見出し画像

DESIGN : ALBION PHILOSOPHY ピールオフ広告【BEAUTY お美くじ】

NEWoMan横浜にあるALBIONの新業態ショップ、ALBION PHILOSOPHY
“Happyをむかえにいこう”をコンセプトに、ALBIONのスキンケアアイテムや化粧品を手に取れることはもちろん、化粧品原料の調合や肌効果の研究を見ることができるラボや、特別なリラクゼーションタイムを過ごせるサロンまで用意されています。

OUWNでは、プロモーションの一環として「BEAUTY お美くじ」の広告やツールのビジュアル制作を担当しました。期間中には横浜駅にピールオフ広告が掲出され、剥がしたピールを店頭に持っていくとアイビー茜さんがBEAUTYを占う「お美くじ」と引き換えられるという施策。
今回はアートディレクション・デザインを担当した出井と、イラストを担当したfumiが話します。

【BEAUTY お美くじ】

画像3

画像15

出井 : ALBIONの複合ショップ・ALBION PHILOSOPHYへの店舗誘導企画です。広告に貼ってあるチケットを剥がして持って帰ることができる“ピールオフ広告”で、チケットをお店へ持って行ったら「BEAUTY お美くじ」、化粧品サンプルと交換できるというものでした。

ー お店に行くとおみくじの結果が分かるんですね。

出井 : はい。剥がせるチケットに番号が書いてあって、店舗でその番号のものと交換する、神社で引くおみくじと同じ仕組みです。それぞれ吉、大吉、というふうに書いてあるのですが、ピールオフの絵柄自体は20種類あり、1つの柱に1000枚、計5本の柱で5000枚取り付けていました。
占いは、アイビー茜さんが書いてくれています。

ー 今回のビジュアルはイラストがメインですね。

出井 : そうなんです。2〜3年前にLUMINEの「LIFE IS JOURNEY」というキャンペーンクリエイティブをOUWNが担当したことがあったのですが、そのときのビジュアルを担当の方が気に入ってくれていて、今回もあのイメージでとお話をいただきました。なので最初からイラストがメイン、というのは決まっていましたね。

画像12

画像13

(上2枚)
CL : LUMINE CO.,LTD.
LUMINEのSPECIAL DAYS 「LIFE IS JOURNEY」という旅をイメージしたキャンペーンのクリエイティブディレクションをOUWNが担当。


旅に行きたくなるような、軽快なイラストを多様に用いたデザイン。(2017)

出井 : 依頼をもらったときにおおよその方向性は定まっていましたが、その中でもちょっと大人っぽいトーンや落ち着いた色味、LIFE IS JOURNEYのときより手書き感をなくしたものなど、細かな検証をしていきました。コンセプトとなるキーワードが「Happyをむかえにいこう」だったので、最終的には明るく元気なトーンに。「お美くじ」にはどのデザインにも鳥がいるようになっていて、カラフルな鳥がHAPPYを連れてきてくれるイメージです。


実は初めて? イラストの作り方

画像4

ー イラストはfumiさんが担当ですね。

fumi : はい。LIFE IS JOURNEYのイメージに加えて、参考になる資料をピンタレストで集めて考えていきました。実は、デザインありきのイラストを描くのが初めてだったので、どこまで有機的に描いて良いのか、どう描いたらデザイン作業がしやすいのか… 考えながらの作業でした。
例えばこの植物を作るには、葉っぱのベース部分のみを描いて、別の紙に葉脈を描く。デザイン作業をするときに色変えや微調整しやすいようにレイヤー分けをするんです。これはアクリルガッシュで描いていて、実際に使う量の2〜3倍くらいは描いたかなと思います。

1G5A2989のコピー

出井 : イラストレーターさんにイラストを頼むときは、その人の作風があるのでテイストの心配はありませんが、今回はOUWNで依頼を受け、fumiが描くことになりました。fumiのイラストはポートフォリオなどで見たことはあったけど、正直どんな絵を描くのか、どこまでできるのだろう?という未知な部分がありました。でも描いてもらったら、すごくハマりが良かった!

