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2022年4月① 桜浴と効くピンク

桜を見たいと、何度も欲した春だった。家から歩いていける川縁や、近隣の桜並木に通った。30年前にソメイヨシノを初めて見た時からずっと、狂おしく咲いて気を落ちつかなくさせる花だと思っていた。なのに、あの年は満開の桜を見ると安らいだ。それは、ひと月前に母が死んだことと無関係ではなかっただろう。低く張り出した大きな枝の下を歩くと、背中がふわっと緩んだ。桜浴という言葉があってもよさそうなのに無かった。
あの頃は、何かピンクの物を目にしていたい、持っていたいという強い欲求もあって、ピンクのスマホカバーや靴下、ハンカチなどを買った。ピンクと呼ばれる数多くの色の中でも、これ!と手が伸びるのが3種類?3系統?ほどあることがわかった。これらをまとめて「効くピンク」と呼ぶことにした。



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