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バンドリとD4DJとブシロード②~バンドリとD4DJの何が悪いのか~

(この記事だけでも読めますが、続き物になってます)
前回

さて、前回バンドリの人気が落ちてきて、D4DJのスタートダッシュも失敗したことが分かった。

では、何が悪いだろう。
思い出して欲しいのだが、バンドリの"凋落"ということは昔は良かったということだ。

要素に分けて、バンドリの魅力と、凋落の要因を分析しよう。

【ゲーム性】


ゲームはシンプルな音ゲーという、競走激しい分野である。デレステ、ミリシタ、SB69、プロセカ、と音ゲーは飽和状態だ。例えば原神のように、ゲーム性だけで引き込まれるものではない。
デレステのように簡単にキャラクターを育成できないため、育成素材集めがそれなりに大変で、ある程度熱心にリズムゲームをプレイしないとキャラクターを育成するのが難しい
ガチャ確率や育成面も特筆したものはない(むしろキャラゲーにしては厳しい)
また、キャラゲーの重要な要素であるMVも基本的にない。バンドパフォーマンスである以上、華やかにならないということだろうか。
カバー曲の多さ等は光るが、課金に結びつく要素にはなっていない。
本当に、リズムゲームをするだけ、という時間がめちゃくちゃ長い。
総合、ゲームとしてはあまりパッとしない。

【ストーリー・世界観】


まず前提として、キャラクターのコミュやストーリーをぶつ切りにして読むソシャゲは、バンドリに限らず中身が薄い。当たり前なのだが、コミュのワンシーンだけでキャラの魅力を感じるのは極めて難しい。
だからこそ、キャラクターや世界観の魅力をどう感じてもらうか、というのが運営の腕の見せ所なのである。

例として、"アイドルマスターシャイニーカラーズ(シャニマス)"を見てみよう。
同作品は、"プロデューサー"であるプレイヤーとアイドルとの関係性を、濃厚なカードのコミュも交えて描くことで、キャラクターに対して強い思い入れを描く構造になっている。
メインストーリーは、「プレイヤーと二人三脚で大会で優勝する」という構図であり、キャラクターと自分との共通体験が出来上がる。
また、カードのコミュも比較的重厚に作っており、1つのカードに対して2~5つの章に分かれたストーリーが収録されている。


別の例では、FGOがあげられる。個々のキャラストーリーを掘り下げていくシャニマスとはまた違い、メインストーリーが非常に重厚で、人気が高い。まるで本を読んでいるかのようなストーリーと世界観は、ガチャやキャラクター育成のシビアさといった難点を隠して余りあるようで、日本でも屈指の人気ゲームとなっている。

さて、本題のガルパはどうかというと、全くその辺のテコ入れがない。つまるところ、女の子のカードが出て薄い物語があるだけの、本当に月並みの展開である。

メインストーリーは展開が遅く全体的にダラダラしており、昔のジャンプアニメくらいのスピード感である。ほとんど物語が進まない章が多く、次を見たい気持ちにならない。
キャラクターカード等のコミュも、シャニマスのように濃厚ではなく、よくあるソシャゲのコミュ程度だ。何も物語は動かず、キャラ同士が4コマ程度の中身のない触れ合いをしている。そしてコミュも短い。ゲームの世界観だけで、長続きする要素を探す方が難しい。


では、アニメはどうだろうか。
例えば、オリジナルの物語がアニメで生まれた"アイドルマスター"や"ウマ娘"など、アニメのストーリー構成でキャラクターを好きになるケースというのはよくある話だ。

しかしバンドリは、アニメの評価も良くない。

レビュー投稿サイト"作品データベース"では、1期・2期共に評価ポイントの平均がマイナス。3期でやや好転したもののゲームの売上が上がらない程度の影響力なのは前noteの通りである。
そもそも世界観共通の2期・3期となると、元から好きな人しか見なくなりがちで、ファンからの評価に偏りアニメの評価としてあまり公平にならない。現に、同サイトのレビュー数は、1期は21件、2期は1件、3期は4件である。
結論、普通の域を脱せないアニメ展開であった。