気をつけた点としては、季節感をあまり感じないように調整しました。今回の絵は「Happy」というテーマを第一に、別のテーマが浮かぶような癖をあまり出したくなかったんです。こういう大ぶりな植物の絵は南国っぽいイメージになりやすいので、その部分を意識しましたね。

画像15

ー fumiさんは普段からこういう絵を描くんですか?

fumi : いえ、普段からは描いてないんです。画材に関してのこだわりもなく「これが自分の絵」っていうものはなかった。自分らしさっていうものがあまり分かっていなかったんですが、今回の制作を経て大ぶりでぽってりした絵を自分は描くんだなって思いました。
そういう絵とデザインのハマりの良さも感じましたし、今回の案件で少しだけ自分らしさが分かったような気がします。

1G5A2945のコピー

出井 : ポートフォリオを見たときに、fumiの絵はラインを強く太く引くイメージがあったのですが、想像できてなかった部分をうまく超えてくれたなと思います。大ぶりなところと細かい部分が両方あって、ちょうどいい。
狙ったわけではないのですが、最終的に華奢なデザインになったので、そこと組み合わせたときのギャップも良かった。全部の要素が強いとイラストも活きてこないし、逆にイラストがもっと弱かったらフェミニンな感じになりすぎてしまう。お互いを引き立てる良いバランスができました。

1G5A3034のコピーのコピー


イラスト×デザインの制作過程

ー データ上でイラストを調整するにあたり、描くときに気をつけたことはありますか?

fumi : 色は濃い方が調整はしやすいかもしれません。スキャンするときに色を拾いやすいので、薄すぎないようにということは心がけました。絵を描く作業自体は半日くらいでガッと進めました。個人的には久しぶりにPCではなく筆を使う作業だったので、リフレッシュになって楽しかったです。

出井 : でも結構な数のイラストだったので、大変だったんじゃないかなって。修正で描き直したりするのは嫌になったり、やっぱりPC作業したいって思わない?

fumi : そんなこともなかったですね。今までしっかりイラストを描いてきたわけではないんですけど、意外と描くのが好きなのかもしれません。

ー 多分これを見た他の人は、イラストレーターさんに依頼してるって思いますよね。

出井 : ですよね。このテイストでっていう依頼がまたくる気がするので、そしたらまたfumiに描いてもらいたいです。

制作する途中、イラストデータにマスクをかけて、すぐに色変更のできる素材も作ったんです。だけど、それだと手書き感が薄れてしまい「計算して整理されたもの」になってしまった。なのでデザイン作業としては少し大変ですが、質感が残るよう、いわゆる「絵」のデータでやっていくことにしました。
掲出ではボードとサイネージがあり、サイズ的にも大きくなるから、直接見てもなんとなく筆跡が感じられるように。少しぼそぼそっとした感じだったり、微妙に薄いところやかすれがあったり。ほんの僅かかもしれないですが、その少しで印象が変わりますよね。


OUWNの「ちょっとした違和感」

画像8

出井 : 色合いはクライアントの方と相談して決めていますが、個人的に細かい部分の表現ですごく迷いました。例えば黄色だったら、全部同じ黄色にしようかなって思った瞬間があった。でも、色調整しても完全には合わせずに組み合わせていったら、すごくしっくりきたんです。カチッとしすぎず、程よい賑やかさが感じられた。色を完全に統一させることは可能ですが、統一しちゃうと手書きのアナログ感が薄れ、平面的なものになっちゃってたと思います。少しの違和感のようなものが大事だなと。

石黒さんも出井さんも、「ちょっとした違和感」ってよく使いますよね。2人からよく聞く言葉だなって思うのですが、それってどういう意味なんでしょう?

出井 : 見る人にちょっとした違和感を与えることだと思います。「なんか気になるな」、「これなんだろう」ってなるものが作れないと、OUWNでやっている意味がない。綺麗に整理されたデザインはいくらでもあるので、綺麗でいてちょっと変、みたいなところがないと面白くないなって思います。綺麗にするだけじゃないプラスアルファのところで、クセ付けみたいなことですかね。

☝︎“ちょっとした違和感”について。ヤクルトの記事でも触れています


デザインのタブーを積極的に取り入れる

出井 : このおみくじのデザインも、実は色々挑戦してるんです。文字部分に黒を使わずに深緑を使ってみたり、正円じゃなくて楕円を使ってみようとか。楕円ってちょっとダサいとされてきたというか、正円か四角の角を丸くしたカタチの方が良い、みたいな雰囲気があったと思うんです。
でも最近は海外のデザインで楕円が多く使われている印象もあって、今回はちょっと使ってみようかなって。と言っても、ただ潰しただけの円ではなく、パスを調整して高さを出しています。

フォントも、和文のもので英文を打ってみたり、めちゃくちゃ平体をかけたり、大きすぎ?小さすぎ?ってくらい文字サイズにギャップをつけたり。フォントもゴシックならこれと統一せず、何種類も入れてみたり。線が細かいフォントでフチ文字しちゃうとか。

