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多様性の促進には「過去の成功者の面影」からの脱却が必要

「女性の活躍促進」は、企業にとって差し迫ったテーマになっている。

一昔前では、中長期的に改善を目指す努力目標のような位置付けだったように思う。しかし、近年その重要性が急速に周知されるようになり、今日の企業にとっては対応必須の急を要する事項である。

ミレニアル世代の8割が、就職先を選定する際に、多様性や平等性に関する組織方針を重視すると答えている。また、多様性ある組織で働いている実感を有する社員の方が、そうでない社員よりも、その会社で長く勤続する意思を示すという調査結果も得られている。こうした近況から、採用・リテンションといった人材確保のためにも、女性の活躍促進は必須アジェンダとも言えるだろう。

視点を変えて、資本市場における評価(株主からの評価)という視点でも、女性の活躍促進は重大な関心事だ。
ESGが注目されてから久しいが、機関投資家たち、株主の間では、ESGに積極的に取り組む企業に投資をする動きが広がりつつある。日本を代表する機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、女性活躍に注目した「MSCI日本株女性活躍指数(WIN)」に連動したESG投資を開始する、との意向を示しており、象徴的な出来事と言える。
また、経済産業省と東京証券取引所では、「女性活躍推進」に優れた上場企業を選定し、「中長期の企業価値向上」を重視する機関投資家に魅力ある銘柄(なでしこ銘柄)として紹介している。
こうしたことから、株式市場での企業の女性活躍状況に対する注目度の高まりがみてとれる。資本市場において評価を得て、株主の理解を得ながら経営を舵取りしていくうえで、女性を積極的に登用していく姿勢を実績と共に対外的に示していく必要性が高まっている。

https://www.gender.go.jp/policy/mieruka/company/pdf/yakuin_5.pdf

しかしながら、日本の実情といえば、決して順調ではない。着実に改善してはいるものの、世界的にみてかなり劣後している。

就業者や管理的職業従事者(役員や課長以上の管理職)に占める女性の割合を海外比較した分析結果を内閣府が発表している。

欧米・北欧諸国の管理的職業従事者に占める女性の割合が、3割強か~4割強であるのに対し、日本はわずか15%程度に留まり、遠く及ばない結果が明らかになっている。

こうした現状に対して、経団連は、「#HereWeGo203030」というチャレンジを掲げ、多くの賛同企業と共に取り組みを進めている。

「多様な人々の活躍促進」実現のための具体的な目標として、「2030 年までに役員に占める女性比率を30%以上にする」と宣言している。

https://challenge203030.com/

役員といえば、会社員としてのキャリアの集大成ともいえるわけだが、女性がそこに至る道のりは険しいと言わざるを得ない。
その一因が、「『過去の』男性の成功者の面影」にとらわれてしまうことにあるように思う。
これまで会社員として役員にまで上り詰めた人たちは、多くが男性であり、そうした成功事例に影響を受けて、周囲の人々も会社員の成功像を思い描く。家庭をかえりみず、ひたすらに仕事に打ち込むモーレツ社員。そうした過去の男性成功者の働き方にひっぱられて、マネジメントする立場の人材像を固定化してしまっていないだろうか。そうした働き方をできる社員だけを、登用していく風潮になっていはいないだろうか。
当の女性たち自身も、そうした過去の成功者像にとらわれ、それと比較して自分があてはまらない、そうして働き方はできそうにない、と人知れず、あきらめていくこともあるように思う。

時代が変わり、働く環境も変わった今では、従来の成功者の働き方ではなくとも、また異なる形で仕事で成功を収めることもできるようになりつつあるのではないか。

女性の活躍促進を推進していく上では、従来の成功事例にとらわれない、新たなマネジメントの人材像を再定義してく必要があるように思う。

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