設定や話の展開がありがちなアニメを抜け出せておらず、どうしても非凡な領域に達せないのだ。
例えば、主人公戸山香澄はギターの素人だったのだが、ライブハウス"SPACE"でのライブを見て憧れ 、"Poppin’Party"を結成。"SPACE"でのライブを目指しオーディションを受けていく、というストーリーがある。
その中のアクシデントとして、バンドの技術面等で"あんたが一番出来てない"と指摘されたことで声が出なくなってしまう。

これをバンドメンバーで乗り越えていくのが1期ストーリーのキモだったりするのだが、個人的な意見としては、極めて薄い。

例えば、同様に声が出なくなるという展開では、アニメ"アイドルマスター"がある。
如月千早は、眼前で弟が交通事故で死んだことをマスコミに取り上げられ、歌おうとすると弟が死んだ瞬間がフラッシュバックすることで声が出なくなってしまう
見るだけで苦しい展開だが、どのように乗り越えるのか大変気になるところである。

皆さんが始めたての学生バンドで、下手であることを指摘されて、声が出なくなるだろうか?
心に刺さるとは言い難い。アニメならではのご都合主義というか、無難な展開である。B級アニメと言い替えてもいい。

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【ライブ・楽曲】

月並みなバンドリ!コンテンツを支えたのが声優ライブと楽曲である。Poppin’PartyやRoseliaといった、ゲーム内のバンドがそのまま飛び出てきたかのような、キャラの声優が実際に演奏するライブは圧巻である。また、先述のレビューで総合点マイナス15点というアニメ1期でも、楽曲評価にはほぼ最高点がついている。
ElementsGardenを中心に構成された楽曲は耳に残り、バンドサウンドということもありついつい聴きたくなる。声優ライブは毎年のフェスに引っ張りだこであり、武道館や西武ドームといった大型ライブもこなしている。

大型の声優ライブでいうと"アイドルマスターシンデレラガールズ"はロックをテーマにドームライブを行っているが、実際に声優が演奏することは無かった。そして軽音楽・バンド系のアニメは数あれど、バンドリと同じ密度・頻度でリアルの声優がライブをするコンテンツは他にない。

唯一無二の、バンドリだけが可能な魅力である。

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【IP全体が盛り上がらない理由】

だが、ここまではよく言われている話だ。もう一歩踏み込んで考えてみよう。前のnoteで述べたように、今のバンドリの問題点は、"ライブをやってもゲームの売上に跳ねなくなってきた"ことである。
バンドリは、メットライフドームやコニファーフォレスト等の大型箱で、コロナ禍であっても年間3回以上ライブを行い、その他フェスにも積極的に出場している。

これは、デレステよりも明らかにライブ頻度が高く、箱も同等だが、セルランにはかなり差が出ているのは前noteの通りである。また、例えばライブ等行っていないコンテンツ(アズールレーン等)にも敗北している。即ち、大型ライブをやってもそれに見合った盛り上がりがない。なぜか。

理由としては、コンテンツから声優ライブが分離してしまったからではないかと考えられる。

具体的には2点。ライブにゲームの必要性がないこととコンテンツ全体のライブでないことである。

1つ目の点は、ゲームをやらなくてもライブを楽しめる、ということにある。良くも悪くも、楽曲の良さとリアルバンドという構成で、Poppin’PartyやRoseliaが、ガールズバンドの位置づけを確立してしまったのだ。
ゲームを熱心にやらなくても、ライブだけで楽しめてしまう。バンドメンバーは基本的に変わらないから、CDを買っていれば(もしかすると買わなくてさえ)、単なる声優バンドのライブとして完成している。

例えばゲーム中のMVと同じダンスがあるとか、毎回ライブユニットを変えて曲を披露するとか、毎年新しくボイスの着いたキャラクターが来るとか、そういったことは基本的にない。IP全体の盛り上がりとの連動性が、規模の割に少なすぎる。普通にバンドを応援するのと一緒でいいわけだ。
バンドライブは、圧倒的に分かりやすく楽しみやすいという強みはあるが、ステージに変化がつけにくい弱みが出てしまっている。