画像9

ー 挑戦的なことをたくさんしていますね…!
ここの「。」がはみ出しているのは…

画像14

出井 : あっ、それはマイブームで…(笑)今までは揃えてたんですけど、最近ちょっと変えてみたりしてます。出すのか、揃えるか。

ー 「これが正しい」と決め込まずに、日々変えていってるんですね。

出井 : 今回は結構実験的な部分を詰め込んでいます。あとは、全体的に色が薄いのも今回のデザインの特徴かもしれないですね。おみくじの上下の色は、いつものOUWNのデザインならもっとパキッとした色を使うと思うんですけど、淡い色で揃えました。手元で見ると色の美しさがわかると思います。

ただ、今回1つ勉強になったことがあって、手元に取るもの(チケット)に関してはこの色で良かったなと思うんですが、広告が掲出されている現場に行って柱になっているものを見たら、少し印象が優しかった。今回は何本も柱があったので、この色合いで良かったと思いますが、もし柱が1本だったらこの淡い色ではなかったかもしれない。そういう、場所であったり規模感によっても選択する色が変わるなと思いました。
石黒さんは色を使うとき、分かりやすい数値だったりパキッとした色を選択していることが多いのですが、それってやっぱり街で目に留まりやすいからという理由もひとつあるんだろうなって思ったんです。当たり前のことかもしれないですが、改めて感じたことでした。


「見てもらえる」デザイン作り

ー ピールオフ広告ということで、手に取ってもらえるように意識したことはありますか?

出井 : 自分の中ではイラストがパッと目に入って可愛いと感じるようにすることと、キャンペーン内容の「分かりやすさ」を気にしました。しっかり読まないと分からないような「めんどくさそう」って思われるものにしない。そのために文字間を広めにとって、読むところも少ないように。
ピールオフに関してはそこまで不安はなくて、それよりも柱の場所と店舗が場所的にすぐそこ!というわけではなかったので、剥がした後にお店に行ってくれるかな、という気持ちの方が大きかったですね。

ー SNSなどで反応は見ますか?

出井・fumi : えっ!全然見てないです(笑)。そっか、全然考えてなかった…(今検索する)

fumi : あっ!インスタで見てみると、結構のせてくれてます!ALBIONの購入品と一緒に写真を撮ってくれてたり、こういうのはすごく嬉しいですね。


【アフタートーク】 刺激になるもの

1G5A2955のコピー

ー お2人は普段おみくじや占いなどする方ですか?

fumi : おみくじ引きますね。大吉だとテンション上がります。

出井 : 私も結構引きますね。願掛けしたいし、導いてほしい。もし前に引いたものが悪かったら、それを更新したくてまた引いちゃったり。でも大吉はちょっと苦手で、「えっ、今マックスに良いってこと?」って逆に不安に思っちゃうので、ベストは中吉か吉です。(笑)

ー おみくじとか占いって、毎日に些細な刺激やきっかけを与えてくれるものかなと思うのですが、2人にとって日常でそういうものはありますか?

fumi : 私は去年OUWNに入って、この1年刺激でしかないんです。なので逆に休日は散歩とかして、ただぼーっとしていることが多いです。あと最近だと、ウォン・カーウァイの作品を見たのがきっかけで、アジアの映画を見ることが多いです。ウォン・カーウァイはもともとデザインを学んでいたらしく、 グラフィカルな構図や、斬新な色使いがとても素敵なんです。エモーショナルなストーリー展開も良いのですが、随所にあるスローモーションやアクション的展開が独特で面白いです。

出井 : 私も毎日の仕事で刺激がありすぎるので、それで十分かな。スケジュールも急にピンチが来たりして、他でも刺激があったら大変になっちゃいます(笑)。
とは言え、新しいものを見たり新しい場所に行ったりすることは好きなので、仕事柄っていうのもありますが、新しいスポットができたらとりあえず行ってみたり。些細なところでヒントを得ています。
今回のおみくじやイラストの広告も、日常の中で小さな楽しさを生み出せていたら嬉しいです。

画像12

CL : ALBION philosophy / @albion_philosophy
PRD : HAKUHODO MAGNET INC.
AD+D : YUMI IDEI(OUWN) / @ideiyumi
I : FUMIKO ISHIKURA / @fumiko_ishikura

ALBION PHILOSOPHY【BEAUTY お美くじ】デザイン完成版はこちら >

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
聞き手 ・ 執筆 : 星成美


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?