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変形性股関節症⑤ー歩行での対策ー

前回の記事で、歩行中には
・足関節のプッシュオフ
・ストライド長
などが、変形性股関節症の進行に関係している可能性がありました。

今回は、その記事内でも紹介した文献の中でさらに歩行に着目していた項目があったため、個人的な考えも含めまとめました。

稲井卓真, 他. 変形性股関節症と歩行. バイオメカニズム学会誌, 46(4), 2022




T字杖

歩行中にT字杖を使用することが、股関節への負担に影響を及ぼしているかの記載がありました。
結論としては、T字杖の使用により股関節内・外転モーメントインパルスは有意に減少していました。特に驚いたことは、杖で体重の 20% 荷重した場合には、股関節内・外転モーメントインパルスは杖なし条件と比べて約 50% まで減少するそうです。
純粋に20%分の免荷ができるだけでなく、物理的な要因からさらにモーメントインパルスを減らすことができるのでしょうね。詳しい原理はわかりませんが…。

臨床で患者様から聞かれる声としては、
「杖使うと筋肉落ちるよね」
「杖はなるべく使いたくないんだよね」
を、よく耳にします。
しかし、変形性股関節症の進行を懸念すると使用したほうがよさそうですね。どのタイミングから必要かの判断が難しいところです。
自分としては、痛みが出ている場合は積極的に使用するように進めています。


歩行速度

歩行速度に関しては、結果として速度が遅ければ遅いほどモーメントインパルスが増加するそうです。
早いほうが負荷がかかりそうなイメージですが…

他の分野もそうですが、歩行速度に関しては様々な要素を加味して考える必要がありそうです。歩行速度の上昇は、転倒リスクの上昇につながる可能性もあります。しかし、今回の結果では、なるべく早く歩いたほうが良さそうですよね。
自分の最適と思う歩行をしてもらうのが良いでしょうか。


歩幅とケイデンス

最後は歩幅やケイデンスに関してです。ケイデンスは単位時間あたりの歩数ですね(一般的には1分間の歩数です)。
結果としては、歩幅の増加とケイデンスの減少はモーメントインパルスを増加させていました。
あえて大きな歩幅で歩くことはやめたほうがよさそうですね。


歩行のまとめ


以前の記事(③、④)の内容も合わせてまとめると

よくないこと
・立脚初期の股関節屈曲角度の増加
・歩行速度の低下
・歩幅の増加とケイデンスの低下

良いこと
・歩行中の股関節伸展の増加
・足関節でのプッシュオフ
・T字杖の使用

となりそうです。

自分は患者さんへ伝える際に
「歩くときの後ろ足の親指と人差し指の間に体重がのる(抜けていく)のだけ意識してください」
と、声かけをしています。
あまり意識する項目を多くすることは、タスクを多くしてしまい、本来の歩行と逸脱する可能性が高いため、指示は一つに絞っています。
実際に歩いてみると、Tstでの足趾への意識だけでなんかプッシュオフも自動的に起きている気がしませんか?
しなかったらすみません。
それでかつT字杖の使用を進めるのも重要ですね。



ではでは。



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