なぜ_センテナリアンは_100年も生きる__何を感じてる_

センテナリアンは100年も生きて、何を感じているのか。

ハイライト
・100歳まで生きるセンテナリアンは人口の0.03%
・6つのテーマに分けて考える、センテナリアンが語る人生とは?
・幸せになるために必要なスキルはいくつか判明している。

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■センテナリアンという言葉を知っていますか?

センテナリアン(centenarian)とは、100歳以上の人物のことである。日本語では「百寿者」とも表現する。国際連合は2009年、世界中に推計45万5000人のセンテナリアンがいると発表した。

センテナリアンとは100歳以上のヒトをさす言葉。日本はアメリカの次にセンテナリアンの数が多い長寿国です。(アメリカの方が総人口が多いのでアメリカ>日本)長寿国を自負する日本でも、人口の僅か0.03%しか存在しない貴重な存在です。

超高齢社会に突入し、私たちは総じて長生きする時代になっています。これからも医療や介護の発展に伴い寿命は延びるでしょう。

そこで問題となるのが”長寿への不安”です。

加齢とともに、私たちは死に近づいていきます。体は衰え、頭も若き日のように良好に働くとは限りません。老化=絶望なのでしょうか?


今回は100歳以上のヒトを16人集めて徹底的にインタビューした2012年の研究をもとに、

・センテナリアンが一体なにを感じ
・センテナリアンが何を重要視しているのか?
・そして、人生のエンドステージは幸せなのか?

という体験談をシェアしていきます。

『死や老いに対する恐怖を持っているヒト』はぜひ見ていってください。生々しくも大切なコトが記されています。


■センテナリアンが感じている人生の6つのテーマ

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*1:Figure1より引用

今回の研究は16人のセンテナリアンを集め、1:1のインタビューを行いました。全員に結婚経験があり、1人が認知症の妻を介護している以外はすべて伴侶を失っています。彼らのインタビュー結果をまとめることで、研究チームはセンテナリアンが感じている人生の6つのテーマについて明らかにしました。

その内容は、

①:世界とのつながり
②:幸福と良い人生の描き方について
③:受け入れること
④:友人や家族によるサポート
⑤:不満との闘い
⑥:大切な人と、自分の死について

これらのテーマは、センテナリアンが考えている人生の核となる部分です。

いったい彼らはどんなことを考え、何を感じているのでしょうか?


■①:世界とのつながりについて

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センテナリアンたちは、社会との強いつながりを持っていることが明らかでした。

・ある人は老人ホーム閉鎖反対キャンペーンに参加
・ある人はボウリングクラブの名誉会長
・ある人は300人の野球クラブの立ち上げに関与
・ある人は地元のこどもに遊び場を提供
・ある人は現役で仕事に従事
・ある人は太極拳とダンスに参加
・ある人は本を読むのが大好き
・ある人はガラス彫刻で勲章を授与

などなど、地域社会で誰かをまとめるキーマンになったり、趣味や仕事に打ち込んで自分のアイデンティティを確立したりしていました。

とはいえ、すべてのヒトが社会的な交流をしていたというワケではありません。特定のスキルを極めたり、披露することが生きがいそのものになっている場合もちらほら。

周りとの協調により自分を発揮する外向タイプ、自分を内省的に見つめなおし、本質を探究する内向タイプどちらも、突き詰めることは立派です。アイデンティティを確立し、”生き抜く為の大きな軸”とすることが大切だと考えられます。


■②:幸福と良い人生の描き方について

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センテナリアンは自分について語るとき、『良い人生と幸せな日々だった』と語っています。なぜ、彼らはそう思うのでしょうか?

