僕はおまえが、すきゾ!(11)

僕は何に苛立っているのだろう。優作が僕の知らない彼女を好きになったから?それとも、優作が僕の前から離れていこうとする不安から?僕は優作にとって、もう要らない存在なのだろうか?
出て来るのは、疑問符付きの考えばかり。僕はずっと恋愛とは無縁だった。高校生活でも僕は優作としか、関わってなかったように思う。一つ年下の同級生らが、男女で色めき立っている様子を見ても、何とも思わなかった。優作は多分、古賀さんの事が好きなんだと思う。だから、何だ。そんなの当たり前の事じゃないか。男と女、二人そろえば、恋愛に発展する事なんて、目に見えてる。
僕は今まで、そんな出会いが無かっただけで、もし僕にも僕にも優作と同じ環境が出来たなら、僕にも可愛い恋人が出来てたんじゃないか?また、疑問符だ。
そんな事が一瞬にして僕の頭の中を駆巡った。
店から出て行く僕を優作は追い駆けて来ない。
当たり前か、僕と優作は恋人でも何でもないのだから。
「ちょっと待ってください」
店の自動ドアから出て行く僕に声を掛ける男性の声がした。
「お客さま、お会計がまだお済ではありません」
優作ではなかった。
僕の背中から声を掛けたのは、店員の男性、
多分年の頃はバイトリーダーと思わせるようなキリリとした顔つきの男だった。
僕は振り向くと、すみませんと店員に謝った。
と、優作と古賀朝子が、レジ前に来て、僕の割り勘の2000円と自分達の飲食代を店員に支払った。
「ありがとうございました」
店員はレジを打つと、優作にお釣りとレシートを手渡した。
「なあ、宏人」
僕は振り返る余裕も無かった。
優作の心は、今、古賀さんの方を向いている。
古賀さんの心に向かっている。
僕は古賀さんの事が、嫌いなのではなく、
僕が認める恋人を優作が作るならば、自分はそれに勝手に祝福するんだ、自分勝手な思い込みに浸っているだけじゃないのか?
「武田さーん」
古賀さんも僕に呼びかける。
だけど、僕は二人に背を向けて、トボトボと歩いて行く。
一人ボッチな気持ちを背中に背負いながら、僕は歩いて行った。


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