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時をもどして基本から。

住宅業界内で最近、高性能住宅推進派と高性能住宅不要派の戦いが激化しているという話を聞いた。

何十年前の話の蒸し返しなんだ?と思いつつも、住宅の性能を上げるも、上げないも、ニーズの問題だと感じてしまう自分もいる。

オースタムは高性能推進派。

先日、東京電力エナジーパートナーさんの新人営業さんに「高気密・高断熱とは?」という現場セミナーを行わせていただく中で、あらためて、「なぜ高性能住宅が必要か?」という原点を話せる機会がありました。

2時間にわたって解説した内容のダイジェストをご案内しつつ、オースタムが思う高性能=高気密高断熱について、今日は書いてみます。


まず、重要なのは、家とは何のためにあるか。

人は雨や風、暑さ・寒さ、外敵を含む外的脅威から身を守るために住居を持っています。

現在の長寿命の獲得も、自然を拒んだからこそのもので、今、野に放たれればその寿命は30年とする意見もあるようです。

さて、健康においても、英国保健省において、冬季の室温18℃未満は循環器系、16℃未満呼吸器系疾患のリスクの増大、8℃未満に至っては低体温症のリスクまであることが報告され、WHOもこの基準を広く発表しました。

これにより、冬の室温が低いと健康被害が起こることは、すでに世界の常識となりました。

日本人だけ例外という訳ではありません。冬の最低室温は18℃、推奨は21℃です。

栃木県に至っては、2014年の厚生労働省における人口動態統計における、冬季の死亡増加率の都道府県別比較において全国で最も冬になると人が死ぬ県認定されました。

この原因は、主にヒートショック。

家の断熱にコストをかけないことで、家の中で家族が亡くなっています。

冬の廊下、風呂、トイレ、玄関回り、自室、何℃で暮らしていますか?

愛するお子さんの部屋、18℃を下回っていませんか?

知っているけど健康リスク背負わせていませんか?


逆に、暖かい家での暮らしが健康寿命を延ばすデータも。

慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治 教授の研究において、冬季の居室温度が2℃高いと要介護期間が3年短いデータや、冬季室温が室温が高いことで、入院率の減少、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎のリスク減など、様々なエビデンスが存在します。

そもそも「冷えは万病の元」という言葉がある通り、体を冷やすことは大きな健康リスクを孕みます。

そりゃ、WHOだって警告しますよね。

日本において、断熱がZEHレベルだ、HEAT20だと騒いでいますが、そのレベルですら、残念ながらヨーロッパと比較してしまえば、まったくの断熱弱小です。

医療費の公的負担をしている国については、家の断熱性能を高めることで、医療費負担を減らす狙いもあり、ここ、リンクしていたりします。

健康的に暮らすなら、まずは「気密性・断熱性をちゃんと確保せよ。」という事なんですよね。


東京電力エナジーパートナーさんとしては新人さんに、まず省エネの話をして欲しかったんだと思うのですが、まずは健康と命、そして栃木県の状況というここまでの前置きをお話した上で、省エネを含む付加価値等など、その他の話をさせて頂きました。


家づくりはご家族、建築会社によって様々な方向性があります。

でも、家の根本の在り方は先に書いた通り、外的要因から家族を守ることです。

例えば、走らない自動車に自動車としての価値を見出すことは難しいです。

走ったからと言って、昔ながらに馬車と同じ速度では、現代において事足りません。

同じように、家そのものの在り方、そして健康的に暮らすための必要性能が、エビデンスを伴って明らかになっている現代に、それを無視してよいものか。

知った上で、消費者が判断できる世の中になることが理想ですよね。

ざっくり駆け足な文章ですが、参考になれば。



hiroyuki

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