2つ目は、何のライブなのか、という問題である。
バンドリ!は、基本的にバンド単位でライブを行う。これにより、『バンドリ』のライブではなく、『Poppin’Party』等の、声優ガールズバンドのライブになってしまっている。『バンドリ』のライブでないのに、バンドリが盛り上がらないのは当たり前である。

また、全てのユニット(バンド)がライブをやらない点も含まれる。"ハローハッピーワールド""Afterglow"といったバンドは、声優がバンド(楽器)を出来ないユニットである。
『機会がない』とかそういう問題ではなく、声優の能力的に厳しいので、限りなく当該ユニットのバンドライブ可能性は低い。
こうなると、『バンドをするユニット』と『バンドをしないユニット』がしっかり分かれてしまい、どうしても一体感のある盛り上がりに欠ける。
コンテンツ(バンドリ!)全体の盛り上がりが欠けるのも頷ける。

数ユニット合同のライブもあるが、ユニットの組み合わせを超えた、ライブ限定バンドのステージではなく、声優バンドライブフェスになってしまっている。
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声優ライブを軸に、物珍しさから、"どんなアプリだろう?"となり調子が良かったものの、コンテンツが月並みなので段々飽きられてきている、というのが実態だろう。

ライブを見て、"あ、この声優・キャラ好き!"となっても、続かないのではないか。コミュは月並み、テンポも遅い、ゲームはリズムゲームをやり続けるだけでMVも見れない。
逆にどうやって課金のモチベーションを続けられるのか、という話である。
これまでは、アニメを年1で放映し、間を埋めるように大型ライブをやってきたわけだが、所詮一時的なドーピングに過ぎなかった。
ゲームの中身が薄く、コロナでライブが複数回なくなっただけで、崩れ落ちるように飽きられている。

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【D4DJの失策】


バンドリは、コンテンツのゲーム性やストーリーが月並みであり、徐々にセルランを落としていっている。そんな中、バンドだけが分離して一定の人気を維持している、という構造が、ここまでで浮き彫りになった。

では、D4DJはどうだろう。

実は、セルランが厳しいことから分かる通り、D4DJはもっと深刻な問題を抱えている。

まず根本的で致命的な点だが、バンドリとあまりにも似ている要素が多すぎる。

細かく見ていくと違う点も勿論あるのだが、ユーザーを取り込むタイミング(ユーザーがコンテンツに触れる際)のファーストインプレッションがあまりにもバンドリと類似しすぎている。

リズムゲームの操作感は若干違うが、ゲームの流れ自体は全く同じで、コミュの薄さとスローテンポなストーリー。単調なリズムゲーム一辺倒の流れから受けるインプレッションが完全にガルパと同じだ。

ログインした基本画面のインターフェース(チビキャラがマップに点在しており、タップすると簡単な会話が聞ける)が全く同じこともあり、ゲームを触ってバンドリと似てないという印象を持つ方が難しい。

また、最もストーリーで肝になる主人公・愛本りんくの性格が、あまりにもバンドリ主人公・戸山香澄と似すぎており、話の展開すら同じように錯覚する。

キャラで言うと、瀬戸リカ等、一部のキャラクター役声優の演技力は絶望的で、ライブのためだけに採用したのかと思うレベルだ。そういう点ではコンテンツクオリティがバンドリよりも劣るようにさえ感じる。

一方、D4DJの長所は、豪華音楽制作陣による楽曲と、積極的な声優ライブである。特に音楽制作陣の層は熱く、名曲揃いだ。その楽曲を生で届けるライブも魅力である。

ただ、抱えている問題点はバンドリと全く一緒であり、ライブの規模の割に売上が伸びていない。

ゲームのリリースに先行し、幕張メッセで1stライブを行う他、ゲームリリース半年で全体ライブが5回(決定済のもの含む)、ユニット単独ライブも決定している。

ゲームのリリースにあたり、ここまでお膳立てされてる例も珍しく、とてもセルランで100位を越えられないコンテンツとは思えないレベルだ。

これは単純で、"声優に人気があるだけ"だからだ。
例えばこれが、ほとんど新人声優で、名前も聞いたことがないメンバーだったとする。ただ、キャラクターには物凄くマッチしている声優陣。
果たして、幕張メッセやコニファーフォレスト等を埋められただろうか?

