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バンドリとD4DJとブシロード③~バンドリを殺したブシロードの戦略~

この記事だけでも読めますが、続き物になってます。
①バンドリはオワコンでD4DJは失敗なのか?
②バンドリとD4DJの何が悪いのか

前2つのnoteでは、ブシロードのIP、バンドリ・D4DJについて述べてきた。2つのIP展開に共通点があったことはもうお気づきだろう。

声優ライブ・アニメでのバフをかけ、広告を出しまくり、アプリゲームで稼ぐ。周辺展開として、CD・グッズその他は勿論のことだ。

これは、ブシロード社が"IPデベロッパー戦略"という、コンテンツ展開共通の経営戦略をとっていることによる。

その為、『スタァライト』『アルゴナビス』『アサルトリリィ』といった他の独自IPについても、同様の展開だ。
ただ、結論からいうと、どれも上手くいっていない

バンドリやD4DJと違い、概要だけでもヤバさが分かるので表は割愛するが、
スタァライト→だいたい300位くらいで推移。
アルゴナビス→だいたい300位くらいで推移。
アサルトリリィ→リリース月56位から88位へ急降下(スタァライトと同じパターン)

といった感じだ。

どのコンテンツも、声優による舞台・ライブやアニメ展開など盛んにマルチメディアミックスされている。しかし、ほとんどバンドリ、D4DJと同じ理由でゲームが上手くいっておらず、勿体ないコンテンツ展開だ。

と、いうことは。考えられるのは、"IPデベロッパー"という経営戦略が多大な逸失利益を孕む考え方、即ち間違っているのではないか、ということだ。

このnoteでは、ブシロード社のIP戦略の考え方について掘り下げていく。

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〇IPデベロッパーとは

(おそらく)同社の造語で、IP展開の経営戦略となっている考え方だ。

会社概要で、橋本社長は次のように語る。

経営戦略の要ということもあり、詳細が開示されていないので、多分に推測も含むが、社長の言葉をそのまま解釈し、バンドリの例も参考に考えるなら、次のようなイメージだろうか。


同社の戦略を必ずしも忠実には図示出来ていない部分もあるだろうが、ここでは"IPデベロッパー"のイメージを掴んでもらえればいい。

大事なのは、社長の発言にある"IPを創出"という考え方だ。
必ずしも同社の戦略を捉えていなくても、IPデベロッパーという言葉や、この発言から、IPを軸に考えていることが分かる。

だが、これが大きな間違いだ。
IPはそれ単体では存在しない

会社からすると、例えば"バンドリ"プロジェクトとして、キャラクターの設定やコンセプト(IP)を先に決め、マルチメディア展開を計画して走り出すだろう。

だが、ファンやユーザーが触れるのはゲームやアニメ、ライブといった個々のコンテンツ(エンタメ)だ。ゲームやアニメがないのに、IPを猛烈に好きになるケースは極めて稀であろう。例えば、ゲームにもライブにも触れてないのに、"バンドリ"というものを好きになったりはしないはずだ。

何らかのエンタメが世に出た時に、初めてIPになるのだ。

"バンドリ"が先にあって、ゲームやライブへ派生していくのはあくまで会社のプロジェクト管理の都合であり、顧客目線では、"ガルパ"や"CD""ライブ"という1つ1つのエンタメが先で、IPは共通項に過ぎない。
会社目線と顧客目線、どちらの考え方が適切か、自明の理である。

橋本社長は"IP"に付加価値が加わると言うが、実際のところIPの付加価値など存在しない。共通項を持つシナジーとして各エンタメに付加価値が生まれるのだ。

ライブが良かった、という時に付加価値が生まれるのは、"バンドリIP"という架空の概念ではない。
付加価値が生まれるのは、例えば"アニメ""ゲーム"という個々のエンタメだ。
そして、付加価値は、会社に生まれるものではなく、顧客が感じるものだ。

余談だが、この付加価値が"エモ"の正体だと思う。
アニメをオマージュしたシーンがライブで披露された時、我々はエモい、と感じる。それはシナジー効果によりライブに付加価値が生まれたからだ。エモ=IPのシナジーによるエンタメの付加価値、である。