彼らの話を注意深くきくと、”怒り”や”攻撃性”が極端に低いという特徴があることが判明しました。旦那や家族が声を上げていたことを覚えておらず、ジョークを飛ばして生活していました。

参加者のアリソンに「1つだけ願いがかなえられるとしたら、何を望みますか?」と聞くと、「私はこのままで大丈夫。別に何も望んでないわ。健康でよかった。」

さらに、別の参加者メグは「私は人生でいつも幸せでした。幸せな家族と幸せな時間を過ごせました。」と言っています。ほかの参加者も、人生のはじめは苦しい生活だったと言うことはあっても、後半はとても幸せだったと言っています。


少し前にアンガーマネジメントという言葉が流行りましたね。それは、言葉通り「怒りを管理する方法」です。

何も彼らはずっと幸せな環境にいたということではありません。100年生きていたら、どう考えてもツラいこと、苦しいことはあったハズ。でも、彼らはそんなこと気にしていない。覚えていないのです。

センテナリアンたちが上手なのは感情のコントロール。負の感情をいつまでもため込まず、意識をうまくコントロールして、ポジティブなことを記憶する。この能力はスキルです。後天的に身に着けることができます。幸せな人生を送りたいアナタは、ぜひマスターするべきでしょう。



■③:受け入れること

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100年生きた彼らは、2度の世界大戦世界恐慌をはじめ、現代に生きる私たちには想像もできないようなとんでもない苦労をしています。

彼らは爆撃、空襲の避難所、食料不足、思い出の地の破壊。そんな場面を鮮やかに、しっかりと覚えていました。

しかし、彼らは誰も立ち止まりませんでした。

ただ、乗り越えるしかない
座って泣くだけではなく、ただ取り組まなければならない
ただ、受け入れる
続けるしかない
それでうまくいった
人生はすべてがうまくいくわけじゃない

彼らは自分の身に降りかかる不幸や理不尽を受け入れる精神力を持っていました。

現代を生きる私たちも、”受け入れるチカラ”を鍛えることができます。鍛えると言っても、物事の受けとり方を転換するだけなので、筋トレのように継続が必要なことではありません。

私のオススメは「荘子」です。

荘子は紀元前4世紀に生きた中国の哲学者。彼も国が興っては潰される大戦国時代に生まれた彼の言葉は、『何物にもとらわれず、自由で、ただ自然や理不尽、幸せ、すべてを受け入れることのできる器の大きなものです。

荘子にとって、神ははじめから存在しなかった。その超越的なるものは、その前に跪き祈ることによって恩寵をたれる人格的な救済の神ではなかった。それによってこの世に生まれ、そして死んでいく。何人も事故に代わって死んでくれるものはなく、だれも自己に代わって生きてくれるものはない。ましてや自己の犯した罪を代わって償ってくれ、自己の苦悩を代わって背負ってくれるものなどどこにも存在しない。

荘子の原本は内編、外編、雑編に分かれており、現代語訳もたくさん出ていますが、あえて私は福永光司氏の「荘子」を推します。彼の訳は、荘子そのものではなく、彼の解釈が存分に含まれています。しかし、私たちに重要なのは、その考え方を現代社会で活かせるかどうか。どうしようもない理不尽やストレスに直面している人ほど響くような現代語訳は、この荘子だけです。

「荘子」はすべてを受け入れ、流し、自分を見つめなおすための禁断の書となりうるでしょう。是非読んでみてください。

どうしても東洋哲学の方が好き!って方にはストア派の哲学が荘子に近く、オススメです。


■④:友人や家族によるサポート

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44%のセンテナリアンは自宅に住んでいます。家族とのふれあいやサポートが彼らにとって重要なのは明らかでした。

アレックス氏はボウリングが良い友達との結びつきにつながったことを強く協調しています。ニタ氏は「スイミングクラブのメンバーは皆自分を知っているよ。みんな一緒に過ごしてくれる。」と話します。

生涯の伴侶に対する思いを重要視している人も多くいました。アルバート氏は「もし、人生で一つでも願いが叶うならば、妻をとりもどすことを望む」と言っています。妹が長生きしてくれることを望んでいる方もいます。

