようになったりと、利便性が格段に向上しました。ただちょっと気になることがあって、圧縮音源による音声言語学習は効果の面で遜色ないものなのかな、と思うこともあります。CDをWAVでリッピングして勉強したらリスニング力が上がったとか、そういう事例はあるのかどうか。

テクノロジーの影響としてもう一つ挙げるとするならば、辞書データの電子化でしょう。初期の電子辞書は普通の紙の辞書とは別の簡易な内容のもので、いわゆる「意味調べ」しかできないような機種がありました。フルコンテンツ収録という機種もありましたが、辞書を一冊収録するのがやっとで、画面も小さく、電池寿命も短く、しかも値段が高いものでした。

今では辞書専用機に加えて、スマホやタブレット用のアプリで利用できる辞書も増えてきました。しかも、電子版は紙のものに用例が追加されているものもあります。製本という物理的な制約のない電子媒体ならではの対応と言えます。ただ、残念なのは電子辞書が高機能化しているにもかかわらず、「意味調べ」にしか使っていない学習者が多いことです。紙の辞書の活用のメリットが「読み込む」というintensiveなところにあるとするならば、電子辞書の活用のメリットは複数の辞書の引き比べをしたり大量の例文を観察するといったextensiveなところにあるといえます。このメリットを生かせないのはもったいないです。

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