島バナナ

人生の半分ちょいを温帯で暮らす亜熱帯育ち。

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記事一覧

2022年6月 貴船

 せせらぎも耳に冷たい春先の貴船川で、短い金属の杭が川底の岩に撃ち込まれているのを見たことがある。温かくなったらこの杭を基礎に川床が設置されるのだろうか。それを…

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2022年6月 たまには海を摂取

 オープン準備中の観光案内所でパンフレットをもらい、和歌山駅近のカフェでバスの路線図と観光マップを突き合わせ、5箇所の神社仏閣を巡る計画を立てた。  2022年初め…

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5か月前
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2024年1月 鳥居とアーケード

 近鉄の桃山御陵前駅付近で、大きな鳥居とアーケードがちらっと見えることがある。鳥居をくぐった向こうに商店街があるという記憶だったが、電車を降りて歩いてみると、線…

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5か月前
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なんということもない風景 83

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5か月前
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2022年5月 呼ばれていると思いたい

 4月から新しいビルの清掃担当になった。私も含め経験が浅いメンバーばかりで、毎日が文化祭3日前のような状態だった。お出かけは、5月になっても近鉄奈良駅周辺のお寺と…

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5か月前
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2022年4月② うっかり春日山原始林へ

 あの日は、奈良公園周辺の知らない道をドライブするだけのつもりで家を出た。春日大社を過ぎ、坂道を登っていったところで、これまで何処にあるのかわからなかったキッシ…

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5か月前
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2022年4月① 桜浴と効くピンク

 桜を見たい、と何度も欲した春だった。家から歩いていける川縁や、近隣の桜並木を探して通った。30年前にソメイヨシノを初めて見た時からずっと、狂ったように咲いて落ち…

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6か月前
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なんということもない風景 82

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7か月前
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なんということもない風景 81

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7か月前
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なんということもない風景 80

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8か月前
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なんということもない風景 79

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8か月前
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なんということもない風景 78

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なんということもない風景 77

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8か月前
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なんということもない風景 76

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8か月前

なんということもない風景 75

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9か月前
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なんということもない風景 74

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9か月前
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2022年6月 貴船

 せせらぎも耳に冷たい春先の貴船川で、短い金属の杭が川底の岩に撃ち込まれているのを見たことがある。温かくなったらこの杭を基礎に川床が設置されるのだろうか。それを確かめる機会は無いだろうと思っていたが、良い季節に再訪が叶った。  貴船神社は石段の両脇に赤い灯籠が並ぶ風景でよく知られている。上った先にある本宮の敷地は意外にこじんまりとしている。縁結びのご利益があるらしく参拝客のほとんどが女性だった。  参道のゆるい坂の左手に料理屋の建物、右手に簾と竹で作った垣根があった。貴船川を

2022年6月 たまには海を摂取

 オープン準備中の観光案内所でパンフレットをもらい、和歌山駅近のカフェでバスの路線図と観光マップを突き合わせ、5箇所の神社仏閣を巡る計画を立てた。  2022年初めての遠出だった。歩きまわると汗ばんでくるような日で、バス停を探せるか間に合うか、本当にこの道で合っているのかと少し気を揉んだり、到着した先にまたも高い石段が待っていたりした。しかし、どこからも海が見えた。この日は淡く静かな様子だった。和歌浦天満宮の牡蠣殻を思わせるような石段を登ると海からの風が吹いていた。木のベンチ

2024年1月 鳥居とアーケード

 近鉄の桃山御陵前駅付近で、大きな鳥居とアーケードがちらっと見えることがある。鳥居をくぐった向こうに商店街があるという記憶だったが、電車を降りて歩いてみると、線路を挟んで東に御香宮神社の鳥居、西に大手筋商店街のアーケードがあった。左右の車窓の風景を頭の中で重ねてしまっていたらしい。しかし、アーケードの手前には鳥居ではなく京阪電車の踏切があり、渡らなければ商店街には入れないのだった。すぐそこが京阪伏見桃山駅のホームの端っこで、電車を待つ知り合いを見かけたら呼びかけて会話を始めら

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なんということもない風景 83

2022年5月 呼ばれていると思いたい

 4月から新しいビルの清掃担当になった。私も含め経験が浅いメンバーばかりで、毎日が文化祭3日前のような状態だった。お出かけは、5月になっても近鉄奈良駅周辺のお寺と博物館にとどまった。  清掃中の図書館や校舎内の本棚で、同じ背表紙に目が止まるということがあった。どれも布張りに箔押しの古い時代に書かれた本だった。1冊目のタイトルを「りょうじんひしょう」と読むことは口が覚えていたが、内容は見当がつかなかった。帰宅後調べてみたら、その頃見ていたアニメ「平家物語」に登場する後白河法皇が

2022年4月② うっかり春日山原始林へ

 あの日は、奈良公園周辺の知らない道をドライブするだけのつもりで家を出た。春日大社を過ぎ、坂道を登っていったところで、これまで何処にあるのかわからなかったキッシュ屋さんと若草山登山口、春日山遊歩道の入り口を発見した。  タルトを食べてキッシュを1切れテイクアウトして、すぐそこの遊歩道入り口でどうしようか迷った。腹ごしらえも水筒もスニーカーも揃っているとはいえ、そんなつもりで来たわけじゃない。と、70代と思しき女性が軽装で遊歩道に入っていった。それなら私でも大丈夫かもしれないと

2022年4月① 桜浴と効くピンク

 桜を見たい、と何度も欲した春だった。家から歩いていける川縁や、近隣の桜並木を探して通った。30年前にソメイヨシノを初めて見た時からずっと、狂ったように咲いて落ち着かない気持ちにさせる花だと思っていた。なのに、あの年は満開の桜を見ると安らいだ。それは、ひと月前に母が死んだことと無関係ではなかっただろう。低く張り出した大きな枝の下を歩くと、背中がふわっと緩んだ。桜浴という言葉があってもよさそうなのに無かった。  あの頃は、何かピンクの物を目にしていたい、持っていたいという強い欲

なんということもない風景 82

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