話を戻すが、IPデベロッパー戦略の全てが分からなくても、「IPに付加価値が生じる」という考え方は間違っている、と考える。

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では、このシナジーの発生はどうやって起こるのか、もう少し掘り下げる。

"IPデベロッパー"の構図は、IPが線路のように広がり、周辺のエンタメに影響を及ぼすものだ。

しかし、IPなどというものは存在しない。
そして何よりも、ブシロードのソシャゲが尽く惜敗していっているのに、本当に付加価値が生まれる構図なのか怪しい。

この構図は、間違っていると考えられる。
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ここで、あるべきIP戦略について提唱する。※1

前のnoteでも触れたが、同社で最も大きな売上をしめるのはMOG部門である。
実際に我々の生活を思い出してもらえればいいのだが、サブカルチャーにおけるアプリゲームの位置づけは、特別だ。

アプリゲーム以外のエンタメは、基本的に楽しみ方が一過性か限定的だ。

例えばアニメは放映していない時期もある。ライブはキャパシティがあるし、年に数回だろう。コミックはキャラクターの声や歌を聞くことが出来ない。

アプリゲームだけは、基本無料で、いつでもどこでも誰でも世界観にたっぷりと浸れる。さらに、随時アップデートされる。このような性質を持つエンタメは他にない。

実際に各エンタメへ影響を及ぼし、エンタメを相互に繋ぎ、付加価値の掛橋となるのはアプリゲーム以外にない。例えば、アニメが面白かった!このアニメ好き!となった時、偶然翌日ライブがやっているとは限らない。まずはその日の夜、ソシャゲをインストールしてみるだろう。

最も大きなシナジーを発揮でき、エンタメの盛り上がりを量れるアプリゲームは、マルチメディア展開においては何よりも重要視すべき軸だ。

軸とそれぞれのエンタメを結ぶのは、キャラクターやストーリーの世界観という共通項だ。
たとえば、ゲームのストーリーやキャラクターをよく表現した曲があれば、CDの付加価値が上がるだろう。なお、付加価値の向上は、この図では丸が広がっていくことで表現出来る。矢印を通じて、顧客が行き来するイメージだ。

そして、IPというのは、この矢印と丸の総面積にすぎない。

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さて、勘の良い方ならもうお分かりだろう。
ブシロードが、バンドリやD4DJ、スタァライトなどあらゆるコンテンツをイマイチ伸ばしきらないのは、ソシャゲを軸として置かない、即ち経営戦略におけるゲームの位置づけが弱いからだ。

ソシャゲの矢印が細く(=コンテンツ力が弱く)、共通項であるストーリーやキャラクター等の世界観によるシナジーが薄い。
シナジーが薄いから、元々つよいライブコンテンツは丸が大きいままだし、アニメの評判が悪かったりすると再度顧客が戻ってこない。

ソシャゲが悪くても、ライブが良ければ何とかなる、という考え方は、絶対に間違っている

また、前のnoteで触れた点についても、ソシャゲの考え方を間違えている、という点で理解出来る。

ソシャゲを軽んじているから、ゲーム性が弱い。
ソシャゲを軽んじているからストーリー性が弱く、アニメに迷走したりする。
ソシャゲを軽んじるから、曲とライブが良くてもシナジーを発揮出来ず、セルランが下がり続ける。

折角のライブや楽曲を殺してしまわないように、ソシャゲ軸の戦略への立て直しを、強く進言する。
一流コンテンツになれたかもしれないポテンシャルを持ちながら、グングンと下がるセルランは、戦略ミスに違いない。

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終わりに。
会社の隆盛を図るバロメータとして、株価というものがある。ブシロード社がマザーズに上場した際、バンドリ戸山香澄役、愛美が鐘をついたことは記憶に新しい。

一時期4000円台にまで登った株価は、コロナの影響もあり1000円台まで下落し、3000円台で落ち着いている状況だ。
4000円が3000円になったということは、企業の魅力が全盛期の80%程度になっているということだ。

同社は、決して左うちわの会社ではない。

note①で紹介した会長のコメントで触れられていた、バンドリがガンダムのように続くために、同社デジタルIP部門の戦略見直しを期待して、筆を置くことにする。

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※1アニメありき、漫画ありきのようなコンテンツは別。例えば、ジャンプ作品のように、漫画が圧倒的なストーリーを持っている場合、中心は漫画になる。

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