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ことばを学ぶときの「基礎の基礎」

ことばを学ぶときの「基礎の基礎」とは、文のしくみを知り、文を読んだり書いたりできることです。

ことばには、より原初的な「私的言語」と、あらたまった場面で使う「公共的言語」があります。「私的言語」とは日常会話に代表されるもので、母語であれば無意識に身につくものです。言語は音声言語が書記言語に先立って存在すると言われますが、その先だって存在する音声言語がこの「私的言語」です。一方、「公共的言語」では音声言語と書記言語が対等で、日本語のように漢字などの表語文字を用いる言語ではむしろ書記言語が優位になります。(このことは日本人がことばを学ぶときに音声を軽んじる要因にもなります。)スピーチなどは音声言語といっても書記言語による原稿がある場合もあります。いずれにせよ、大人が社会生活に必要なことばが「公共的言語」であり、「公共的言語」は書記言語が重要であるということは動かしがたい事実です。そして、この公共的書記言語における重要な単位が「文」なのです。

文のしくみは、文を文として成り立たせるための規則に還元できます。これを無視すると文の意味が伝わらなくなるという重要な規則です。ところが、私たちは母語であっても、日常生活で私的にことばを使っているだけでは文を意識することはありません。文字に書いて、第三者に読んでもらおうとするときに初めて文を意識するのです。このため、文のしくみを学ぶ第一歩は、母語の文の仕組みを知ることです。外国語を学ぶ場合は、この後で目標外国語の文のしくみを母語の文のしくみと比較対照しながら学んでいくのです。日本語母語話者が英語を学ぶときには、日英語の文もしくみを比較対照を通して学んでいくのです。このときに陥りがちなのが、観察対象の日英語の文のどちらかが、直訳調の不自然なものになってしまうことです。日本語も英語も普通に使う自然な文を比べてみることで、文のしくみをより深く、より正確に学ぶことができます。

文を読み、文を書くということは、ただ文のしくみがわかればできるというものではありません。読むときには読み手が表現を変えることはできませんから、複雑でわかりにくい文があってもそれが読めるようでなければなりません。また、書くときには書き手が自由に表現を変えられますから、実用的な文であれば簡潔で明解な文を書けるようにならなければなりません。文法訳読式の学習では前者は重視されていましたが、後者はコミュニケーション指向の現在においてもあまり重視されていません。わかりやすい文の出発点は、母語であれ外国語であれ、それぞれの言語の自然な文です。自然な文のしくみを踏まえて、どうすれば自分の言いたいことが明確に伝わる文になるのかを学んでいくのです。

ここまでが、ことばを学ぶときの「基礎の基礎」です。英作文の出題が増えている大学入試の対策においても、このことは当てはまります。単語集と文法問題集から始める受験英語では、こうした「基礎の基礎」はなかなか身につきません。この2点に長文問題集を加えても状況は改善しません。適切な学習については何度も触れていますのでご参照ください。


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