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人工股関節置換術後のエビデンスに基づくリハビリテーションー文献抄読ー

人口股関節全置換術(THA)後のリハに関して、実際どのような介入を行なっていくべきでしょうか。
今回はそのような疑問への回答の一つとなり得そうな文献を紹介します。



参考文献

Virginia Colibazzi, et al. Evidence based rehabilitation after hip arthroplasty. Hip Int. 2020 Dec;30(2_suppl):20-29.
Doi: 10.1177/1120700020971314.

「人工股関節置換術後の科学的根拠に基づいたリハビリテーション」という文献です。
THA前後のリハビリテーションに関する文献に関してのシステマティックレビューとなっています。

方法などは、文献を参考にしていただければと思います。


介入内容

術前のリハ

術前にどのような介入をするべきかに関しては、まとめると

・術前の患者への教育はよく行われているが、入院中や術後3ヵ月後の機能回復において、大きな利益はない。

・筋力強化運動、ストレッチング、有酸素運動は術前の状態に有益な効果をもたらす。

・松葉杖、動作制限、体位制限のトレーニングは、特に自立度が低下している高齢者に対しては、すべての教育プログラムに含めるべきである。

・膝伸筋は、術前の等尺性筋力が術後12週間の機能的転帰を示す唯一の筋群である。

とのことです。

術前のリハとしては、Quad setteingなどの膝関節伸展筋力向上運動などを中心とした筋力強化運動や有酸素運動、ストレッチが良い効果を生み出す可能性がありますね。
患者教育には、大きな利益がないそうですが、手術への不安の解消など短期的な効果はありそうですので、行うべきだろうと自分は思います。
脱臼肢位などの確認なども必要そうですね。


術後のリハ(術後1〜6週)

術後1〜6週の介入内容です。主に入院中などになるかと思います。

・患者のエンパワーメントに基づいた教育プログラムは、高齢者において、セルフケア能力と自己効力感を有意に改善し、抑うつ傾向を低下させる。

・歩行訓練(松葉杖、階段、座位から立ち上がり)とベッドでの運動 (大腿四頭筋等尺性運動、臀筋とふくらはぎの強化)を追加しても、 患者の感覚は強化されるものの、SF-12とILOAスケール(Iowa level of assistance scale)のスコアは改善しない。

・術後1週目に開始した4週間のレッグプレスと股関節外転の漸進的トレーニングは、標準的なリハビリと比較して、筋力を増加させ、サブマキシマムテストでの心肺努力を減少させることができる。

・強化エクササイズを中心とした介入プロトコルを用いた研究では、他の理学療法的エクササイズ介入を用いた研究よりもContent Scaleの治療的妥当性のスコアが高いことを示している。

・NERP(Norwich Enhanced Recovery Programme)は、合併症を最小限に抑えながら、入院期間と疼痛を軽減するのに有効であるようである。

・介入後1週間以内の早期集中的積極的理学療法(股関節の筋肉の動員、協調性、安定性、強化に重点を置いている)は、従来の治療を受けた対照群と比較して、股関節の屈曲、伸展、外転可動域が改善し、6MWTも改善した。

・筋膜マニピュレーションは、筋膜マニピュレーションの2回の治療セッションと、介入後10日間にわたる標準的な術後リハビリテーションの17セッションを併用することで、 標準的なリハビリテーション19セッションと比較して、 ROM(関節可動域)とHarris Hip Scoresが有意に改善した。

・運動によって歩行速度スコアが0.15m/s増加することが示された。歩行速度の向上には抵抗性トレーニングの異なるプロトコルがより効果的であることを支持している。

・6ヵ月後の歩行能力の予測因子として、TUGテスト(Timed Up and Goテスト)と股関節伸筋力が示されている。

・股関節外転筋は歩行能力に影響を及ぼす可能性があるため、日常生活動作における障害を軽減するためには、これらの筋力を強化することが推奨される。

・股関節外転筋の筋力低下は歩行時や階段昇降時の体幹のコントロール低下につながる可能性があり、股関節外転筋の筋力低下と体幹のコントロール低下は術後6ヵ月まで持続する可能性がある。このような状態は、外側アプローチでより頻度が高い(上殿筋神経の異所性損傷や中殿筋腱の癒合不全が関係。Trendelenburg徴候が生じ、患者満足度の低下につながる)。

・体重の15%を部分的に支えるトレッドミルでのトレーニングは、標準的なリハビリテーションと比較して、3ヶ月後および12ヶ月後の時点で、股関節外転筋力、可動域、歩行対称性、中殿筋の反応を改善するのに有効である。

・患者さんは早期にリハビリを開始し、耐えられる範囲ですぐに体重負荷をかけるべきである。歩行補助具の使用は最初の6週間は推奨される。

・術後器具、機能制限、股関節の注意事項を用いたグループ介入と対照群との間で、股関節脱臼の発生率、股関節の機能、QOLに統計学的に有意な差は認めなかった。

・動作やADL(日常生活動作)の制限は、6ヵ月時点で、制限を受けたグループの参加者は、術後器具や機能制限を受けなかったグループと比較して、ADLの術前レベルへの復帰に関する満足度が低い。

・制限群に割り付けられた参加者が、車の運転、同乗、仕事復帰に戻るには、より長い期間を要する。

・特定の動作や活動は、採用された手術方法による脱臼のリスクを反映しており、特別な配慮が必要であることが示唆される。

松葉杖の使用は、患者が耐えられる範囲で体重を調節できるようにするために、一般的に推奨されている。階段の昇降にも強く推奨される。

・早期に全身に体重をかける「課題指向型」の運動プログラムは、部分的に体重をかける従来の標準的な運動プログラムよりも、疼痛の軽減、安定性、QOLの改善という点で優れている(術後12ヵ月まで持続)。

・管理下の理学療法は、特別なニーズがある患者(職場復帰が早い、合併症が大きい、運動経験がない)にのみ行うべきである。


印象としては、筋トレなどで筋をどんどん使っていくことが重要なのかと思います。以前の記事で、手術方法で筋力に変化がみられているので特にその筋への介入を行なっていくことが重要かもしれません。
筋膜マニュピレーションやNERPなど、詳しくないのですが、効果的なのですね。勉強してみたい気もしますが…
脱臼肢位などへの配慮は必要であるとは思いますが、過度な配慮は患者の満足度などに影響が出ます。術式を確認し、必要な教育は行なっていきましょう。


術後のリハ(術後6週〜)

・術後6週目以降のリハビリテーションは依然として有用であり、歩行速度と歩調を改善するために自重エクササイズと股関節外転筋に重点を置くべきである

・総重量によるエクササイズプログラムは、ハムストリング、股関節外転筋と伸展筋、大腿四頭筋の筋力を改善し、自覚的自立性を高めることができる。


自重での運動を中心に、自宅での運動指導が必要ですね。
股関節の手術ではありますが、大腿四頭筋への介入はやはり必要なのがわかります。術後半年ぐらいの研究は少ないそうですので、今後新たな治療方法などが報告されるかもしれませんね。


術後のリハとしては筋力トレーニングなどのやや高負荷の運動が必要ですね。早期から積極的なリハを行なっていき、機能向上への一助となるといいですね。

ではでは。



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