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王将戦リーグが滅法(めっぽう)面白い件(その2)

▼王将戦リーグがじつに面白い展開になっている。

最大の話題は、藤井聡太氏の3連敗である。10月29日の対佐藤天彦9段戦は勝ったが、依然、リーグ脱落を免れるための戦いが続く。

レーティングの順位は、永瀬氏が負けたので、結局変わらなかった。しかし、今回は永瀬氏が藤井氏にわずか1差まで迫ったので、ひっくり返る可能性は十分にある。

▼さて、永瀬拓矢氏へのインタビュー記事から。日本経済新聞2020年7月25日付。ちなみに、永瀬氏は藤井氏と最も多く練習将棋を指しており、練習将棋をする時は、永瀬氏が藤井氏のところへ通っていた。

盟友・永瀬拓矢王座が語る強さの秘密/藤井棋聖誕生 努力の結晶/経験則の一段上目指す根気

▼藤井氏が渡辺明氏を圧倒した棋聖戦について。

〈「藤井さんが渡辺さんを相手に勝ったのはすごいことですが、(何度も練習将棋を指し)藤井さんの強さを一番知っている私からすれば、『藤井さんの力をもってすれば順当』です。将棋界全体にとっていい目標、指針になる。私自身、藤井さんという目標に向かってひたむきに進んでいきたい」

これからは藤井さんを止めるのが大切になる。この人と同じ時代を生きているのは幸運です」〉

▼永瀬氏のコメントは率直で、悪い意味での忖度(そんたく)がない。

〈――今回の棋聖戦では、第2局で藤井棋聖が指した、守りの要の駒を繰り出した5四金や、攻め駒を手放して自陣を固めた3一銀が「AI(人工知能)超えの一手」と話題になりました。

5四金は定跡(じょうせき)です。個人的には、プロでこれを知らないのは勉強不足だと思います。5三歩型の後手としては当然の選択肢です。3一銀は気づかない手で、(時間を使って)考えてこの手を指せるのが素晴らしい。時間を使って考えると次善手とかになることが多いんですが、そこで最善を指せるのはさすが」〉

▼この、藤井氏の「5四金」の一手を見て、驚いたプロ棋士の一例を挙げれば、佐藤康光九段・現将棋連盟会長である。永瀬氏は、佐藤氏が勉強不足だと言っているわけだ。

▼最も永瀬氏らしいコメントは

藤井さんの強さは『努力の結晶』だと思っています。才能ももちろん大きいですが、細かいところの微調整を苦にせず、根気強く、手間を惜しまない」という箇所だ。

将棋は努力、が信条の永瀬氏ならではのコメントだ。永瀬氏は、「将棋に才能は必要ない」とまで言っている。本人が努力の塊(かたまり)であり、その人が、世間から「天才」と仰ぎ見られる藤井氏に肉薄している。

(2020年11月1日)

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