声優ライブの大多数が、そのような箱でライブを行っているわけではないことからも、答えは否であろう。

『D4DJ』のメインユニット声優24人のうち、過去のブシロード作品/自社関係のプロダクション声優が17人である。
また、看板キャラである山手響子は、バンドリ主人公、戸山香澄役の愛美である。単純に自社作品の人気声優でライブをするわけだから、ある程度ライブが盛り上がるのは当然である。虎の威を借る狐的コンテンツだ。

別のケースにあてはめてみよう。
例えば、先述のシャニマスは、人気シリーズだが、舞浜アンフィシアターで1stライブを行っている。同会場のキャパシティは、D4DJ1stライブ(幕張メッセ)の1/4程度である。
声優陣は基本的に過去シリーズ作のメインキャラなどではないため、正直作品に触れるまで全く知らない人の方が多かっただろう。

仮に、シャニマス主役声優の大部分が、過去のアイマスシリーズであったら。D4DJと同様、最初から幕張メッセ級の大きい箱でも出来ていたはずだ。ただそれは、コンテンツの本当の実力ではない。だから普通はやらないのだ。

なお、シャニマスの2月セルラン平均は201位(予測1.31億)と、D4DJの159位(同1.71億)に迫る勢いだ。これは、D4DJが完全に負けている。シャニマスはアプリ外のプラットフォーム"enza"が主流の課金体系(課金レートが安いため)と言われており、アプリだけですらこの比較というわけだ。

結局の所、自社の人気声優を並べたライブは人気だが、コンテンツが月並みであるため課金が伸びないのだろう。単純に、ゲームやコンテンツの競争力がないのだ。

前noteで述べたように、アニメも放送中、ライブも実施済み、会社を傾けるレベルで広告に力を入れ、セルラン200位代は単純に魅力に欠けるコンテンツと言わざるを得ない。

まず何よりも、バンドリとの競争に勝てていない。

木谷会長はグルミクとガルパについて、"ユーザー層は当初の予想よりも『バンドリ!ガールズバンドパーティ』と重なっていない"としている。(木谷高明の視点より)

これは当たり前のことであり、バンドリと似てる後発のコンテンツが来たら、普通ユーザーは、『じゃあこれまでプレイしてきたガルパでいいわ』となるはずだ。
『ガルパと重なっていない課金層』という金鉱脈を掘り当てられるつもりだったのかもしれないが、展開の仕方や声優がほぼ同じで、『バンドリには課金しないがD4DJには課金する』という層が果たしてどれだけいることだろう。

さらに、矛盾しているようだが、D4DJのライブの一部はバンドリと合同開催していたりする。
ライブを合同開催していて、声優もほとんど同じで、D4DJへバンドリユーザーを取り込めていないことの方が致命的と感じるのだが…

いずれにしても、失策だったのか否かはぐいぐいと下がるグルミクのセルランが物語っているのではないか。

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ゲームを中心に、2つのコンテンツの人気が上手くいかないことを述べたが、絶対的な評価でつまらないということを述べたい訳では無い。もっと上手くいっていないコンテンツはある。

本当に言いたいのは、これだけ盛り上がるバンドやライブを持っていながら、コンテンツを腐らせ始めているのは勿体ない、ということだ。即ち、逸失利益が凄まじいのだ。

もう一歩過激な発言をすると、ブシロードはゲームを提供するのが下手だ。
カネにものを言わせて、曲とライブはちゃんと作っているものの、一辺倒のつまらないゲーム性でコンテンツ全体を殺している。勿体ない

さて、ここまでバンドリとD4DJを並列させて見てきたわけだが、その理由は、次のnoteに記したいことがあったからだ。

それは、ブシロードが経営戦略として掲げる、『IPデベロッパー戦略』そのものの失敗である。

※記事中のゲーム画像はブシロード社に帰属するものです。


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