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オリジナルドイリー(1)Great Pineapple Wave

 上の写真は、2022年の6月に Raverly で発表したオリジナルデザインのドイリーです。
 こんなふうにパイナップルが追いかけっこしているような模様を、英語圏では「パイナップルリース」と呼ぶようです。パイナップルのエジング(縁飾り)を細長く編んで輪にしておいてから、中心円を丸く編み広げて、エジングと合体させます。さらにいちばん外側に細い縁飾りを2段編みました。
 「追いかけパイナップル」は珍しいと思われるかもしれませんが、実は昔からある伝統模様なんですよ。昔の本にはこういうエジングがちょいちょい載っています。丸いドイリーにデザインされたものは、そんなに多くないけれど、時々は見かけます。
 誰が最初に考えたか知りませんが、面白い編み方ですよね。クロッシェの奥深さ、神秘性みたいなものが感じられて大好きなんです。最初に考えた人は「うわっ! こんなのできた! 見て見て!」と大興奮したかも。
 上の写真のドイリーは、古い本で見つけたいくつかの作品から気に入ったところをお借りし、オリジナルな要素も加えて自分の作品としました。
 お借りした過去作品の一つは、レース編みの世界では有名な鈴木陽子氏のデザインで、20年以上前に買った本に載っていました。それを自分で編んだのが下の写真です。

デザイン:鈴木陽子   製作:owarimao
『鈴木陽子 パイナップル編み』ブティック社 1998 より

 このドイリーでいちばん気に入っているのは外回りの部分です。これがあるとないとではまったく印象が異なると思います。
 自分の作品をデザインするにあたり、この部分を取り入れさせていただきました。ただしまったくの真似にならないよう、自分なりに進化させたつもりなので、興味ある方は細部を見比べてみてください。オリジナリティを高めるため、ほかにも工夫をしています。
 ところで過去の「追いかけパイナップル」ドイリーは、鈴木先生のもそうですが、パイナップルが1個ずつ輪郭線で区切られたのが多いです。でも中には、輪郭線がパイナップルの根元で閉じていないのがあります。これが独特の流動感を生んでいて魅力的。そう思って自分の作品に取り入れ、Great Pineapple Wave(大きなパイナップルの波)と名付けました。昔の人のデザイン力に脱帽しつつ。
 そんなふうに力強さのあるエジングなので、それを中心部分とどう調和させるかが大問題でした。透かしの模様をあれこれ考えたのですが、どれもぱっとしない。ついにあきらめて、透かしのない地に直線的な模様だけ入れました(もう少し工夫の余地が……)。中心円とエジングのつなぎ方もまた大問題で、さんざん苦労しながら何とか形にしました。
 「オリジナルをつくる」ってなんて大変なんでしょう。現代人にできるのは、伝統に頼りながら細部を変化させることだけかもしれません。それだってけっこう大変なんですけど。

 



 


 
 

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