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2022年5月 呼ばれていると思いたい

 4月から新しいビルの清掃担当になった。私も含め経験が浅いメンバーばかりで、毎日が文化祭3日前のような状態だった。お出かけは、5月になっても近鉄奈良駅周辺のお寺と博物館にとどまった。
 清掃中の図書館や校舎内の本棚で、同じ背表紙に目が止まるということがあった。どれも布張りに箔押しの古い時代に書かれた本だった。1冊目のタイトルを「りょうじんひしょう」と読むことは口が覚えていたが、内容は見当がつかなかった。帰宅後調べてみたら、その頃見ていたアニメ「平家物語」に登場する後白河法皇が夢中になっていた歌謡を編纂した本「梁塵秘抄」だった。その後、目が合った「明月記」や「玉葉」も調べてみると最近見知ったことと関連があった。こういう小さな偶然が続くと、ノーマークの分野から招かれているような気分になる。
 2020年の夏、ドラマ「大仏開眼」の再放送で石原さとみ演じる称徳天皇を見た翌週、夫に頼まれて初めて御朱印もらいに西大寺へ行った。法要や行事が無い日を選んだはずなのに、四王堂では法要が行われていた。お坊さん達が何かを唱えながら経本のじゃばらを広げ、経文に風を通すのを繰り返していた。お寺の人と思しき女性に訊ねると、今日は称徳天皇(石原さとみ)が、藤原仲麻呂(高橋克典)の乱を平定する前に、勝利を祈願して西大寺の建立を発願した日なのだと教えてくれた。その巡り合わせに心が震えたことがきっかけで、長らく興味のなかった神社仏閣巡りが現在も続いている。


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