怒りをコントロールする
前回の投稿から、メンタルが弱った状態から回復する力(レジリエンス)を構成する、3つの個人内要因について触れています。
今回は「感情調整」について、私なりの見解を書いてみます。
感情は伝染する
仕事をしているときは、できるだけ機嫌が良い状態を保とうと努めています。なぜなら、感情は自分自身はもちろんのこと、一緒に仕事をしている人たちのパフォーマンスにも影響を与えるからです。
私たちの脳内には、ミラーニューロンという神経細胞があります。またの名を「共感細胞」とも呼び、他者に対しての模倣と共感を司ります。他者のふるまいを見て、あたかもそれが自分の体験であるかのように、脳内でシミュレーションすることができるのです。ミラーニューロンの働きは、他者を理解したり、他者に共感したりするために備わっています。
例えば友人の結婚式に参列して多幸感に包まれているとき、推しの舞台公演に感情移入して涙を流しているとき、ミラーニューロンという共感細胞が関与しています。このような状態のことを、心理学では情動感染と呼びます。ポジティブな感情も、ネガティブな感情も、人から人へ感染するのです。
とりわけ、ネガティブな感情はポジティブな感情よりも伝染力が高いと言われています。常に不平不満を言っている人や、いつもイライラしている人がにいると、職場全体に悪い影響を与えてしまいます。
マイナス感情を持ち込まない
ネガティブな感情は、一緒に仕事をする人たちにも伝染するので、できるだけ職場へ持ち込まないほうが望ましいです。しかしそれは、感情を押し殺せという意味ではありません。自分のネガティブな感情に能動的に気付いて、上手く制御するのです。
特に、怒りの感情を制御する手段としてアンガーマネジメントという療法があります。怒りを断ち切る訓練をすることで、自ら怒りのスイッチを切る方法を身に付けることができます。
怒りの感情をコントロールする
アンガーマネジメントでは、「衝動・思考・行動」の3つの観点で、怒りをコントロールします。これらを順番に見ていきます。
衝動~6秒ルール
怒りのピークは最初の6秒間と言われていて、これをいかにやり過ごすかが重要です。怒りを感じたときに、勢いまかせに発言したりをすると、自分で自分の怒りを増長して、なかなか冷静になることができません。
怒りを覚えたら、まずは深呼吸をして最初の6秒をやり過ごしましょう。深呼吸をすることで副交感神経が優位にはたらき、落ち着きを取り戻すことができます。以前も書いたように、深い呼吸をすると幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌され、心のバランスを整えてくれます。
思考~考え方を変えて受け入れる
「〇〇すべき」という自分の理想が思い通りにならないとき、人は怒りを覚えます。自分が思うようにうまく事が運ばないときや、他者から期待外れの反応が返ってきたとき、イライラしてしまうこともあるでしょう。
しかし、以前から繰り返しているように、他者はコントロールできないものです。自分の思考を「〇〇でもいいか」に変えて他者の言動を受け入れることで、怒りは鎮まり寛容になれます。
行動~最適解を探す
怒ることで物事が解決すれば良いですが、大抵はその場の空気と自分の印象を悪くするだけです。であれば、どのようにすれば状況が好転するだろう?と、自分に問いを投げかけて行動で解決しようとすることです。
あるいは、一度その場から物理的に離れてみるのも有効です。怒りの原因になっているものを視界から外すことによって、怒りを治めやすくなります。
怒りの感情をポジティブに転化する
アンガーマネジメントでは、怒りの感情を健全な怒りと健全でない怒りとに分類し、健全な怒りに対しては肯定的に捉えます。怒りを感じた出来事が、一緒に働いている人たちやクライアント、そして自分自身にとって重要であり、建設的に対処できるのであれば、それは「意味のある怒り」です。
自分にとっても周りの人にとっても、長期的に見て重要か否かというところがポイントです。長期的に見て健全な選択は何だろうか?と考えることによって、怒りをポジティブなエネルギーに変えることができます。
とはいえ、頭に血がのぼっているときに「長期的な視点で考えろ」と言われても難しいでしょう。なので、まずは最初の6秒間をやり過ごす練習から始めてみてください。
建設的でない怒りは、自分と自分に関わる人たちの心身を消耗するだけで、そこからは何の良い結果も生まれません。怒りの衝動に言動を支配されないように、自分自身の怒りをコントロールする方法を身に付けましょう。
次回は「悲しい」というマイナス感情について考察していきます。
では。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?