ドローンの東京オリンピック

▼イギリスで2番目に大きな空港であるガトウィック空港が、ドローンのせいで36時間麻痺したというニュースがあった。2018年12月28日付の東京新聞が特集記事を載せていた。

ドローン テロの脅威/英空港大混乱 36時間閉鎖/日本 ひとごとではない

〈英国ロンドン近郊のガトウィック空港で今月、小型無人機ドローンが相次いで侵入し、空港が計三十六時間も閉鎖を強いられ、軍が出動する騒ぎにまで発展した。事件は、ドローンによるテロの危険性や都市のもろさも露呈。来年の二十カ国・地域(G20)関連会合やラグビーワールドカップ(W杯)、二〇二〇年東京五輪を控える日本にとってもひとごとではない。(ロンドン・沢田千秋)〉

▼ほんとに他人事ではない。12月19日から21日にかけて、合計1000便、14万人に影響したそうだ。無関係の人を拘束したり家宅捜索したりする騒ぎまで起きた。

2020年の東京オリンピックでは、国内外の各種メディアが、撮影にドローンを使うだろう。それまでにドローンの技術はどんどん進歩するだろうから、どうすればオリンピックが無事故で済むのか、想像もつかない。ドローン業界も、オリンピックに向けた競争にしのぎを削っていることだろう。

英BBC放送によると、英軍は再開後のガトウィック空港に、ドローンを撃墜できるイスラエル製の特殊装備を導入。ラフ氏は「戦場で自陣へのドローン侵入を防ぐために軍が使う科学技術以外に、有効な対策はない。各空港に配備すべきだ」としている。〉ラフ氏というのは、撮影ドローンなどを提供する「アポロ・ドローン・サービス」社のサム・ラフ氏。

▼ドローンは軍用に開発されている。それが民生用にも活用されている。去年、印象に残ったコラムがあった。

〈3月末に避難指示が解除された福島県飯舘村で、小型無人機ドローンが飛ぶのを目にした。「帰還した農家と近隣の様子を撮っている」と、操縦していた川崎市の新井裕介さん(65)。(中略)ドローンによる撮影を仕事にしてきたが、「最近多いのが全国の農業現場への出張」。農業者から操縦技術の講習を依頼され、今年は既に50回以上。ドローンにタンクを積み、農地に肥料や農薬を散布するなどの用途が広がっている

▼農地の規模拡大、高齢化や後継者不足、コスト削減のためだが、需要急増の背景にあるのがGPS(衛星利用測位システム)の進化。位置情報を入れれば、農地の端から端まで自動で作業をするという(中略)農業分野では無人トラクターを利用できる時代になるそうだ〉(河北新報2017年9月8日付)

▼「技術」というものが諸刃の剣だということを、ドローンほど鮮やかに示す例は少ない。ガトウィックのドローン騒ぎは、「リスク」だらけの東京オリンピックが、日本社会の「クライシス」につながらないように知恵をしぼるためのよい事例になると思う。

(2018年12月31日)

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