家族・友人によるサポートは、やはり重要です。彼らは会話とつながりで多くの幸せを享受しています。孤独感を避けることは人生のとても重要なポイントなのでしょう。


■⑤:不満との闘い

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センテナリアンは、もちろん不満も経験しています。

老化によって視力を失うことはとても大きな問題となっています。足が老いることで車椅子となっていることも大きな不満の原因でした。

指が不自由になることで、カードを広げることが難しいことを訴える人もいました。

ニタ氏は家族によって介護を受けられることの贅沢さを理解しているものの、自分の家で自分のやり方ですべてを行うことを望んでいます。

このように、老化は確実に体を蝕み、能力を低下させます。さすがのセンテナリアンもこれらの能力低下に不満を感じているようです。

私たちにできることは運動習慣の充実によって、筋力低下を防ぐことでしょう。今から準備すべきでしょう。



■⑥:大切な人と、自分の死について

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センテナリアンは愛する人を誰よりも多く失っています。しかし、その対処方法はそれぞれ独自のものでした。

・アリソン氏は60年たった今でも旦那の存在を感じており、彼が離れたとは考えていません。
・フィリス氏は植物状態となった旦那を1か月間もそのままにした医療チームの延命治療に疑問を抱いています。
・多くのヒトは両親や兄弟の死について医療システムの不足を話します。

このように、彼らは自分の身の回りに起こる死に悲しみを覚えています。しかし、絶望しているわけではありません。旦那の存在を感じている人もいれば、医療システムを変えようと努力するヒトもいます。前向きに問題に対処しようとする姿勢が彼らにはあります。

自分の死について、ニタ氏はこう語ります
「私が毎日目を覚ますたびに神に感謝!と言います。私は私が死にそうだと感じずに死にたいのです。」

これは怯えではなく、本当に感謝の気持ちのようです。ただ、毎日を生きる。その延長線には当然のように死がある。彼らはその事実を完全に受け入れることができています。


まとめ

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一般的には、年老いていくことがネガティブなことだと捉えられがちですが、実際にはそんなことはありません。むしろ100歳まで生きる人は人生をより良く楽しみ、よく受け入れています。

総じてセンテナリアンの意見はポジティブで、身体の不自由や大切な人との離別、死のような困難はあくまで”人生の一部”であり”受け入れ”、"乗り越えるもの"だと言っています。

『ただ試して、物事をよくするためにできることを何でもやって進むだけ。』

確かに難聴や視覚障害などの状態が発生しますが、多くの状態は治療と自己管理によって緩和できます。重篤な病気も克服でき、100歳以上の人でも健康を維持・改善することができるようになってきました。

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センテナリアンが語ってくれたストーリーは、人類始まって以来の長寿を迎える私たちの世代に前向きな期待を与えてくれます。

実は、西洋的な心理学の最新の流れは”マインドフルネス”であることこそ、幸せかつ健康に生きることを推奨しています。マインドフルネスとは「今、この瞬間を大切にする生き方」のことを表します。

マインドフルネスは仏教の一派といえる”禅”の思想です。これは先ほど紹介した「荘子」「ストア派」の哲学とも通じる哲学。

古来から歴史を紡いできた東洋思想と、厳密な論理を重ね進化を続けてきた西洋思想の共通点。それを体現するのがセンテナリアンではないでしょうか?


幸せになるヒント、つかんでください。

*ここで紹介した多くの本は、kindle unlimitedで無料で読めるモノです。是非試してみてくださいね。

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おしまい

このnoteは、世界中の論文を読み漁ることが趣味の私が、普段の生活や健康、美容などについて、根拠に基づいた意思決定をするための知識を提供していくnoteです。アナタの時間を、もっと楽しいことや自分の興味のあることに使うための情報を集めて書いていきます!

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引用

1.Hutnik, Nimmi, Pam Smith, and Tina Koch. "What does it feel like to be 100? Socio-emotional aspects of well-being in the stories of 16 Centenarians living in the United Kingdom." Aging & mental health 16.7 (2012): 811-818.

2.Koch, Tina, et al. "Storytelling reveals the active, positive lives of centenarians." Nursing Older People 22.8 (2010).

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