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題名読書感想文:20 誤解は消費者金融からプレハブ住宅まで

 題名だけ読んで後はどうにかする、コスパしか考えていない読書感想文。それが題名読書感想文でございまして、現在、細々とやらせていただいております。

 今回のテーマは「違う風に読める」です。書籍は商品として出すために、単純な誤字脱字から内容が適切かどうかまで、様々なチェックがされています。しかし、人のやることですから、誤字脱字をゼロにするのは難しい。誤解をなくすことに至っては更に難易度が高いでしょう。

 一方で「どうせ防げないなら楽しもう」という考え方が存在しています。誤字脱字を味がある表現として鑑賞するスタイルですね。

 今回は「誤解」をそんな感じで鑑賞してみました。例えば、「なるほどファイナンス」です。

 「ファイナンス」とはもともと「企業の資金調達」を指すようです。

 「なるほどファイナンス」は、そんなファイナンスの解説本として出版されたものと考えられます。恐らくは入門書でしょう。「入門」を使わずに「入門書ですよ」と示す仕組みになっている題名は多く、解説する対象に「なるほど」とつける方法もまた、暗に入門書であることを表す形にしたのだと考えられます。

 しかし、ファイナンスの頭に何かをくっつけると、消費者金融の名前っぽくなってしまいます。「ニコニコファイナンス」みたいなもんですね。吉本興業の芸人が事務所からお金を借りる時には「よしもとファイナンス」を利用するとしばしば言われていますが、これもまた「〇〇ファイナンス」の形式に則っています。

 「企業の資金調達」としてのファイナンスは銀行からの借り入れも含まれているため、この辺りから意味が転じて消費者金融の名前に用いられるようになったと考えられます。それにより、「なるほどファイナンス」という消費者金融があるかのように誤認してしまう余地が生まれてしまった。更に、「なるほど」のように短い上に意味が簡単な言葉だと、より一層、街の消費者金融っぽさが出てくるのだと思います。

 続いては「バイオプロダクション」です。

 「バイオプロダクション」を検索したら、こんなページが出てきました。

「バイオプロダクション」とは、食料と競合しない生物資源バイオマスからバイオテクノロジーを使って多様な化学品を生産することをいう。化石資源の枯渇に備えて、また温室効果ガス放出削減という国際的な緊急課題の解決に向けて、バイオマスを基盤とする化学生産の確立は、今や世界共通の課題である。

 ザックリ説明すると「食べ物以外の生き物由来のものを使って役に立つものを作ろうよ、地球にも優しいから」みたいな試みでございまして、その手段としてバイオテクノロジーを使うようです。

 しかし、「プロダクション」のお陰で「芸能事務所」感がすごいんです。見れば見るほど本当にそういう事務所がありそうな気がしてきます。同名の芸能事務所は存在していないようですが、「〇〇プロダクション」の名前はかなり存在します。そのため、バイオプロダクションに芸能事務所らしさが出てしまっているのだと考えられます。

 続いては「スーパー大陸」です。

 アマゾンの書籍説明によりますと、スーパー大陸は「地球上の大陸の中で決定的に世界を支配する大陸」であり、ユーラシア大陸がそうなる可能性を記しているようです。著者のカルダーさんは政治学者で、特に東アジアの政治や国際関係を専門にしている政治ガチ勢です。

 原書の題名は「SUPER CONTINENT」でございまして、それを直訳した題名のようです。

 しかし、スーパー大陸なんです。もちろん、ポイントは「スーパー」でしょう。この「スーパー」、日本語としても非常にメジャーな言葉となってしまっているため、様々なイメージがすっかり染みついています。

 私がこの題名を見た時、子供っぽさを感じました。子供が適当に考えた、ものすごい設定の大陸なんだろうと。それは恐らく「スーパー」が、子供向けの漫画やアニメで出てくる、なんかすごいものにつけられる単語というイメージが強いからだと思います。スーパーサイヤ人みたいなものですね。

 他にも、スーパーマーケットの名前にも見えました。最近は少なくなりましたが、「スーパー〇〇」みたいな名前のお店みたいにも読めるんです。スーパー玉出みたいなものですね。

 どちらの「スーパー」の用法も現在は落ち着いておりますので、そのうち「スーパー大陸」の題名から受ける印象も変わってくるのかもしれません。

 続いては「エキゾチック臨床」です。

 「エキゾチック」は異国の雰囲気がある様子を指す言葉でございまして、郷ひろみさんの歌にも「2億4千万の瞳-エキゾチック・ジャパン-」という、これまたものすごい題名のものが存在します。軽く検索したところ、「エキゾチック・ジャパン」という歌詞には「日本はとてもミステリアスで刺激的な国だ」という意味が込められているようです。

 一方、「エキゾチック臨床」のエキゾチックは「エキゾチックアニマル」を指しています。エキゾチックアニマルとは犬や猫、それから牛や豚や鶏などの産業動物以外を指す言葉で、例えばウサギやハムスター、カメなどがあげられます。

 なぜエキゾチックなんて呼び方をするのかと言いますと、要は「犬や猫みたいに長いこと人と暮らしてきた生き物に比べると珍しいよね」という意味で用いられているようです。主に獣医師やその周辺で使われる言葉だと思われます。

 しかし、題名にする際、「アニマル」を取ってしまったためか、別のエキゾチック感が出てしまっているんです。郷ひろみさんをご存じの方はまず彼の楽曲が出てくるでしょう。「一体どんな臨床なんだろう」とドキドキさせる、独特なタイトルとも言えます。

 最後は「英語プレハブ表現317」です。

 英語の勉強本には、既存のもの、例えば小説とか漫画とか、特定のジャンルのものを突破口にするものがございます。

 自分の興味があるものなら英単語も頭に入りやすいだろう、ということなのだと思いますし、割と有効な勉強法とあってか、その手の本は数多くございます。だから、プレハブ住宅を突破口に英語を学ぶ本だと思ったんです。「英語勉強本もいよいよここまで来たか」と思うと同時に、「こんなニッチなところを攻めて売れるのか」とも思ったんです。でも、やっぱり違いました。

 プレハブとはもともとプレファブリケーション(pre-fabrication)の略で、現場で組み立てる前にあらかじめパーツを製作しておくことを意味しています。

 アマゾンの書籍説明を確認すると、「プレハブ表現」とは数語程度の文をひと塊として覚える方法のようです。文をひと塊にして覚えるやり方が、事前にパーツを製作しておくプレハブと似通っているため、題名に「プレハブ」という言葉を用いたようです。ただ、現状では「プレハブ」と言えば圧倒的に建物のイメージがあるため、「プレハブ住宅に関する英単語ばかり載っているのかな」と誤解する余地が発生しているものと考えられます。

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