見出し画像

他国を救わないと、自国がとても損をする話

▼「三田評論オンライン」に載った、ゲイツ財団日本常駐代表の柏倉美保子氏のインタビューから。(2021年2月15日)

友人から教わったのだが、とても興味深い話だ。

▼ゲイツ財団は、「COVAX(コバックス)ファシリティ」という、途上国にもコロナワクチンを行き届くようにするシステムづくりに努力しているのだが、先進国のなかでは、日本は最初に手を挙げた国だ。これを筆者は日本人として誇りに思う。コバックスは、いまは参加国が190カ国を超える。

▼興味深いのは、このシステムを支える事実と論理について。

〈──今、国際関係の中で、自国の利益を優先しようという動きはいろいろなところで起きていますよね。

柏倉 そうですね。しかし、途上国にワクチン、治療薬、検査キットが届かないことで、日本では2021年中に製造業を中心に5,000億円、2025年までだと1兆3,600億円規模の経済損失が出るという予測が出ています。

これは先進国全体だと2021年中に16兆円、5年間で48兆円もの経済損失となります(以上ユーラシアグループの経済分析による)。まさに地球がもう一体化してしまっている。その一体化した経済の中で、自国第一主義でやっても、実は自分自身が損をするということがわかってきたのです。

ですから、これからは地球規模で全体最適や全体の戦略を考えることが経済的にも合理性が高いし、倫理的にもよいということだと思います。〉

▼倫理だどうだ、とか聞かされても、まったく馬耳東風(ばじとうふう)の連中のなかに、自分が損をすると知った途端、目の色を変えて必死に動き始める類(たぐい)の人間がいる。

彼らが、たとえ利己的な理由で動き始めたのだとしても、その結果、助かる人が増えるのなら、大いに結構な話だ。

ここで柏倉氏が示している数字は、そういう結構な話を生み出すきっかけになる。

他国を救ったほうが、自分が得をする。

他国を救わなければ、自分が損をする。

グローバリゼーションの帰結は、「新型コロナウイルスの大流行」だけではない。こうした「損得勘定の現実」もまた、地球一体化の一つの帰結として、これからもっと広く語られるようになるだろう。

(2021年6月10日)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?