賞レース予選のMCは合格率に影響を与えるのか調べてみました
ぼんやり動画を見ていたら、ちょっと気になる会話があったんです。賞レース1回戦について扱っている以下の動画の11分8秒頃から抜粋してみます。敬称略となっていますので、ご了承ください。
言ってる本人も「そういう気がする」レベルのようですが、果たしてMCの腕が合格率に繋がっているのでしょうか。早速調べてみました。
今回、調査したのはM-1グランプリ2023の1回戦を担当したMCです。各MCが担当した予選会の1回戦通過率をそれぞれ計算で出してみました。MCを複数回している場合は、当然ながらそれらを合計した上で通過率を算出しています。
ちなみに、M-1グランプリ2023の1回戦は8307組が参加し、1368組が通過しています。通過率は16.47%でした。M-1の公式エントリー数より少ないのはシード組の存在がある他、エントリーだけして参加していない組がいる可能性が考えられます。もちろん、私が数え間違えている可能性もありますが、軽い気持ちでお楽しみくだされば幸いです。
以下の一覧はMCの名前、どの地方を担当したか、MCをした回数、それからもちろん、参加組数と通過組数、そして通過率を載せております。それでは、早速、通過率の高い順にご紹介いたします。
ザ・パンチ辺りが平均値となります。16.47%ですね。全体的には西日本の方が通過率は高めで、東日本は低めな傾向です。
客観的な数値になる要素が通過率に影響を与えているか、一応は探ってみました。具体的には客席数とアマチュア・フリー率です。
客席数は会場の広さを間接的に表している数であるため、採用してみました。会場の広さや観客の数が審査に影響しているかどうかを調べるためです。しかし、こちらは今のところ「影響なし」という結果がでました。
アマチュア・フリー率は、MCが担当した予選にどれだけアマチュアやフリーがいるかを割合で示したものです。これまで、M-1の予選通過具合を確認したところ、アマチュアとフリーは事務所所属のプロに比べ、1回戦の予選通過率が極端に低いという結果が出ています。
アマチュアやフリーが多い日だった場合は、当然ながら通過率が下がるだろうと予想して調べてみたんです。分析方法は回帰分析というやつです。回帰分析の説明はネットや本などその辺にいくらでもありますし、ここで説明を始めると私が訳分からなくなりますので、結果だけお伝えします。以下のグラフが結果でございます。
真っ直ぐな点線は「全部の点から考えて、だいたいこれくらいの傾向があるかなあ」みたいな線です。つまり、アマチュア・フリー率が低いと通過率が高いっぽいという傾向が一応は見られるようです。
他に注目点としては、グラフに書かれているRの2乗、すなわち0.1974です。このRの2乗は1と0の間になる数値で、1に近いほどアマチュア・フリー率の影響がちゃんと出てることになります。しかし、0.2に満たないとなると、影響はかなり弱いと言わざるを得ません。点の散らばり方を見ても何となくお分かりいただけるかと存じます。
こんな感じで、今回は、客観的な数値の影響があんまり見られませんでした。ただし、気になるのは通過率トップの沖縄、MCは空馬良樹さんです。もう群を抜いて多く、他のMCは通過率が大体10~25%に収まっているのに、空馬良樹さんMCだけは通過率が5割を超えています。このような、他のデータと比べて異様に外れている数値は文字通り「外れ値」と呼ばれがちです。しかし、本当に外れ値なんでしょうか?
簡単にできる外れ値判定方法をふたつやってみました。まずは標準偏差から判断する方法です。標準偏差はデータが平均値からどれくらい散らばっているのかを示すものです。詳しい説明は以下略として、M-1グランプリ2023における1回戦の通過率から標準偏差を求めたところ8.61でした。
標準偏差は平均値の±1倍に全体の約2/3、±2倍に全体の約95%、±3倍に全体の約99.7%が含まれます。そして、±3倍に入らない数値は「さすがに外れてるだろ、99.7%だし」ということで、外れ値と見なすのが、標準偏差から判断する方法とのことです。
今回の通過率で考えますと、±1倍は7.86~25.08。この範囲だけでトップ3以外は収まります。±2倍は-0.75~33.69。これでトップ以外は収まりました。そして、±3倍は-9.37 ~42.30。これでもトップは収まらない。つまり、同じ審査をしていればこんな数字はなかなか出ないはずであり、外れ値と見なされます。
もうひとつの判定方法は「箱ひげ図」というものを用いる方法です。詳しい説明以下略として、とりあえず計算結果だけ出してみます。ただし、数値は小数点第2位までとなっています。
要は、上内限界点と下内限界点に入らないと外れ値のようです。つまり、7.74~23.89。これだとトップ3が外れ値と判断されます。いずれにしろ、トップが際立った結果なのは確かです。
ただし、これだけでMCの影響を考えることはできません。あくまで分かったのはMCごとの通過率だけであり、その理由としてアマチュア・フリー率がちょっとだけ関係している、そしてなぜか空馬良樹さんだけやたら高い数値を示したという事実だけです。今回の通過率一覧は「たまたまそうなった」可能性が否定できないわけです。
空馬良樹さんMCの通過率だけ高い理由として考えられるのは、参加組数の少なさです。空馬良樹さんがMCしたのは1回だけで、参加組数も39組と最小です。他のMCは数百組やっている例が珍しくない状況を考えるとかなり少ない。
扱う数が少ないと、極端な結果が出やすいことは統計ではよく知られています。例えば、1組しか扱わなかった場合、その1組が通過すれば通過率100%になるし、通過しなければ0%になる。ひとつの事例が結果に大きく影響するわけですね。
2位のモリマンも2桁組数と少ないため、同様に極端な結果が出た可能性はあります。もちろん、扱った組数が少なくても極端にならない場合もあり、今回の通過率でも組数の割に普通の結果が出ている場合があります。
それにしたって、沖縄の異様な高さは気になります。そのため、もう少しだけ調べてみました。具体的には過去のM-1、特に2015年以降の1回戦 沖縄会場です。
沖縄は毎年1回、M-1グランプリ1回戦の予選をおこなっています。その時のMCと1回戦通過率を公式サイトのデータから調べました。それが以下の通りです。
コロナで普段通りの開催ができなかった2020年を除けば、1回戦通過率は3割後半から5割近くと、かなり高い確率を維持しています。それはMCが変わっても同様のため、MC以外の理由が充分に考えられます。
というわけで、結論を申し上げればMCで突破率が上がるなんてことがあるのか、今回の調査ではよく分かりませんでした。でも、これだけグダグダやったのに載せないのはもったいないという、タチの悪いもったいないお化けに憑りつかれ、こうやって載せてみた次第です。もっといい分析方法を知っている方、教えてくださると大変助かります。
最後に、今回の結果ですと、冒頭の動画で東野さんがおっしゃったとおり、M-1出場者は通過しやすいMCがどうとか考えるより、どの会場だろうが突破できるネタを用意するほうが確実だと思います。恐らく、MCが審査に与える影響はその程度のものです。もちろん、観客としては盛り上げてくれるMCのほうが間違いなくいいと考えられます。ただし、沖縄の結果だけは本当によく分かりません。何か理由がお分かりの方、こちらも教えてくださると私は大変喜びます。
今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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