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神戸電鉄の終着駅はなぜ新開地なのか③

前回からの続きです。
神戸電鉄の終着駅はなぜ新開地なのか ①
神戸電鉄の終着駅はなぜ新開地なのか ②

 前回までの記事で神戸高速鉄道設立に至る紆余曲折、また神戸高速鉄道設立時の計画について書きました。当時の計画では神戸電鉄の始発は神戸駅になるはずだったわけですが、この神戸駅乗り入れ案について当時の資料から具体的な計画を紐解いてみたいと思います。

幻の神戸駅高架乗り入れ計画
 すでに計画から60年が経過しているため、当時の資料の確認は容易ではありません。しかし、国会図書館にて当時の雑誌「新都市」第八号にこの計画に関する記事を見つけました。以下はこの雑誌に掲載された長浜時雄氏による南北線計画の説明です。

 国鉄線に接する湊川線神戸停車場から高架のまゝ北進、仲町停車場に於いて東西線と交叉、湊川停車場を経て、湊川公園東北側で地下に入り、神戸電鉄線に連結する。 -新都市第八号「神戸高速鉄道の計画」長浜時雄

 この雑誌には大まかな計画線が地図で示され、また計画されている三つの駅についても説明がされています。

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 南北線神戸駅は二面二線(二つのホームが二本の線路を挟む形)の駅で、国鉄神戸駅の東側に隣接した立地となります。阪急や阪神が乗り入れる東西線神戸駅(現高速神戸駅)は少し離れた地下駅ですが、地下の連絡通路を通じて乗り換え可能です。
 神戸駅を発車した電車は、すぐに大きく"J"の字を描いて、現在の福原通と並走、東西線と交わる箇所に設けられた二面二線の仲町駅に到着します。新開地駅からは東側に約200m程度の場所です。東西線は地下駅、南北線は高架駅となり、また距離も少しありますが記事によると乗り換えが可能とされており、神鉄沿線から山陽沿線への乗り換えにはこの駅が便利だったのかもしれません。

 東西線新開地駅、南北線仲町各停車場は、二線の連絡停車駅となるので、一方は高架、一方は地下ではあるが、一体的に運営できるようなものである必要がある。高架部分は、東西、南北両線共神戸市内目貫の繁華街に面するので、既設の商店街、又道路との関連に於いて、許される限り、高架下の有効な利用を図る。-新都市第八号「神戸高速鉄道の計画」長浜時雄

 仲町駅を出た電車はその後さらに北東方向に進み、湊川公園付近に設けられる高架の湊川駅に進入します。現在の神鉄湊川駅とそう変わらない場所にあるため、神戸市営地下鉄との乗り換え駅になります。さらにそこから350メートルほど高架で北進したところで神戸電鉄線に接続する計画でした。

 神戸駅から湊川にかけて広がっていた当時の繁華街を縦断するルートとなり、もし実現していれば繁華街の真ん中を神鉄が高架で突き抜けていたこととなります。
 さらに、湊川駅、仲町駅、神戸駅と三駅続けて他社線への乗り換えが可能となります。始点の神戸駅では国鉄/JRや現在の地下鉄海岸線へのアクセスも可能となり、文字通り神戸市内を南北に縦貫する連絡鉄道となるはずでした。神鉄の利便性向上はもちろんのこと、神戸市全体の交通網へのメリットも計り知れません。

↓神鉄の路線図はこのようになっていたかもしれません・・

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なぜ実現しなかった? 
 これだけのメリットのある神戸駅乗り入れ案でしたが、結局のところ神鉄の終点は地下の新開地駅に落ち着きます。なぜ計画は変更されたのでしょうか。次回は市議会の記録から、神戸駅への高架乗り入れ案が実現しなかった理由を考えます。

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